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連載

#87 #父親のモヤモヤ

「妻に言えない夫の本音」とは?父親たちが感じた“希望といら立ち”

「読書会」で感想を語り合いました。

『妻に言えない夫の本音 仕事と子育てをめぐる葛藤の正体』(朝日新聞出版)
『妻に言えない夫の本音 仕事と子育てをめぐる葛藤の正体』(朝日新聞出版)

目次

#父親のモヤモヤ
※クリックすると特集ページ(朝日新聞デジタル)に移ります。

「#父親のモヤモヤ」が『妻に言えない夫の本音 仕事と子育てをめぐる葛藤の正体』というタイトルで、朝日新聞出版(朝日新書)から発売されました。本を読んだ父親たちはどんな感想を持つのでしょうか。9月下旬、発売前の原稿を基に、読書会で感想を語り合いました。
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<#父親のモヤモヤ・オンラインオフ会を開きます>
11月21日(土)10時より、父親を対象にしたオンラインオフ会を開きます。
テーマは「父親とジェンダー」です。

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「モヤモヤ」を言語化する読書会


<読書会には、これまで「父親のモヤモヤ」のオンラインオフ会に参加したことのある父親4人が集まりました。冒頭ではまず、企画班の朝日新聞・高橋健次郎記者と書籍編集者の朝日新聞出版・喜多豊さんが本書への思いを語りました。>


高橋健次郎記者(以下、高橋記者):この企画は、「モヤモヤを言語化する」ことを大きな目標にしているので、読書会を通じてもモヤモヤの言語化ができればいいなと思っています。

 

そして、感じたモヤモヤを、同じバックグラウンドの人だけでなく、違うバックグラウンドの人へどう伝えていったらいいのかが私自身の課題です。どうやったらいいんだろうというのは常に悩んでいます。モヤモヤの背景には、社会的なことも大きくあるので、多くの人にこのモヤモヤを届けたいと思っています。

 

喜多豊さん(以下、喜多さん):withnewsで連載を拝読していて「すごい問題提起だな」と思っていました。モヤモヤを話すということ自体ハードルが高いのですが、それを実践している。高橋さんのおっしゃった、「バックグラウンドの違う」方々に声を届けるための一つのルートとして本にまとめました。

 

4章立てになっておりまして、それぞれの章の位置づけをお話しします。まず1章目は、象徴的な事例がぎゅっと詰まっています。「妻に言えない夫の本音」がどういうものなのかをわかってもらうのが第1章です。

 

第2章は、モヤモヤの社会的背景を解きほぐす、分析していく位置づけです。その先の第4章に関しては「未来への展望」という形で、明るい話につなげています。

 

1、2章は父親目線ですが、3章は女性の目線もしっかりと意識した形で、子育てを見つめ直す章です。その上で、未来の話へ進めるという4章立てになっています。

目次の一部(読書会で使用したスライドより抜粋)
目次の一部(読書会で使用したスライドより抜粋)

「勇気づけられた」「背中を押される」

<作り手の思いを聞いた後、参加者が思い思いの感想を話し合いました。>

 

Aさん:様々な事例を読んで、つらいケースがすごく多いなと思いました。ですが、つらい事例を読むと、私の悩みはそんなに大したことではないのかもしれないと勇気づけられた感じがあります。

 

高橋記者:今の勇気づけられたという話ですが、私は取材でいろんな方のお話を聞いて、かなり救われました。モヤモヤして葛藤しているタイプなので、やっぱり同じようにモヤモヤを感じている人がいたんだということが、すごくうれしかったですね。

 

Bさん:育休取得当事者からしたら、かなり背中を押してもらえるというか、いろんな事例に触れているので、いろんな人に知ってもらいたいと思いました。

 

ですが、やはり育休を取っていない、お子さんもいらっしゃらない方が読んだ時にはピンとこないでしょうし、「またそういう話か」と毛嫌いされてしまうと……この温度感を伝えたいのでいろんな人にお勧めしたい一つではあるのですが、一番核の部分を分かってくれるかと言ったら、ちょっと疑問です。

写真はイメージです
写真はイメージです 出典: PIXTA

「ワクワク感がもっとほしい」

<参加者からは、事前に気になった部分や印象をまとめてもらいました。共感があった一方、第1章から「モヤモヤ」エピソードが続くことに、厳しい指摘もありました。>

 

高橋記者:「率直に申しますと読んでいて、疲れてしまいました」「悲劇をあまりにも押し出し過ぎていて、当事者でそれなりに楽しくやっている私としては苛立ちを感じました」というご感想をいただきました。いい事例をたくさん拾いたい一方で、社会課題も含んでいるということを知ってもらうために、こういった要素は結構含みました。

