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#63 ○○の世論

3人に1人が「参加しない方がよい」自民支持層が悩む「核なき世界」

全体では59%が「参加する方がよい」

被爆者の森重昭さんを抱き寄せるオバマ米大統領=2016年5月27日、ロイター
被爆者の森重昭さんを抱き寄せるオバマ米大統領=2016年5月27日、ロイター

目次

核兵器を非人道的で違法だとする核兵器禁止条約が来年2021年1月に発効します。「核なき世界」を求める国際的な声が高まり、条約の発効に必要な批准国・地域が50に達したためです。米国の「核の傘」の下にある日本は、「日米同盟の下で、核兵器を有する米国の抑止力を維持することが必要だ」として批准していません。「唯一の被爆国」である日本の世論は、どう見ているのでしょうか。朝日新聞社が11月に行った全国電話世論調査で分析しました。(朝日新聞記者・磯部佳孝)

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「参加する方がよい」59%

核兵器禁止条約は、核兵器の開発や製造、保有、使用などを全面的に禁じるものです。条約を批准した国と地域は国連が定める五大州別では、アフリカ6▽米州21▽アジア8▽欧州5▽オセアニア10です。

条約の前文では被爆者や核実験の被害者の苦痛に触れ、核兵器を使用すると威嚇することも禁じています。ただ、アメリカやロシアは批准しておらず、こうした条約を批准しない国に対する法的拘束力はありません。

11月の調査で、日本が核兵器禁止条約を批准して、条約に参加する方がよいと思うかどうかを聞きました。

全体では、「参加する方がよい」59%が「参加しない方がよい」25%を大きく上回りました。

 

支持層は複雑な視線

菅内閣の支持層がこの条約に注ぐ視線は複雑です。

 

菅内閣の支持層で「参加する方がよい」は57%でした。内閣不支持層の78%よりは低いものの、全体の傾向と大きな違いはみられません。

一方、菅内閣を支える与党自民党の支持層では、「参加する方がよい」は51%とやや低く、3人に1人にあたる33%が「参加しない方がよい」と答えました。自民支持層は、内閣支持層ほどには手放しで参加を求めていないようです。

批准した国々は条約の発効から1年以内に締約国会議を開き、核兵器廃棄の期限や検証方法などを話し合います。日本がこの会議にオブザーバーとして参加することを求める声は、菅内閣を支える与党からも上がっています。

しかし、国会で野党議員からオブザーバー参加を求められた菅義偉首相は「安全保障上の脅威に適正に対処しながら地道に現実的に核軍縮を前進させる道筋を追求することが適切だ。オブザーバー参加はこうした我が国の立場に照らし、慎重に見極める必要がある」と答弁。別の野党議員からは締約国会議を広島や長崎で開催することを提案されましたが、菅首相は「広島で主催をすることは慎重にすべきだ」と応じ、消極的な姿勢を示しています。

菅首相が「核なき世界」を求める国際世論にどう折り合いをつけるのか。菅首相にとっては、同盟国・米国だけでなく、国内世論の動向も見極める必要がありそうです。

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