連載
#59 ○○の世論
それでも「Go To」使いますか? 世論調査から見えた〝戸惑い〟
「延長」こだわる菅政権、ちらつく五輪の影
新型コロナウイルスの感染者が国内で再び急増するなか、菅義偉内閣が推し進める観光支援策「Go To トラベル」に注目が集まっています。菅内閣は来年1月末までのキャンペーン期間を延長する方針ですが、世論はこの方針をどう見ているのでしょうか。11月に朝日新聞社が行った全国電話世論調査を分析してみました。(朝日新聞記者・磯部佳孝)
「Go To トラベル」は7月22日に東京都民と東京を目的地にした旅行をのぞいて全国ではじまり、10月1日からは東京発着の旅行も対象となりました。国土交通省によると、10月末までに約3976万人分の利用がありました。菅内閣は「Go To トラベル」を延長する方針です。一方、新型コロナの感染者数は11月12日から3日連続で過去最多を更新しました。
朝日新聞社が11月14、15日に行った全国電話世論調査では、「Go To トラベル」を延長することへの賛否を聞きました。
全体では、「反対」51%が「賛成」37%を上回りました。
新型コロナの急激な感染拡大が「Go To トラベル」延長への懸念を広げているようです。
ただ、男女別や年代別、地域別に分析すると、「Go To トラベル」延長に対する温度差が浮かびます。
男女とも「反対」が「賛成」を上回りました。女性が男性よりも「Go To トラベル」延長に否定的のようです。
年代別では、若年層と中高年齢層で傾向に違いが出ました。18~29歳は「賛成」57%と過半数に達し、「反対」36%を大きく上回りました。30代も「賛成」49%が、「反対」43%を上回りました。一方、40代以上は「反対」がいずれも50%以上で、特に60代は「反対」が63%にのぼりました。
地域別では、東京と、東京・大阪をのぞく「その他の地域」で正反対の傾向となりました。東京では「賛成」52%、「反対」39%だったのに対し、その他の地域では「賛成」34%、「反対」53%でした。感染が急拡大している北海道では、「反対」が7割でした。
「新型コロナウイルス対策と社会経済活動の両立」を掲げる菅首相はいまのところ、「Go To トラベル」を含む消費喚起策「Go To キャンペーン」の見直しには否定的です。「Go To トラベル」の延長幅について、菅内閣を支える与党からは、来年5月の大型連休や夏の東京五輪・パラリンピックまでの延長を求める声が出ています。
菅首相が「Go To トラベル」の先に見据えるのが五輪の開催です。首相の肝いり政策に加え、五輪の成功を成果にして衆院を解散して国民に信を問い、「本格政権」を樹立する――首相周辺はこんなシナリオを描いています。政府・与党には、「五輪は最大の政権浮揚策」(政権幹部)との認識が広がっています。それだけに、菅首相にとって「Go To トラベル」延長は譲れない一線なのです。
ただ、内閣支持層に限ってみても「Go To トラベル」延長には「賛成」46%、「反対」43%と割れました。菅内閣の支持層といえども、「Go To トラベル」延長に懐疑的な見方をしているようです。内閣不支持層は「賛成」21%が、「反対」71%を大きく下回っています。
立憲民主党の枝野幸男代表は「検査なき『Go To』が問題だった」と政府の対応を批判し、感染者の急増を「明確な第3波だ。今回は完全に人災だ」と指摘。開会中の国会で追及する構えです。
新型コロナの感染が急拡大するなか、菅首相が肝いり政策への支持をとりつけながら、政権運営をできるのかどうか。「Go To トラベル」への対応が菅内閣の支持率を左右しそうです。
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