率直に申しますと、読んでいて疲れてしまいました。

1~3章までは諸問題について取り上げ4章では様々な好例も取り上げていくという建て付けのようで、仕方ないと思う部分はあります。

しかし、何というか悲劇をあまりにも押し出し過ぎていて、当事者でそれなりに楽しくやっている私としては苛立ちを感じました。

社会に男性育休を広げたいです。大変なこともあります。しかし納得して選んだ道です。「我々は決してかわいそうではない」という気持ちがわいてきました。紹介されていたようやむを得ない事情で育児をすることになった方がいるのも事実だとは思いますが。
事前に参加者から寄せられた感想

Cさん:書いたのは僕です。ちょっと辛辣(しんらつ)っぽい感じになると思いつつも、作り手の方は忌憚(きたん)のない意見をほしいだろうと思って。全部読ませていただいて、喜多さんが教えてくださった通りの構成なんだろうなとわかりましたが、「はじめに」でこの本の読み方のナビゲーションがあったらわかりやすかったかなと思いました。

 

高橋さんの熱い気持ちもわかった上で読み進めていくのですが、その割には1、2章がどよんとした感じというか。これから育休を取りたい方がこの書籍をナビゲーションがない状態で1、2章だけ読んだら、「育児無理」となりそうやなぁっていう印象を率直に受けました。

 

僕たちは多分、(男性の育児を)広げたいと思っている側の人間だと思うんです。そういう立場からすると、分かるんだけど、4章の「ワクワク感」がもっとほしい。サカタ製作所の話もテンションが爆上がりでしたから。あの気持ち良さが最初からあったらいいなという感じです。

 

高橋記者:確かに、すごく悩みました。ある程度育児にコミットしている男性でも、その中に温度差があります。育児での最初のハードルみたいなところを対象とする『ボリューム・ゾーン』があるのかなあと考えました。

写真はイメージです
写真はイメージです 出典: PIXTA

タイトルへの評価は

<本書のタイトル「妻に言えない夫の本音 仕事と子育てをめぐる葛藤の正体」についても様々な意見が飛び交いました。>

 

Dさん:まさに本のタイトルになっている「言いたくても言えない」方に潜在的なニーズはあると思います。ただ、パートナーからすると「私だってモヤモヤして言えないことあるわよ」って反発が考えられますね(笑)

 

Cさん:妻に言えよって思います(笑)僕はアクションを起こすタイプなんで、妻に言えないのにアクション起こせるんかいみたいな。トピックによってはあり得るかなと思いますけど。

 

Bさん:この言葉だけを捉えてしまうと、グチっぽく描かれているのかなという印象を受けてしまいますが、そうではない。実はこういう悩みって話さないだけで、僕には僕の苦労があって、妻には妻の苦労があります。それがギュッと凝縮されています。

 

Aさん:サブタイトルがいいなと思いました。本の中でもこれって『女性たちの追体験』と出てきましたが、女性たちがずっと考えてきたことなので、正体、見つけたの?という感じで引き寄せられるかなと。

写真はイメージです
写真はイメージです 出典: PIXTA

「自分と重なる」個別テーマ

<本書では様々な事例を取り上げており、「転勤」に注目する父親もいました。>

 

Dさん:本編の中でも「転勤」や「単身赴任」のテーマが自分と重なるとこが多かったです。

育児や育休となると、まだ男性でコミットされている方って、そこまで多くはないかもしれません。転勤や単身赴任になると、一気に対象者が広がるというか、そもそも育児ができる環境にないという悩みを持っている方も結構いらっしゃる気がします。そういう方向けに共感できる記事があったのはよかったと思います。

育休はハードルが高いですが、「本当は一緒に暮らしたいんだけど」という、もう少しハードルが低い悩みにも寄り添える内容になっているんじゃないかと思いました。


高橋記者:転勤は、育児へのやる気のあるなしを抜きにして、環境に負荷をかける点で課題だと思っています。

 

<Dさんからは、「男性の育児が他の社会問題とどうリンクするのか、次回作で掘り下げてほしい」という要望がありました。Dさんは、育児と社会問題の関連について次のように話しました。>

 

Dさん:私の会社のみならず社会全体がそうだと思いますが、女性を活躍させようとか、女性の管理職を増やそうだとか、そのような風潮がここ数年、大きくなっています。

にもかかわらず、女性の活躍やキャリアを応援しているパートナーに対しては応援しないの?と。それって、ちょっと矛盾してませんかというモヤモヤはいつも思っています。

 

私は子どもも育児も好きですが、育児は、パートナーのキャリアを応援するための一つの手段という位置づけでもあります。育児だけで考えるのではなく、もう少し広い意味での社会問題として捉えています。

写真はイメージです
写真はイメージです 出典: PIXTA

育休へ高い関心

<参加者は、偶然にも全員育休を取得したことがある父親でした。育休に高い関心を寄せている一方、育休取得のハードルの高さを訴えました。>

 

Bさん:僕は、男性育休の前例のない会社で育休を取りました。上司に相談をした時に、「そもそも男って育児休業を取れるの?」という世界から始まったんです。

 

