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「エゴサの鬼」河野太郎大臣、10年分のツイート分析からわかった異変

「ツイッターはやらない」河野大臣を「宗旨替え」させたのは…

会見する河野太郎行革担当相=2020年9月17日、西畑志朗撮影
会見する河野太郎行革担当相=2020年9月17日、西畑志朗撮影 出典: 朝日新聞

目次

「エゴサの鬼」とも称され、フォロワーとの軽妙なやりとりで度々注目されてきた河野太郎行政改革担当大臣のツイッターアカウント(@konotarogomame)。開設から10年以上が経ち、現在200万人以上のフォロワーを抱えています。河野大臣はどのようにツイッターと向き合ってきたのでしょうか。これまでのツイートをデータと発言から読み解くと、フォロワー増加による「ある変化」がありました。
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「ツイッターはやらない」河野大臣を「宗旨替え」させたのは…

河野大臣がツイッターのアカウントを開設したのは、2010年1月。フォロワーは200万人を超え、日本で最もTwitterを活用している政治家と言っても過言ではありません。実は最初の投稿では、現在の活発なタイムラインからは想像できない意外な心情がつぶやかれています。「これまでツィッターはやらないと行ってきましたが(ママ)」。その背中を押したのは、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長でした。

突然の「宗旨替え」だったためか、周囲からは「偽物疑惑」が出ていたことも明かしています。

世耕参議院議員から電話が入り、ツィッター始めた?
偽物疑惑が出ているらしい。お騒がせしました。
@konotarogomameが日本語、@konotarompは英語発信用です。
河野大臣のブログ「ごまめの歯ぎしり」(2010年1月14日)より
そして最初の投稿からわずか4日後にはフォロワーが1万人を突破したことを報告。約半年後には5万人を突破しました。英ブランドウォッチ社のソーシャルメディア分析システムを使って、ツイート数の推移を見てみると、2010年当初から活発にツイートしていることがわかります。
 

その後も着実にフォロワーを増やしていき、「ツイッター生活」を謳歌しているかと思いきや、2011年5月にはブログでこんな「弊害」をつづっています。

僕にツィッターを勧めてくれた孫正義さんと食事をした時に、ツィッターを始めてから読む本の量が減りました、とツィッターの弊害を申し上げた。

ツィッター以前は、電車の待ち時間とか、会議が始まるまでの5分とかに本を開いて読んでいたが、ツィッターを始めてから、そうした時間はツィッターにとられるようになった。

結構、この数分の積み重ねが馬鹿にできない。
河野大臣のブログ「ごまめの歯ぎしり」(2011年5月8日)より
長さ247m、幅12.5m、深さ7mの「大水槽」を視察中、脇を締めて撮影する河野防衛相=2019年10月20日、藤田直央撮影
長さ247m、幅12.5m、深さ7mの「大水槽」を視察中、脇を締めて撮影する河野防衛相=2019年10月20日、藤田直央撮影 出典:「記者泣かせ」の河野大臣ツイッター ひまつぶしが今や…ブロックも

破竹の勢いでフォロワーが増加

アカウント開設から約3年の2012年末にはフォロワーは20万人超え。2013年に「ネット選挙運動」が解禁されると、SNSでの応援も呼びかけてきました。
 
その人気が爆発したのは、2019年6月頃。外務大臣在任中でした。この頃から、それまでに増して頻繁にツイートするようになります。過去1年間の平均月間ツイート数(RT含む)は121件でしたが、2019年6月は446件。ここからは更に投稿のペースを上げていきました。
 

その勢いのまま、2019年9月に防衛大臣に就任すると、約1カ月で20万人ものフォロワーが増加。自衛隊の「ファン」も取り込みながら破竹の勢いで100万人を突破し、2020年9月末には200万人へ。この1年で約100万人のフォロワーを増やしています。

防衛大臣に就任した2019年9月11日の会見では、ツイートに関する記者の質問にこのように答えています。

(外相当時は)多くの方にツイッターをフォローしてもらうと、その中で外交的な話を出して読んでもらえた、という部分がありましたので、できれば自衛隊の活動や安全保障政策について、あるいは、防衛省について情報発信を織り交ぜていきたいと思っています。私のツイッターは元々暇つぶしで始めたものですから、これだけフォローしてくれる方が増えましたので、それを使わない手はないなと思っております。
防衛省・防衛大臣臨時記者会見(2019年9月11日)より
参院外交防衛委で答弁に立つ河野太郎防衛相=2020年5月、岩下毅撮影
参院外交防衛委で答弁に立つ河野太郎防衛相=2020年5月、岩下毅撮影 出典: 朝日新聞

ツイートの時間帯から見る大臣の動き

外務大臣時代と防衛大臣時代を比較して興味深いのが、ツイートを投稿する時間帯です。外務大臣在任時は21時頃を中心に夜ツイートが増える傾向があるのに対して、防衛大臣時代は12時台のお昼時にピークがあります。2015年10月~2016年8月の国家公安委員会委員長時代に比べても、外務大臣時代はこうした傾向が異なります。

