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ネットの話題

「ありそうで、ない」昭和愛あふれる架空のホテルキー「激かわいい」

洗練されすぎない感じ。そして、少しの切なさと哀愁

創作ユニット「Rooms」が制作する「架空のホテルのキーホルダー」たち
創作ユニット「Rooms」が制作する「架空のホテルのキーホルダー」たち

目次

どぎつい原色系の蛍光色が怪しげに光る、アクリル製のキーホルダーたち。昭和のモーテルのルームキー風のオリジナルグッズが、ツイッターで話題となっています。「ありそうで、ない」架空のホテル備品をテーマに制作するのは、創作ユニット「Rooms(ルームズ)」。当時の造形を「かわいい」と表現する、21歳の美大生2人組です。(北林慎也)

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写真投稿に2.2万いいね

2018年5月から、架空のお店のグッズをテーマに作品を作り続ける創作ユニット「Rooms」。

12月6日、「#画像を4枚晒したらrtがきてフォロワーがぶわーって増えると聞いて」というハッシュタグで自分たちの作品をツイッターに写真投稿したところ、650人ほどだったフォロワーは4000人超に増えました。

「Rooms」が12月6日に写真投稿したグッズ写真
「Rooms」が12月6日に写真投稿したグッズ写真 出典:「Rooms」のツイッターから

「架空のホテルのキーホルダーを作ってます」というコメントを添えて投稿した4枚の写真は、ラブホテルや観光ホテルのフロントで渡されそうなキーホルダーたち。

「HOTEL さくらん坊」「ホテル どりぃ~みぃ」「ビュー大海原」といった、昭和テイストあふれる屋号が、またいかにもありそうなロゴデザインで部屋番号とともにアクリル板に刻印されています。
さらに、チェックインして入った部屋のテーブル上の灰皿に置かれていそうな、ホテルの名前の入った100円ライターもあります。

「Rooms」が12月6日に写真投稿したグッズ写真
「Rooms」が12月6日に写真投稿したグッズ写真 出典:「Rooms」のツイッターから

この写真投稿は3000近くリツイートされ、2.2万ほどの「いいね」が寄せられました。
反響の声の多くは以下のような、作品のデザインテイストへの「かわいい」という称賛でした。

可愛すぎる!!!!!
激かわいい
かわいいいい
すげぇ可愛い
かわ
好きすぎる
「Rooms」が12月6日に写真投稿したグッズ写真
「Rooms」が12月6日に写真投稿したグッズ写真 出典:「Rooms」のツイッターから

21歳の美大生ユニットが自作

「Rooms」は、武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科に在学中の4年生2人組。「ほのむら」さんと「小池」さん、どちらも21歳の女性です。
学内の芸術祭やデザイン・フェスタなどに作品を出展するほか、通販サイトでも販売しています。

実際の企画・制作は、ほのむらさんと小池さんで役割分担を決めずに、デザインやマーケティングなど、それぞれの工程ごとに意見を出し合って進めています。

「Rooms」が12月6日に写真投稿したグッズ写真
「Rooms」が12月6日に写真投稿したグッズ写真 出典:「Rooms」のツイッターから

デザインだけを決めて、ホテル備品を扱う専門業者に発注しているのかと思って聞いたら、なんと最終工程まで自ら手掛けているそうです。
ロゴを彫るのは学内のレーザーカッターを使いますが、マスキングして彩色したりリングを通したりするのは一つひとつ、手作りです。

「シャトー 遊泳館」のグッズたち
「シャトー 遊泳館」のグッズたち 出典:「Rooms」のツイッターから

さらに、またいかにも昔のビジネスホテルの洗面台に置かれていそうな歯ブラシセットは、業務用の無地の品を大量に買い、クリアシールにロゴを印刷して切って貼って作ります。「イベント前は毎回死にそうにながら作っています(笑)」とのことです。

一つひとつ手作りで仕上げる、歯ブラシセット
一つひとつ手作りで仕上げる、歯ブラシセット 出典:「Rooms」のツイッターから

「かわいい」の共感

これまでに発表した作品は、キーホルダー36種、歯ブラシセット10種ほか、すでに多くのラインナップがあり、その味わい深いロゴをあしらったアパレルも登場しています。

ほのむらさんと小池さんが、こうした昭和テイストに惹かれて創作活動を始めた理由を聞きました。

「ホテル メランコリー」のグッズたち
「ホテル メランコリー」のグッズたち 出典:「Rooms」のツイッターから

歌手・井上陽水さんの名曲「リバーサイドホテル」にちなんだ公式グッズや、バンド「cero(セロ)」のツアーグッズなどで、ホテルキー風のアクリルキーホルダーがあり、2人で「これ、かわいいよね」などと、よく話していたそうです。
ちょうどその頃、学内にレーザーカッターの設備があってアクリルの加工ができると知り、「できるならやってみたい!」と、最初は実験のような感覚で作り始めたとのこと。