社則にも書いてあって、法律でもオッケーなんですと、社会人10年目とかの人間が、社会人歴40年近い人に説明する構図自体、かなりいびつというか……。おこがましく言えば、周りの考え方を少し変えてもらうところから地道に活動をしています。

 

育児休業期間がすごくいいものだったというのは、本当に紛れもない事実です。それはいろんな人に広めたいと思い、今回のようなイベントに積極的に関わるようにしています。

 

本を読んで、すごく自分の腹に落ちたのは、あくまでも僕が当事者だからです。

 

会社では、働き方が密に業績に結びつきます。本の中にあったカネカの例(カネカの元社員の妻が、夫が育休明け直後に転勤の内示を受けたとツイッターに投稿したことがきっかけで「炎上」し、株価が反応した事例)が顕著だと思うので、会社経営層であれば、売り上げや評価のきっかけに育児休業も少なからず寄与しているということにたどり着いてくれるといいんですけど……。

 

Dさん:なかなかハードルですよね。例えば、職場で家庭の話をすること自体はばかられるというか。そういう空気がまだありますね。

『妻に言えない夫の本音 仕事と子育てをめぐる葛藤の正体』(朝日新書)
(P21「『仕事と家庭を両立させたい』からこそ生じるモヤモヤ」への感想)

育児休業する以前はまさにこのタイトル通り。

仕事中、短い休日の時間でこのフレーズについて考えさせられることが多かった働き盛りだからこそ休めない(自分の会社での立ち位置の保身の為)、またとない貴重な育児時間をやすたすと見逃していいものなのかと。

どちらかしか選べないという社会構造にかなりあらがいたかった(やれる人は仕事も家庭もどちらも上手にあんばいできるのでしょうが、自身はそうではなかった)。
事前に参加者から寄せられた感想
(P52「仕事中心の男性には理解してもらえない苦労」への感想)

「内実」の意味合いが自分事に置き換えられる。

育休取得前、確かに男性育休で「どうせ暇だろ」とか一日のスケジュール立てで手持ち無沙汰にならないかという心配や疑問がなかったわけではない。

強がっていうわけでもないが、実際新生児は父親が対応できるタスクが少なく、逆に言うと「父親でないとダメ」なタスクは皆無。

授乳を始め、「妻でないとダメ」なものは数多くある。これは新生児特有だと思っている。

そんな中で、多子世帯ではほかの兄弟への食事準備や着替え、様々な身支度を育休父親が一身に請け負いこなしていく。洗濯、掃除、食事とまさに主婦の内実を目の当たりにして「忙しい」この一言に尽きる。

しかしそれを経験できたことは今後の夫婦関係においても極めて重要な意味合いを持つと考えている。
事前に参加者から寄せられた感想
読書会に参加した父親たち
読書会に参加した父親たち

「半径5メートル」のアクション


<本書では、「#父親のモヤモヤ」連載を読んだ女性から届いたメールのことを紹介しています。そこには、「日常の些細なことでも、自分の半径5メートルの環境でもよいから、何か変化を起こす行動をしてみよう、そう思わせる記事を配信していただければ嬉しいです」と書かれていました。参加者の一人は、自身が起こせるアクション・ビジョンを話してくれました。>

(P63「自分の半径5mの環境でもよいから」への感想)

非常に共感しました。政治にどのような働きかけをしていくのか、企業にどのようなことを示すのか、個人にどんなことができると発信するのか、このあたりに期待しています。
事前に参加者から寄せられた感想

Cさん:この辺が全部を物語っているなぁって思いました。

解決策がはっきりとはない分野ではあるんだけれども、とは言え、企業や行政のせいにするだけではなくて、個人でも解決策を考えていかないといけないよね、全員責任があるよねっていうことを、メディアは拡声器だと思うので、声を大にして発信していただけたらなあと思います。「半径5メートル」はすごくいい。

 

僕は教員なんですが、個人的にやろうとしてることがあります。男性の育休を、まず学校の先生から取っていくということです。当たり前に育児参加しつつ、自分の私生活も仕事も大事にしながら働くっていうのもいい。

子どもにそういう背中を見せていくということが、まず、自分のやることじゃないかな。

父親のリアルな声、お寄せください

記事の感想や体験談を募ります。いずれも連絡先を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.com)で、朝日新聞文化くらし報道部「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。
<#父親のモヤモヤ・オンラインオフ会を開きます>
11月21日(土)10時より、父親を対象にしたオンラインオフ会を開きます。
テーマは「父親とジェンダー」です。

「威厳を示さないと」「弱音を吐くのは恥ずかしい」--。何げない感覚に「男だから」という意識がひそんでいるかもしれません。子どもと接するときも、性別で判断していることはないでしょうか。

ジェンダーに関する日頃のモヤモヤを自由に語り合いませんか?
詳細はコチラをご覧ください。ご参加をお待ちしています。
 

共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。あなたのモヤモヤ、聞かせてください。
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