 

外務大臣としての河野氏は、約2年の在任期間中にのべ123の国と地域に訪問し、歴代過去最多とされています。「3日に1回」以上は出張している計算になるほど、頻繁に外国出張していました。これによる「時差」が投稿する時間帯にも変化を及ぼしていることが考えられます。

北京の釣魚台で開かれた日中外相会談の冒頭で発言する河野太郎外相=2019年4月、鬼原民幸撮影
北京の釣魚台で開かれた日中外相会談の冒頭で発言する河野太郎外相=2019年4月、鬼原民幸撮影 出典: 朝日新聞

更には、テキストマイニングのフリーソフト「KHcoder」を用いてツイートを調べると、外相在任中に最もつぶやかれていたのは「外相」の493回。他にも上位には「会談(418回)」「会合(148回)」「表敬(141回)」など会談にまつわる言葉が目立ち、足を使った外交をアピールする狙いがあると思われます。

リツイートに注力した防衛相時代

2019年9月から防衛大臣に就任してから大きく変化したのは、「リツイート」を頻繁におこなうようになったことです。外務大臣時代は、全投稿に占めるリツイートは23%ほどだったものの、防衛大臣在任中は約44%に増加しています。ここからもフォロワーが増加し、自身の「拡散力」を活かした戦略にシフトしていることがわかります。

在任中に最もリツイートされていたのは、「防衛省統合幕僚監部」(@jointstaffpa)で267回。「防衛省・自衛隊」(@ModJapan_jp)187回、「陸上自衛隊 東部方面隊」(@JGSDF_EA_PR)111回と続きます。自衛隊は基地や地方協力本部、師団単位でもアカウントを持っており、河野大臣は「目指せフォロワー5000人」とフォロワー増加を後押しするツイートも投稿してきました。
また、災害派遣にまつわる情報発信を「現場」から行うことにも力を入れています。防衛大臣就任の直前の9月9日には、台風15号が千葉県に上陸し、各地に甚大な被害を与えました。就任直後から自衛隊の災害派遣にまつわる情報を、積極的にツイッターで発信するように各部隊に指示し、自身も何度もリツイートしていました。

こうした取り組みについて、9月13日の記者会見ではこのように語っています。
(東日本大震災や熊本地震の際に)色々な行動をするときに情報が予め分かっているというのが大事だったというのがありますので、そういう情報がある程度しっかりしている形で出せるのが大事かなと思っております。
(中略)
いつどこで給水をやるとか、いつどこで入浴支援をするとか、そういう先々の情報もできる限り、負担にならない限りで流してほしいという要請をしていますので、そういうのが流れ始めたら、ツイッターでは私がリツイートしようと思っています
(中略)
こういう情報がここにありますよ、と自治体も流してくれていますが、それに加えて、自衛隊の方でもそういう情報が分かれば、部隊ごとに情報を出してください、とお願いをしているところです。
防衛省・防衛大臣臨時記者会見(2019年9月13日)より

行政改革担当大臣になって1カ月、今後は…

それでもツイッターに対しては「基本的には暇つぶし」という河野大臣。ツイッターでは「ほんわかとした癒しのコミュニティ」を理想に、政策にまつわる内容は「ブログやメルマガを見てもらう」という媒体の「使い分け」も意識しています。ツイートを見つけ出す「エゴサの鬼」という〝二つ名〟と、軽妙な返信から親しみやすさが定着する一方、批判的なフォロワーのブロックも厭わないという姿勢も見せてきました。

行政改革担当大臣に就任して1カ月。ツイートの頻度は防衛大臣時代を踏襲しつつも、外務省や防衛省、自衛隊といった、足場となる組織のアカウントがないことも影響しているのか、リツイートの割合は16%程度(10月11日までのデータ)と減っています。
記者会見する河野太郎行政改革相=2020年10月、坂本純也撮影
記者会見する河野太郎行政改革相=2020年10月、坂本純也撮影 出典: 朝日新聞
この変化は、言い換えると、外務大臣、防衛大臣時代は、自身の発信力を大臣として管轄する組織全体にフィードバックしようとする戦略があった現れだとも言えそうです。

デジタル化の推進を進める菅内閣において、行政改革担当大臣として、ツイッター上でも外務大臣、防衛大臣時代とは違う新たな戦略を打ち出すことができるのか。

政界の「ツイッター第一人者」である河野大臣。投稿内容だけでなく、アカウント活用の変化も見逃せません。
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この企画は朝日新聞社の技術部門・情報技術本部の研究開発チーム「ICTRAD(アイシートラッド)」を中心に、最新技術やデータを最近の出来事や身近な話題と組み合わせて紹介する連載です。
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