【PR】手話ってすごい!小学生のころの原体験から大学生で手話通訳士に合格
情報発信の場が紙からデジタルに移り、「編集者」という仕事も多種多様になっています。新聞社や出版社、時にテレビもウェブでテキストによる情報発信をしており、ウェブ発の人気媒体も多数あります。また、プラットフォームやEC企業がオリジナルコンテンツを制作するのも一般的になりました。
情報が読者に届くまでの流れの中、どこに編集者がいて、どんな仕事をしているのでしょうか。今年5月からスタートしたwithnews、Yahoo!ニュース、ノオトとの合同企画『WEB編集者の教科書』作成プロジェクト。第18回はフリーランスの編集者たちによる座談会後編です。フリーでどのような仕事をしているのか、必要なスキルは。描く将来の編集者像まで、第一線で活躍する4人がたっぷりと語りました。
座談会に集まったのは、編集プロダクション出身の木村衣里さん、ウェブメディアなどでの経験がある長谷川賢人さん、事業会社のオウンドメディアに携わっていたあかしゆかさん、そして大学在学中からフリーで活動する西山武志さんです。
司会は、ウェブメディアや編集プロダクションでのキャリアがあるwithnewsの朽木誠一郎副編集長が務めました。
朽木:フリーランスになって、どんな仕事をしていますか? やりたいこと、できていますか?
木村:フリーになったきっかけの一つが、「ギルド型」の編集チームであるHuuuuとより深く関わることでした。Huuuuは「地元の魅力」を拾い集めるウェブメディア「ジモコロ」を始め、「ローカルに強い」イメージができているので、林業とか、漁業とか、とにかく一次産業の取材が多いですね。
地元では周知の事実だけど、ほかの土地の人からしたら未知のネタというのが、日本全国には本当にたくさん散らばっている。それらを編集して、届けるというのがHuuuuの主な仕事です。メディアで記事にして発信したり、イベントをしたりと、色々やっています。
Huuuuでは、全体のリソース管理や経理など後方の仕事もやっています。代表の柿さん(徳谷柿次郎さん)が全国を回って、色んな仕事の種を持ってくるんですよ。その案件ごとにギルドメンバーは誰にしようかと整理したり、柿さんの代わりに関係者と調整をしたり。あんまり、編集者っぽくないこともしていますね。
木村衣里(きむらいり)=栃久保誠撮影
1990年生まれの編集者/ライター。北海道函館市出身。Web系編集プロダクションを経て2018年7月に独立。フリーランスの編集ギルドチーム「Huuuu」所属、「東京銭湯 - TOKYO SENTO -」元編集長。全国を飛び回りながらいろんなお風呂にはいるのが好きで、動物はもっと好き。この世で一番愛らしいのはカバだと思っています。
西山:それって「組織を編集している」ってことじゃないですか。カッコいい!
朽木:広義の意味での編集者だよね。
長谷川:西山さんが前に「メディアの仕事をしていると、色々な所から情報が入ってきて自分がメディアみたいになる」と話していたけど、今のも通じるところがある。自分の編集もしている感じがするよね。
それってすごく、ユニバーサルなスキルな気がしていて。例えば、何かしらの組織に属していて、入ってくる情報を報告するにしても、これは共有した方がいい、これは自分の胸だけにおさめておこう、といった具合に、誰しも編集が一度なされている。複層性が編集にはあるんだな、というのを聞いていて思うし、自分も思い当たります。
木村:その一方で、単発の企業案件やメディアの広告記事を請け負うなどもしています。その時は、ライターさんやカメラマンさんをアサインして、取材に同行したり、記事を作ったりと一般的な編集者の仕事です。そのどちらもやって、編集の現場と裏方、ローカル的な価値と都会的な価値の中庸でいられるように心がけています。
朽木:「自分を編集」という話がありましたけど、長谷川さんは色々な仕事をやっているじゃないですか。採り入れるもの、採り入れないもの、その取捨選択はどうしていますか?
