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連載

#4 #戦中戦後のドサクサ

「アメリカさん」との国際交流 メイドになって知った「衝撃の事実」

やせている理由を説明したら……

戦後、「アメリカさん」のメイドとなった日本人の少女。かつての「敵」との交流から明らかになった、意外な事実とは?
戦後、「アメリカさん」のメイドとなった日本人の少女。かつての「敵」との交流から明らかになった、意外な事実とは? 出典: 岸田ましかさん提供

目次

その昔、激しい戦火を交えた、日本と米国。終戦後、横浜に進駐した米軍家庭で「メイド」となった女性は、かつての「敵」の意外な一面に触れました。知られざる小さな国際交流について、漫画家・岸田ましかさん(ツイッター・@mashika_k)が描きます。
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米軍一家と片言の英語で会話

横浜で終戦を迎えた、17歳の主人公・ユキエ。ひょんなことから、市内の本牧地域に進駐する米軍家庭に、メイドとして雇われることになりました。

初めて勤務先の家庭を訪れたユキエは、最新式の家電を目にします。コンロに冷蔵庫。貧しい長屋暮らしを送っている身からすれば、想像さえしたこともない、未知の世界が広がっていたのです。

ハワイから来たという「お父さん」や、長女のシャリーさん、次女のジーンさんは、使い方を一つ一つ教えてくれました。早朝に到着し、コーヒーを入れたり、朝ご飯を作ったりする日々……。ユキエは戸惑いつつも、少しずつ仕事に慣れていきます。

料理以外の家事は、別の日本人が担当していました。お掃除係に洗濯係、ボイラーの操作・庭のお手入れ係と、ユキエを合わせて4人が働いていたのです。「ぜいたくだけど、こうしてあたしたちに仕事をくれているのよね」

「ユッキサン、ユッキサン!」「コレ! キレーキレー」。お父さんは片言の日本語で、ユキエに机の引き出し内の清掃を依頼し、彼女も「OK!」と応じます。お互いの言語は不案内でしたが、身ぶり手ぶりを交えつつ、コミュニケーションを取り合っていました。

出典: 岸田ましかさん提供

毎日食品を持ち帰らせてくれた姉妹

掃除中、ジーンさんが不思議そうな顔で、何か尋ねてきました。どうやら、ほっそりとした体形の理由を知りたいようです。

「そりゃ戦争で負けたからよ! 今、食べるのに困ってるからね」。お椀(わん)を持つジェスチャーをした後、手を横に振り、自宅に食べ物がないと伝えると、ジーンさんは驚いた表情を見せます。「Oh my god...really!?」

出典: 岸田ましかさん提供

ただ、ご飯が食べられれば何でもいい――。そんな思いで、ユキエはまかないで出されたサンドイッチなどを、大喜びで口にしていました。シャリー姉妹は彼女の様子を見て、いつも帰り際にパンやソーセージを渡してくれたのです。

「そんな、毎日は悪いです!」「It’s OK, please have this!(いいのよ、持って帰って!)」。食品を持ち帰るたび、家族は「こんなにおいしいものを食べているのか!」と驚き、笑顔になりました。

激しく戦い、憎み合う一方で、相手国の正しい姿を知らない。「アメリカさん」との交流を通じ、ユキエは、そんな現実に直面することになったのでした。

出典: 岸田ましかさん提供

「あり得ないカルチャーショック」

今も横浜に住む、実在の女性の来歴を基にした、今回のエピソード。漫画作者の岸田さんは、かつての「敵国」の情報が、民衆の間で全く共有されていない事実に驚いたと振り返ります。

「戦時中は日米両国とも、プロパガンダ的な情報にしか触れられない環境だったのでしょう。だからこそ、互いの住民がどういう生活をしているか、何を考えているか全くわからなかった。今ではあり得ないスケールのカルチャーショックではないかと思います」

「女性は、日米間の生活レベルの違いについて『いいな』『うらやましい』との感想を抱き、『アメリカさんはとても親切』と考えていたそうです。また当時の勤務先では、『日本の女の子はやせていて可哀想』という意味のことを、よく言われていたと聞きました」

食べることすらままならない、戦後の混乱期に紡がれた、小さな歴史。「次第に消えていく時代の一部を、漫画にできて良かった」と、岸田さんは語りました。

※本コンテンツは、戦争体験者の記憶と関連史料に基づき、可能な限り過去の風俗を再現したものです。また現代の価値観に照らして、不適切と思われる描写も含まれますが、戦中・戦後の暮らしぶりを伝えるためそのまま掲載しています。



【連載「#戦中戦後のドサクサ」】
激しい闘いのイメージが強い「戦争」。その裏には、様々な工夫をこらしながら、過酷な環境下でもたくましく生き抜こうとする「ふつうの人たち」の姿がありました。戦中・戦後の混乱期、各地で実際に起こった出来事に基づく「小さな歴史」について、漫画家・岸田ましかさんの描き下ろし作品を通して伝えます。(記事一覧はこちら

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「戦中戦後のドサクサ」では現在、太平洋戦争前後の思い出に関するエピソードを募集しています。おじいちゃん・おばあちゃんから聞いたお話を記録したい。そんな思いを抱える方、ぜひ以下の入力フォームより、ご連絡下さい!

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