通勤や通学、旅行先など、どこに行ってもみかけるガチャガチャ。馴染みのあるスーパーボールや、ポッピンアイの他にも、最近ではSNSで話題になるシリーズも増えています。「丁寧な暮らしをする餓鬼スタンドフィギュア」は、そのユニークさで群を抜いています。いったいどんなコンセプトから生まれたのか……。全国津々浦々を巡り、2日に1度はガチャガチャを回す「ガチャガチャ評論家」のおまつさん(@gashaponmani)が解説します。
「自分らしさ」表現するメーカー、直感勝負
小川勇矢さんが代表を務めるクオリア(@Qualia_45_)は、4年前に立ち上がった新鋭のガチャガチャメーカー。4年間で200タイトルほどの商品を生み出しています。
社名のクオリアはラテン語で「自分らしさ」の意味を表します。
小川さんは「クオリアにしかできないアイディアで勝負したい。今までのガチャガチャ業界の枠にとらわれず、若いメンバーと『クオリアらしさ』を商品で伝え、お客様を喜ばせたい」と、社名に対する想いを話します。
また、商品作りで重要視しているのが「説明がいらない、見て楽しい、わかりやすいというシンプルさ」だと語ります。
小川さんは会社を立ち上げる前に、ガチャガチャメーカー「キタンクラブ」の営業を経験していました。その経験からガチャガチャの見せ方や伝え方を熟知し、ガチャガチャの企画を見ただけで、直観でイケるかどうかわかるようです。

「世界観、商品にしたら絶対に売れる」
この商品はクオリアと、クリエイターの塵芥居士(チリアクタ・コジ )さんとのオリジナルのガチャガチャです。
そもそも「丁寧な暮らしをする餓鬼」(@gaki_teinei)は、2019年9月に突如ツイッターに登場しました。
「餓鬼」の概念を覆す丁寧すぎるキャラクターは人気を集め、わずか1か月でフォロワーは4万を超え、11月の時点で約10万フォロワーになっています。
7月に商品の事前告知をすると、ツイッターで約4000「いいね」を獲得するほど、SNSで話題になりました。
今まで、メーカーが餓鬼をガチャガチャにする発想はありませんでした。
しかし、小川さんは塵芥居士さんと話した際に、「餓鬼の世界観を立体にしてガチャガチャにしたら売れる。絶対に面白い」と閃き、その日の内に餓鬼を商品化すると決めたそうです。
そして、実際10月末に商品化されました。

絶対に売れる、ただ売れなくてもいい
小川さんは「初版の注文数が少なくても絶対に売れる」と確信していたので、クオリアの営業には「絶対に売れる。ただ、売れなくてもいい。お客様が、クオリアはが面白いものを作っていると思ってくれればいい」と伝えたそう。
営業には「売れなくてもいい」とは言ったものの、小川さんの「絶対に売れる」という確信は的中。来年3月には、現実に小川さんの見込み通り、再販になる予定です。
400円のクオリティーを300円で
そんな餓鬼のガチャガチャは1個300円。ラインナップは、シークレットを含め全7種類で「おにぎりを握る餓鬼」「お弁当を詰める餓鬼」「ぱっちわあくをする餓鬼」「掃除機をかける餓鬼」「コーヒーをたしなむ餓鬼」「水分補給をする餓鬼」「シークレット」。見てわかる通り、ひとつひとつ細部のこだりがみ見られ、芸が細かいです。
一般的にガチャガチャの価格は制作の工程数が多くなればなるほどコストがかかり、価格に反映されます。餓鬼のガチャガチャは実際には1個400円かかるほどのクオリティですが、小川さんは「お客様のお財布事情を考えたら300円。400円のクオリティのガチャガチャを300円で買えるようにする。これがクオリアらしさ」と笑っていました。
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ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani)
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。