お金と仕事
在宅で対応できるのに……「何で、我慢して出勤」私大職員の嘆き
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言を受け、政府は「出勤者数の7割削減」を呼びかけています。ただ、医療や介護、保育といった現場はもちろん、中小企業など事情があって出勤の続く職場もあります。同じ組織内でも、出勤の必要性に差がありそうです。モヤモヤする働き手も多いのでは? 入試が本格化する都内の私立大学では、週3日程度の出勤が続きます。職員の1人は「職場に行く必要がない部署でも出勤している」と嘆きます。
この大学は昨年4月の緊急事態宣言を受け、キャンパスを閉鎖。教職員を「原則在宅」としました。昨年の宣言解除にあわせ、「原則」をあらため、大学に出勤する人を増やしてきました。
在宅勤務の必要性を訴える職員の仕事場では、昨年の緊急事態宣言以降、交代で週1回程度出勤するほかは在宅が続いていました。学生とのやりとりはあまりありません。仕事相手のほとんどが在宅勤務のため、オンラインで十分対応できたそうです。
ところが昨秋、通常業務に戻すとの方針が示され、出勤を求められました。
大学では、秋から対面授業を再開したため、職員の対応もより必要になりました。ただ、在宅勤務を継続できる職員とそうでない職員との格差があると学内でささやかれていた、という指摘もあります。
「在宅勤務の解除後も、大学で複数の感染者が確認されました」。職員はそう話します。
「在宅でも業務がまわる」「何で、我慢して出勤を続けないといけないのか」「家族もいるし言い出せない」――。職員の周囲ではそんな声があがっていました。学内の組合も、職員の在宅勤務継続を大学側に申し入れています。
今月に入り、政府は2度目の緊急事態宣言を出しました。ただ、大学は、本格化する入試にも備えなくてはなりません。3~4割程度の削減にとどめ、週3日程度の出勤体制にしました。その上で「繁忙期や緊急時対応の際には全員出校も可」としています。
職員は、入試対応のために出勤が必要な部署があることを理解し、出勤する職員には頭の下がる思いと話します。その上で、「出勤が不要な部署まで、事実上一律に出勤させることは、感染リスクを下げる上で納得がいかない」と話します。対して大学側は、業務が忙しい部署を「全学で支援」していくことも念頭に置いています。
大学は「学生と教職員の健康と生命を護り」つつ、「どのような環境でも教育を提供し、どんなに厳しい条件下でも研究を継続する」ことが使命としています。さらに「想定される最大のダメージを最小にとどめる」などの原則があるとし、取材にこう回答しています。
「教職員は、大きな不安を抱えているであろう学生が安心して大学へ通い、日常を取り戻せるために、最大限の努力をはかる必要があると認識しています。受験生に安心して受験できる場を提供できるように体制を整えていく必要があります」
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