連載
#60 ○○の世論
内閣支持率「下げ止まり」の理由 結局、「他よりよさそう」だから?
冬にかけて忍び寄る〝二つの懸念〟
「65%(9月)→53%(10月)→56%(11月)」。9月にスタートした菅義偉内閣の支持率の推移です。10月に大きく下がった支持率は、11月に下げ止まりました。いわば「踊り場」の支持率は、何を意味するのか。世論調査の数字から読み解きます。(朝日新聞記者・磯部佳孝)
朝日新聞社が毎月実施している全国電話世論調査で、発足直後からの菅内閣の支持率を見てみます。
65%という高水準でスタートダッシュを切った菅内閣の支持率。10月調査では53%に落ち込みましたが、11月調査では56%とやや上がりました。30代と70歳以上をのぞく年代で10月調査よりも持ち直す傾向が見られました。
支持率が下げ止まった背景には、10月調査で支持率下落の一因となった「日本学術会議」問題への視線の変化がありそうです。
この問題は、日本学術会議が新たな会員候補として学者105人を推薦したのに対し、そのうち6人を菅首相が任命しなかった、というものです。
菅首相の対応は、「(同会議の)推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」と定めた日本学術会議法違反の疑いが指摘されています。
「日本学術会議」問題について、10月と11月の調査では菅首相の対応を妥当かどうか聞きました。
11月調査は「妥当だ」34%、「妥当ではない」36%という結果となり、10月調査よりも「妥当だ」「妥当ではない」が競り合いました。「妥当だ」は、18~29歳と30代、60代で10月調査よりも増えました。
菅内閣を「支持する」理由を分析すると、菅内閣の支持率の内実が見えてきます。
「支持する」理由のトップは菅内閣発足以降、つねに消極的な支持理由の「他よりよさそう」でした。一方、首相の人柄などを積極的に支持する「首相が菅さん」は9月こそ23%でしたが、10月調査で15%に下がり、11月調査でも16%でした。
菅内閣は積極的な支持よりも、消極的な支持に支えられていると言えそうです。
菅内閣の支持率は今後、どうなるのでしょうか。「日本学術会議」問題と新型コロナウイルス対応という二つの懸案がカギを握りそうです。
「日本学術会議」問題については11月調査で、回答を留保するなどした「その他・答えない」が30%もいました。首相の任命拒否が妥当なのかどうか、まだ判断がつかない人が相当いるようです。
開会中の国会での菅首相の説明に納得できるかどうかを尋ねると、「納得できない」が49%で、「納得できる」は22%にとどまりました。内閣支持層でも「納得できない」41%が「納得できる」33%を上回っています。
朝日新聞社が10月28日から11月6日までに衆参両院で行われた代表質問と衆参予算委員会での約1250の政府答弁を対象に「答弁」「答え」「コメント」「説明」を「控える」などと答弁したものを集計したところ、「お答えを差し控える」などの表現は早くも80回近くになりました。最も多かったのは「日本学術会議」問題で、首相や閣僚、内閣法制局長官ら菅政権全体で48回。そのうち42回が菅首相でした。
11月に入って感染が急拡大している新型コロナ対応についても、世論はシビアに見始めています。新型コロナへの政府対応について、「評価する」は10月49%→11月46%にやや下がりました。感染拡大による生活が苦しくなる不安について「感じる」も10月52%→11月56%とじわりと増えました。
いまの国会の会期は、12月5日までです。11月25日には、菅首相と野党議員らが一問一答で討論する予算委員会の開催が予定されています。
「日本学術会議」問題をめぐって、今国会の序盤でみせたような「説明拒否」の答弁姿勢を改めるのか。新型コロナの感染拡大に対する国民の不安を解消するような対策を打ち出せるのか。
菅首相の「国民との向き合い方」が問われる冬となりそうです。
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