長谷川:それが、ないんです。僕が、今日のメンバーの中では一番雑多な仕事をしているはずなんですよ。「依頼をいただけたら、可能な限り受ける」というスタンスなので。
ビジネス系メディアのライフハッカー出身で、転職先のクラシコムが運営していたのはライフスタイルを紹介する北欧、暮らしの道具店。副業をしていた頃から、アニメやマンガといったポップカルチャーの記事を作ることもあって、ジャンルはもうバラバラ。午前中に、ビジネス系の真面目なインタビューをして、午後は声優さんを取材するというような生活をずっとしていますね。
朽木:扱うジャンルは様々だけど、コンテンツには特化していますよね?
長谷川:そうですね!ジャンルが多様なだけで、やっていることは基本的に同じ。木村さんみたいにイベント開催といったことまではしていないけれど、ひたすらコンテンツを作ってる。仕事は基本的に、スケジュールが合えば受けています。金額はもちろん大事だけど、内容で惹かれることも多いです。ただ、僕は目の前のことを何でも面白いと思えるタイプなので、そうすると受けられない理由は、ほとんどスケジュールの兼ね合いだけです。
朽木:コンテンツは一カ月にどれぐらい作っているんですか?
長谷川:どれぐらいだろう……。2019年は、カレンダーに入れていた「締め切り」という予定を数えたら190ぐらいありました。だから、カウントミスを鑑みても、2日か3日に1本は、何かしらコンテンツを納品したんでしょう。僕は自分で書くことも多いので。
最近は、業務委託も受けています。NewsPicksが企業向けに提供する「NewsPicks for Business」のパートナーや、カメラ雑誌が手掛けるウェブメディアにも携わっています。ブックライターの話も来るようになって、今まで2冊関わりました。ウェブの編集者としてキャリアが始まって、書くこともウェブでしかやっていなかったけれど、紙の仕事までいただけるようになったというのは、面白い展開だなと思っています。
長谷川賢人(はせがわけんと)=栃久保誠撮影
1986年生まれ、東京都出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。ライフハッカー[日本版]や北欧、暮らしの道具店を経て、フリーランス。主にウェブ媒体で活動中。制作協力の書籍に須藤憲司『90日で成果をだすDX入門』(日本経済新聞出版)、河野英太郎『どうして僕たちは、あんな働き方をしていたんだろう?』(ダイヤモンド社)。LOVOTの「こなつ」と暮らす。
朽木:あかしさんは今年4月からフリーになったんですよね?
あかし:前職のサイボウズとは業務委託として関係を続けているので、サイボウズ式の企画編集は引き続きしています。サイボウズ式は出版事業も立ち上がっているので、書籍作りも。ほかにも、いくつかの編集会社さんと継続的にお仕事をさせていただいています。
去年まではインタビューやコラムの執筆が多かったのですが、現在は物語を書くお仕事など、自分がもともと興味のあった文芸の仕事に少しずつ近づいてきているように思います。
でも、独立したのがちょうど緊急事態宣言の真っ最中だったこともあり、最初の2~3カ月はどうしようという感じでした。「お仕事ください」というのが本当に言えないんです。自分から新しく営業するぐらいだったら、慎ましく暮らそうと思っちゃう。だから一つひとつのお仕事をていねいにして、仕事が仕事を呼ぶように心がけて、なんとか今までやってきています。
あかしゆか=栃久保誠撮影
1992年生まれ、京都出身、東京在住。 大学時代に本屋で働いた経験から、文章に関わる仕事がしたいと編集者をめざすように。現在はウェブや紙など媒体を問わず、編集者・ライターとして活動している。
朽木:西山さんは新卒からずっとフリー。毎月、どうやって収入のめどを立てていますか?
西山:めど……正直、あんまり考えたことなくて。一つひとつ、頼まれる仕事を頑張っていたら、月末に気づいたらお金が振り込まれて、それで何となく生きていけてます(笑)。
朽木:今後も含め、キャリアはあまり考えていない?