すると、思いのほか「かわいい」作品ができて、「もしかしたら、私たちの思う『かわいい』が、他の人たちにも通じるのでは?」との思いから、販売するに至ったそうです。

初めての出展となった、2018年5月のデザイン・フェスタでの販売の様子
初めての出展となった、2018年5月のデザイン・フェスタでの販売の様子 出典:「Rooms」のツイッターから

昭和歌謡に原田治、渋谷系…

昭和の匂いを「かわいい」と感じた、2人の感性。そのルーツも気になって聞いてみました。

小池さんは特に、往年の歌謡曲に影響を受けたそうです。
「母の影響で昭和歌謡が好きで(特にWinkが好き)、『ザ・ベストテン』など昔の歌番組を見ては、当時の楽曲や衣装に、現代にはない華やかな魅力を感じていました。そこから次第に、アーティストのCDジャケットや当時の広告、当時のCM、ポスター……と興味が広がっていきました。バブル期の文化全体に影響を受けていると思います」

「ホテル どりぃ~みぃ」のグッズたち
「ホテル どりぃ~みぃ」のグッズたち 出典:「Rooms」のツイッターから

一方、ほのむらさんは、昔の玩具のデザインの影響を感じているそうです。
「母の影響で原田治さんのイラストを好きになったり、フリッパーズ・ギターなど渋谷系の音楽を知ったりしました。当時のCDジャケットを見てグラフィックがかわいいな~と思ったり、古い雑誌の『POPEYE(ポパイ)』とかをパラパラ見たりしていました。あとは、田舎の祖母の家がおもちゃ屋さんなので、昔のおもちゃの指輪とか、昔のおもちゃのパッケージを、なんとなく見ていたのも影響しているかもしれません」

「HOTEL ユートピア」のグッズたち
「HOTEL ユートピア」のグッズたち 出典:「Rooms」のツイッターから

本物志向でラブホテルも訪問

こうした影響をルーツに始めた創作活動。2人は日々、そのクオリティーとセンスの向上に努めています。

元々、タイポグラフィーに興味があり、普段から街なかで看板などを写真に収めるなどしていたという2人。創作開始後は、より意識的に街なかのロゴに注目するようになりました。
「やっぱり本物が一番面白い!」そうです。

2人のデザインスケッチ「こうやっていろいろ書きながら作っていますの図」
2人のデザインスケッチ「こうやっていろいろ書きながら作っていますの図」 出典:「Rooms」のツイッターから

さらには、「バブル期に作られた派手なホテルに、実際に2人で訪れたこともあります(笑)。本当にベッドが回るし、今じゃ絶対に思いつかないような設計と色使いで、大変刺激を受けました」と、本物志向を追求します。

コロナ禍による自粛期間中は、ラブホテルの歴史に関する書籍を読み、独特の設計コンセプトや屋号のワードセンスを学んだことで、作品の世界観を厚くできた手応えがあったそうです。

「HOTEL ロマンス」のグッズたち
「HOTEL ロマンス」のグッズたち 出典:「Rooms」のツイッターから

そうして若い2人に蓄えられていく、往時のデザインセンスたち。
それらを「かわいい」と感じる理由も聞いてみました。

「当時、まだ印刷技術や制作ソフトがあまりない中で、人の手で作字をしたり少ない色数で印刷をしたりしているのを、技術が発達した今あらためて見ると、逆に独創的に見えたり、クスッときたりして好きです。ただ『かわいい!』『ガーリー!』なだけでなく、洗練されすぎない感じがあるのが魅力ですかね。言葉にするのが難しいのですが……。昔のものなので、今はもう無かったり廃れてしまっているという点に、すこし切なさや哀愁みたいなものもあると思っていて、その相反する要素が混じり合っているところにも心惹かれている気がします」

「HOTEL ファンシーランド」のグッズたち
「HOTEL ファンシーランド」のグッズたち 出典:「Rooms」のツイッターから

「活動の幅を広げていきたい」

往年のデザインテイストをリスペクトしながら、当時の空気感までも21世紀によみがえらせ続ける「Rooms」の2人。

今回の写真投稿への反響には驚きつつも、「かなりニッチなアイデアだと思っていたので、こんなに広くたくさんの人に反応をいただけるのは正直、不思議な面もありつつ、でもとってもうれしいです!」と率直な喜びを語ってくれました。

「ひかりのしま スイミングクラブ」の歯ブラシセット
「ひかりのしま スイミングクラブ」の歯ブラシセット 出典:「Rooms」のツイッターから

今後の展開にも夢が広がります。

ほのむらさんは大学院進学を目指しつつ、大好きな「お笑い」をテーマに卒業制作に取り組んでいて、いずれはデザインを通じてお笑いに関わりたい、という夢があります。
小池さんは、すでに就職内定先でインターンとして働きつつ、「Rooms」の活動との両立の道を探っているとのこと。さらに、仕事で学んだことを「Rooms」での創作にも生かせれば、との希望を持っています。

そして2人ともに、「『ホテルキーの人』と呼ばれるまでになる」のを目標に、「他のクリエーターさんとコラボするなど、活動の幅を広げていきたい」と意気込んでいます。

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