連載
#51 ○○の世論
吉村知事の人気に引っ張られ……「大阪都構想」賛成が上回った理由
女性は相変わらず反対、「知っている」人ほど賛成
大阪市を廃止して新たな特別区に再編する「大阪都構想」の是非を問う住民投票が、10月12日告示、11月1日に投開票されます。9月の朝日新聞社と朝日放送テレビの世論調査で大阪市民に「大阪都構想」の賛否を問うと、賛成が反対を上回りました。5年前の住民投票では反対が多く否決されたのですが、今度はどうなるのでしょう。(朝日新聞記者・小野智美)
9月26、27日に大阪市民を対象に行った世論調査(電話)では、大阪都構想に「賛成」と答えた人は42%で、「反対」37%を上回りました。
2015年5月17日の前回住民投票の1週間前に行った調査で「賛成」33%「反対」43%と、反対が多かったのとは対照的です。前回住民投票の結果も反対が賛成を上回りました。今回の調査で賛成が多かった要因は何でしょう。前回住民投票の1週間前調査と比べながら探ってみます。
まず、日本維新の会の支持層が厚みを増して「賛成」を押し上げました。とくに今回、男性の維新支持層が厚くなっています。
また、自民支持層にも変化があります。前回、自民支持層は「反対」が多数でしたが、今回は賛否が拮抗するほど「賛成」が増えました。公明支持層、無党派層は今回、前回と変わらず「反対」多数でした。
さらに、今回は男性の「賛成」が増え、全体の「賛成」を底上げしています。前回、男性は賛否が割れていたのですが、今回は「賛成」が多くなっています。女性は前回も今回も「反対」が上回っています。
大阪府の吉村洋文知事と大阪市の松井一郎市長の支持層も「賛成」を引き上げています。
今回の調査で吉村知事の支持率は75%、松井市長の支持率は57%でした。前回調査で当時大阪市長だった橋下徹氏の支持率は43%にとどまりました。
支持層で「賛成」を表明した人の割合は、吉村知事支持層では54%、松井市長支持層では66%です。橋下氏支持層では70%だったので、それに比べると、少ないものの、「賛成」層のほとんどが、厚みのある吉村、松井両氏の支持層で占められています。
今回、大阪都構想の是非を問う住民投票への関心も尋ねたところ、「大いに関心がある」と答えた人は全体で29%、「ある程度関心がある」は全体46%でした。「大いに」は男性では33%、女性では25%。男性のほうが強い関心を示しました。
前回住民投票の1週間前の調査では「大いに」は全体で41%、「ある程度」も全体41%でした。その際も「大いに」と答えた男性は47%、女性は36%と差が生じました。
「関心がある」人の中で大阪都構想への「賛成」の表明が多いのも今回の特徴です。「大いに」「ある程度」と回答した人の中で「賛成」と答えた人が過半数を占めました。前回は「大いに」と答えた人の半数が「反対」と答えていました。
また、今回、大阪都構想の中身を「よく知っている」「ある程度知っている」と答えた人の過半数が、大阪都構想に「賛成」を表明しました。「大いに関心がある」との回答と同様、「よく知っている」と答えた人は全体で6%ですが、男性では10%、女性では2%と違いが出ました。
さて、今回の調査では大阪都構想に賛成と答えた人が多かったという結果になりましたが、11月1日の投票結果もそうなるとは言えません。投票へ行かない人もいるからです。
今回の調査では、11月1日の住民投票へ行くと思うか、調査時点の気持ちも尋ねました。「行くと思う」と答えた人は全体では68%でしたが、大阪都構想に「賛成」の人では82%、「反対」の人では66%でした。
前回住民投票の1週間前の調査では、「行くと思う」と意思表明した人は「すでに期日前投票をした」と答えた人も含めると、全体では77%。大阪都構想に「賛成」(33%)の人の中では92%、「反対」(43%)の人の中では82%でした。前回も今回も賛成派のほうが反対派より投票に対しては意欲的です。
前回の住民投票の投票率は66.83%。結果は、「賛成」49.62%「反対」50.38%の僅差でしたが、反対多数で大阪都構想は否決されました。
果たして、今度の住民投票はどうなるでしょう。
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