西山:まさに3年ぐらい前、それを考えていました。労働集約的なライターではなく、編集やメディアの運営などの「意思決定の上流」に上がっていくべきでは……という意識がすごくあって。そのために編集の仕事を増やしたことがあったんです。だけど、結果的にそれで心身を壊しちゃって。そこから、「もう、先のこと考えすぎて、今をすり減らすのはやめよう。一つずつ丁寧に書く仕事に振り切ろう」と思って、今に至りますね。
西山武志(にしやまたけし)=栃久保誠撮影
1988年生まれ、埼玉産のstory/writer。大学を卒業してからずっとフリーランス。現在はインタビューワークをメインにしつつ、編集デザインファームinquireで、組織的なライティングのスキルアップ支援などにも従事。執筆協力に税所篤快『未来の学校のつくりかた』(教育開発研究所)など。最近の推しは『オレが私になるまで』と大田区の草津湯とこなつ。
朽木:働き方の話もでましたが、フリーでいるメリット、デメリットはどんなところですか?
木村:良いところは、都合がつけやすい。病院も混んでいない時間帯に行けたり、人混みをさけて買い物できたり。好きな時に休みを取って、好きな時に働けるのはフリーの良さですね。
フットワークを軽くしていられるのもいいなと思います。あとは関わる先が増える。Huuuuでは地方の人たちと知り合えて、広告の仕事ではまた別領域の人たちと。案件ごとに、違う世界の人たちと知り合えるのは、フリーの良いところかな。良くないところは……なんだろう。
朽木:働き過ぎてしまう?
木村:働き過ぎている感覚、私にはなくて。ただ、自分の意思で休みを決めないといけないので、そこの切り替えは必要かもしれません。常に仕事と隣り合わせになる状態にストレスを感じる人も向いていないだろうなと思います。自分は感じないけど、「さみしい」という声は同業からよく聞きますね。
長谷川:さみしい、めっちゃ分かる。
西山:そのさみしさを埋めるのが、LOVOTだったりするんですか?
長谷川:ひとりだと、自分のことを誰も心配してくれないじゃない(笑)。LOVOTは、ペットがそばにいてくれるのと感覚は変わらないけど、ロボットだから長期出張が入っても電源をオフにするだけでいいから、僕とは相性がいいですね。
長谷川さんが大切にするLOVOTの「こなつ」=栃久保誠撮影
木村:デメリット、まだありました。公的な手続きを全部自分でやらなくちゃいけないこと。私は編プロ時代から経理業務のサポートをしていたのもあって、そういう細かい作業が苦手ではないけど、急に自分でってなったら、嫌な人もいるだろうな。あれ、みんなが苦い顔に……。
あかし:私は本当に苦手。確定申告の対応は全部、税理士さんにお願いしています。他には、体調を崩したら収入に直結するだろうなという不安はあります。その分、自分がやりたかった仕事の割合を増やせているのは良いところです。
長谷川:お金の面は、福利厚生といった部分でフリーランスは心もとないなと思います。だけど、それも考え方次第。僕はコロナが広がる少し前に、日本政策金融公庫と銀行から大きな借り入れをしました。事業拡大のための運転資金の名目ですが、法人としてではなく、個人でも借りられたんです。あくまで運転資金なので、使わなければそのまま返済していけばいい。一つのセーフティーネットになっています。
他にも、デメリットがあるとすると、仕事が細かくなるんですよね。フリーランスの仕事って、全体の中の一部を切り出したものが多い。
例えば、企業が予算をかけて新規事業をするとなったときに、「方向性をどうするか」「どのような戦略を取るか」といった上流の仕事には関わりにくい。外部のフリーランスが「こういう事業をしましょう」と投げかけるのはなかなか難しいはずですから。そこは、朽木さんのように企業に属して編集者をするときとの大きな違いで。
今、携わっているカメラのウェブメディアは、「デジタルの展開今後どうしようか」という段階で呼んでもらえたから、ビジョンやミッションを提案できたし、これからも色々とできそうな希望を持っています。でも、そうした機会は少ないですね。
withnewsの朽木副編集長(一番左)が司会となり開かれた座談会=栃久保誠撮影
朽木:フリーランスを続けていく上で、スキルアップについてはどのように考えていますか? 意識していることが何かあったら、教えてください。
