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#92 #父親のモヤモヤ

中小企業で男性育休100%は特別?「そうではない」と断言した先駆者

写真はイメージです(PIXTA)
写真はイメージです(PIXTA)

目次

#父親のモヤモヤ
※クリックすると特集ページ(朝日新聞デジタル)に移ります。

「男性の育休100%」。新潟県長岡市にある建築金具メーカー「サカタ製作所」は、そんな取り組みで知られる中小企業です。男性社員が育休を取らない本音を聞き出して分析。ひとつひとつ対応して100%を達成しました。ただ、人手不足に悩む中小企業からは「サカタさんは『特別』だからできるのでは?」といぶかしむ声も聞こえてくるそう。「特別」なのでしょうか?

【#父親のモヤモヤが書籍に】
多くの父親の葛藤に耳を傾けてきた連載「#父親のモヤモヤ」が『妻に言えない夫の本音 仕事と子育てをめぐる葛藤の正体』というタイトルで、朝日新書(朝日新聞出版)から10月13日に発売されました。

「イクメン」の誕生から10年。男性の育児が促される一方、葛藤を打ち明けられずに孤立する父親たち。直面する困難を検証し、子育てがしやすい社会のあり方を考える一冊です。詳細はコチラから。

『妻に言えない夫の本音 仕事と子育てをめぐる葛藤の正体』(朝日新書)

会社はいま「ベビーブーム」

仕事と家庭の両立などに葛藤する男性の姿を描く「#父親のモヤモヤ」企画と、九州朝日放送(KBC)のラジオ番組「小林徹夫のアサデス。ラジオ」では月1回、コラボ放送をしています。昨年11月には、サカタ製作所で育休推進の中心を担った小林準一技術開発部長が登場しました。この日は、担当の小林徹夫アナウンサーと山﨑萌絵アナがお休み。田上和延アナと奥田智子アナが代役を務めました。

サカタ製作所は、従業員約150人の会社で、男性が7割です。2018年に育休100%を達成し、続いています。小林さんは番組で育休推進によって「いま『ベビーブーム』なんです」と話しました。これには「久しく聞いていない」「昭和のワードですね」と、スタジオからも驚きの声があがりました。

サカタ製作所で育休を取得した男性社員の家族=サカタ製作所提供
サカタ製作所で育休を取得した男性社員の家族=サカタ製作所提供

育休を取らない理由を解消

小林さんは、育休を取らない社員の本音を分析すると三つに分類されたと説明しました。「収入が減るのではないか」「評価が下がるのではないか」「まわりに迷惑がかかる」。そんな声でした。働き方改革の一環として、「残業ゼロ」を目指しつつ、男性の育休も進めることになったさなかのことでした。

収入面では、実際に育休を取った場合の給与を試算し、複数のシミュレーションを示しました。育休期間中は社会保険料が免除されることなどから、手取りが減らず、むしろ増えることもあることを伝えました。

人事評価についても「絶対下げないことにしました。推進した管理職をむしろ高く評価すると社長に言って頂きました」。育休を取ることで周囲に迷惑をかけてしまうと思っている社員もいたため、業務の無駄を省き、特定の人しかできない「属人化」に陥らないようにしました。

また、本人の「申請」を待つのではなく、会社から働きかけるようにしています。「育休後は、定時に帰るためにと、時間管理の意識も強くなります。業務に生かされています」。会社の業績も堅調だそうです。

サカタ製作所で育休推進の中心を担った小林準一さん
サカタ製作所で育休推進の中心を担った小林準一さん

中小企業は厳しい現実

「社員だけでなく会社にとってもよい取り組み」「家庭も円満」。サカタ製作所の取り組みをスタジオは絶賛しました。社長が強い方針を示して取り組んだことから、理想のリーダー像にも話が及びました。

サカタ製作所の取り組みは、今回のラジオ番組だけでなく、テレビなどで折に触れて取り上げられています。小林さん自身、講演に呼ばれることもあります。ただ、そこでは参加する中小企業から「サカタさんは『特別』だからできるのでは?」という声を聞くこともあるそうです。自分の企業で取り入れるのは難しい、という思いの裏返しとも言えます。

確かに、中小企業での男性育休取得には厳しい現実があります。取得率は、500人以上の企業では12.34%であるのに対し、100~499人では4.81%、30~99人では7.89%でした。日本・東京商工会議所が中小企業を対象に昨夏に実施した調査では、「男性社員の育休取得の義務化」について、「反対」と「どちらかというと反対」が計約7割でした。

コロナ禍は見直すチャンス

番組後、小林さんに尋ねました。「サカタ製作所さんは『特別』なのでしょうか?」

「そうではありません」と小林さんはキッパリ答えました。「小さな町工場です。本当に出来るのだろうか、効果はあるのだろうかと疑心暗鬼でした」

「モーレツに働くことが美徳という雰囲気が残っていたり、業務の棚卸しがないまま人手不足を嘆いていたり。自社を振り返り、また他社さんのお話をうかがっていると、複合的な要因があると思いますが、会社の方針として確固たるものがあれば実践できます。特に、『人手不足』については、コロナ禍では業務の見直しも進んでいるはずで、逆手に取るチャンスだと思います。男性育休推進の効果を実感してほしいなと思います」

父親のリアルな声、お寄せください

記事の感想や体験談を募ります。いずれも連絡先を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.com)で、朝日新聞文化くらし報道部「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。
 

共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。あなたのモヤモヤ、聞かせてください。
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