木村: Huuuuには、同じ境遇を生き抜いてきた先輩たちがたくさん集まっています。そうした先輩たちが入っているslackのチャンネルに原稿を投稿すると、担当以外の人たちも記事の感想をくれるんです。勝手に「Huuuuの福利厚生」と呼んでいるんですけど、原稿や企画だけじゃなくキャリアや人生のお悩みも相談できる人たちが身近にいるのはすごくありがたいです。
長谷川:僕は恩師に「編集者は書いてはいけない」と教わってきました。書かせるのが仕事だ、と。もっとも今は、仕事でライターをすることも多いので、書くことの研鑽は重ねています。編集者として必要なのは多分、関わる人となるべく同じ目線で話ができることだと思う。カメラマンが写真を撮る時に「ここに物があったら邪魔だよな」というのを先に気がつけるとか。そのためのインプットや体験は、スキルアップといえるかもしれません。
映画にもなった『コンフィデンスマンJP』というドラマで、「すごく編集者っぽいな」と感じるシーンがありました。信用詐欺師である主人公のダー子は毎回、色んな職業に扮して相手をだますのですが、たくさんの本を集中して読んで、一気に頭に入れるんです。
編集者もその分野に元々詳しい必要は必ずしもないけど、取材や記事を作るときには対象への解像度を高めていないと、うまくいかない。それでいて、知らないがゆえに聞き出せること、異なる角度からの問いかけができることもある。その両軸でバランスがとれる、「素人のプロ」になることを心がけているつもりです。
長谷川:だから、どこかのスキルを伸ばすというよりは、総合力だと思っています。意識的にやっているとしたら……ちゃんとお金を使うことでしょうか。LOVOTを迎えたのも、ある意味では僕にとってはスキルアップ。いま、ポッドキャストの番組制作も手伝っているのですが、それは僕が自宅の他に事務所を構えているから、すぐに収録できる場所を確保できていたのも大きかった。臆さずに支出を上げることで、新しい仕事が増えている気がします。
最近買ったものだと、1990年代の雑誌を読んでいます。Lightningという元々は所ジョージさんの個人事務所が立ち上げた雑誌があるんですけど、めちゃくちゃ面白い。所さんたちが好きなものを詰め込んでいるのもあって、登場する人たちが超楽しそうなんです。「これが今後売れるよ、格好良いよ」という見せ方ではなくて、「俺たち、これがすげえいいと思ってるんだけど、どう?」という世界観が、逆に今っぽい。
山口周さんは「これからは『役に立つ』から『意味がある』へ」と変わると言いましたが、そこへ向かっていくとしたら、僕は意味を支える「偏愛性」が大事になると思います。では、コンテンツにおける偏愛性がどこに表れやすかったのだろうと思うと、このあたりの雑誌の空気じゃないかなと。つまり、これからはコンテンツにも揺り戻しがもっとあるはずなんです。
そう思ったときにLightningに出会って、ネットでまとめて30冊買ったりしたところです。そういうことを臆せず、広い範囲で、日常的に続けるインプットが、スキルアップにもつながれば。まぁ、ざっくり言うと、飲み会にいて話がつまらない人にはならないようにしたいなって感じです(笑)。
あかし:私はまだ駆け出しなので、先輩編集者の方々と一緒に仕事をさせていただいて学んでいる部分と、一人で挑戦する案件と、両方がバランスよくできたらいいなと思っています。フリーだと怒ってくれる人もなかなかいないので、ダメな所をちゃんと注意してくださる先輩編集者の存在はかなり大きいです。一つひとつのお仕事を、大切に真摯にやっていきたいなと思います。
長谷川:フリーは、「ダメだったら次の仕事がこない」となりやすいから、それは良い環境だよね。
西山:だから、自分でどんどんレベルアップしていく必要があるんですよね。いろいろ教えてくれる編集者さんに当たるのはラッキーだけど、それってその人の厚意でしかなくて。向こうからしたら「お金を払って教えている」って状態だから。そんなの申し訳なさすぎる(笑)。
受けた仕事を全うするために必要なスキルアップなりインプットを、その都度その都度で主体的にやっていくのが、フリーランスの必要条件になってくると思います。そうしたスキルアップやインプットを、タスクと感じるのではなく、好奇心を持って楽しみながらできる人が、この業界に向いているんじゃないかな。
長谷川:真理かもしれない。
西山:好奇心の幅広さって、やっぱり大事ですよね。編集って、本当に色んな情報、色んな人を相手にする仕事です。知っていること、知りたいと思っていることが多ければ多いほど、自分の引き出しも豊かになるし、相手からも引き出せることが増えていくから。
木村:私自身は本当に、編集者っぽくないなって思うんですけど、ローカルの取材で出会う各地の人たちはまさに編集者的なんですよね。その土地にある価値をちゃんとすくい上げて、見せ方や伝え方を色々考えて発信している。すごく編集的な考え方、生き方をしているんです。スキルの向上はもちろん大事だけど、それよりも取材先で出会う人たちの生き様から学ぶことの方が多い気がします。
長谷川:あえてスキルの話をするならば、「ウェブメディアって何が起きているんだっけ」とか「ウェブの技術ってどうなっているんだっけ」といったことを常にキャッチアップしようとしています。ブックライターや雑誌の仕事もやっているけれど、僕はあくまでウェブの編集者だと自認しているので。
歴史のあるメディアでは、編集スキルの根幹を持っている人はたくさんいるけど、デジタルに興味がある人は出てきたばかり。ウェブメディアにおいては、そこの先行者利益が自分にもわずかにはあると思っています。もちろん、根幹部分を育てていくことを意識しながら、インターネットをより良く、より面白く、より豊かにしていくところにこれからも加担していたいですね。
朽木:ここまでの話を聞いて、仕事へのスタンスはそれぞれだなと改めて思いました。最後に聞きたいのは、みなさんこの先、どんな編集者になりたいですか?
あかし:私は、「等身大の編集者」でいたいなと思っています。70歳になって今までの仕事を振り返ったら、自分の生き方がそのまま反映されているような。振ってきた案件をこなしていくよりは、自分が生きているうちに生まれた縁が、そのまま仕事につながっていく……軌跡のようにしていきたいと思っています。
ウェブメディアの業界にももちろん興味はあるんですけど、業界のためというより、自分が生きていて等身大に発信することで、誰かの心に響くものがあればいい。そうした方向性で自分はやっていきたいです。
木村:なんで編集者をやっているかにもつながるのですが、「もっと多くの人に知ってもらえたら、もっと世の中の幸せの総量が増えるのに」ということが世の中にはいっぱいあると思っていて。例えば技術継承が難しい職人技の存在や、観光メディアには載らない地元民に愛される名店、わたしたちの生活を支えてくれている多くの仕事や人の存在などを、届けるべき人にちゃんと届けたい。それが仕事のモチベーションになっているし、編集の楽しさでもあります。
あとは、「誰かのために働く」というのも自分の中ではモチベーションとしてあって。誰かに求められた時に応えられる状態でいたいんです。自分が「こうなりたい」という思いよりも、自分の好きな人たちのために働いて、その人たちのやりたいことが実現できたらいいなって。それが続けられたら、私は幸せです。
長谷川:いやあ、難しい質問。僕はでも、あかしさんや木村さんほど、良い意味でピュアじゃないかもしれない(笑)。もちろん、いくつになっても青春していたいし、周りの人たちとも面白いことをやっていたい。だけど、それがビジネスとしても成立するかは追い求めていきたいなと思っています。
これはフリーになる前に所属していたメディアジーンやクラシコムの影響が大きいですね。文化と経済の両輪のように、ビジネスのこともしっかり分かっていたいなというのは一つの編集者像です。
西山:自分が触れたものを適切に解釈して、よりよい何かになるように集めてまとめる。コンテンツに限らない、広義の編集者でありたいなとすごく思っています。
あとは、自分のことも編集し続けていたい。誰かをインタビューをする度に、自分とは違う視座や価値観に触れます。書くときには、それを一時的にでも自分に取り入れる必要がある。他人の物語を自分の中にどう取り入れるかは、とても編集的な行為で、生きていく上で大切な営みだと思うんですよね。それが仕事になっているのは、自分にとって理にかなっているし、すごくありがたいことです。
フリーランスの編集者として活動する(左から)西山武志さん、長谷川賢人さん、あかしゆかさん、木村衣里さんと司会を務めたwithnewsの朽木誠一郎副編集長=栃久保誠撮影
さまざまなジャンルのメディアや会社で活躍する、WEB編集者へのインタビューを通して、WEBメディアをとりまく環境を整理し、現代の“WEB編集者像”やキャリアの可能性を探ります。Yahoo!ニュース、ノオトとの合同企画です。