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#217 #withyou ~きみとともに~

「コロナがなければ、しあわせだったのに…」小学生のリアルを一冊に

「人によって感覚が違うことがわかった」というその内容は

「コロナのコロ」に収録されているインタビュー「マスクをつけて思ったこと」
「コロナのコロ」に収録されているインタビュー「マスクをつけて思ったこと」

目次

新型コロナウイルスのある社会に生きる若い世代が感じた思いを言葉にする動きが広がっています。「コロナがなければしあわせだったのに」と綴った小学生2年生、「不安とともに今日を生きる」と綴った大学生――。時代を言葉にすることの意味について、小学生がまとめたフリーペーパー「コロナのコロ」や、大学の講義でまとめられたエッセイ集「大学生とコロナの春」に綴られた言葉を追いました。

大宅壮一文庫から発行

東京都世田谷区の雑誌図書館・大宅壮一文庫から発行されたフリーペーパー「コロナのコロ」は、文庫職員の子どもである、小学5年生のまーちゃんと、小学6年生のもーちゃんの二人が作りました。
「休校中ひまなとき何してた?」「マスクをつけて思ったこと」「コロナについて思ったこと」などの質問項目についての9人の子どもたちのコメントや、一斉休校など自分たちの生活に変化について、もーちゃんが考えたことが「未来のこどもたちへ」というテーマで綴られた文章などが掲載されています。

「コロナのコロ」の表紙
「コロナのコロ」の表紙

個人の意見だけじゃつまらないよね

「コロナのコロ」をつくるきっかけとなったのは休校が始まった3月のことでした。休校中、二人はそれぞれの母親の勤務先である大宅壮一文庫に訪れるようになりました。面識のなかった二人でしたが、文庫職員の土屋潤子さんから、どのようにして雑誌は作られるかなどについての授業を複数回にわたって受け、まとめとして自分たちの雑誌をつくることになったのです。

様々なテーマを想定しましたが、最終的にはやはり、コロナ禍を生きる自分たちの生活に目が向きました。

テーマ設定をしてからは、土屋さんがたたき台として作った内容を二人で話し合いながら肉付けしていく流れで、製作を始めました。

「子どもたちの気持ちを集めたい」と二人が話をする中で、もーちゃんは「個人の意見だけじゃつまらないよね」と、アンケートをすることに決めました。

もーちゃんが「人によって感覚が違うことがわかった」と話すその結果の一部を、「コロナのコロ」から引用するかたちで紹介します。

「休校中ひまなときなにしてた?」
・外に出られなくてつまらなかった(Jくん・小1)
・公園で自転車、サッカー、本、テレビ、ケイタイ、ゲーム、アイパッド、DVD、うの(Hくん・小4)

「マスクをつけて思ったこと」
・してないほうがいいきぶん(Tくん・小3)
・使いすてマスクもあらっている(MAちゃん・小5)

「コロナについて思った事」
・怖い、大嫌い、最悪、ぜったい仕返ししてやる(MSちゃん・小5)
・長いつき合いになるけどよろしく(MOちゃん・小6)
・コロナがなければしあわせだったのに(Sくん・小2)
「コロナのコロ」より

わかったのは「バラバラ」

もーちゃんがまとめたコラム、「未来のこどもたちへ」には、「学校が休みになっても友だちと会話をしてほしい」「勉強は自分のペースで」「生活リズムはできるだけ崩さないように」といったメッセージが書かれています。その中で最後に綴られていたのは、差別に関するものでした。

《周りにいる人を病気だと疑って差別したり避けたりしないでください。例えばせきをしている人を変な目で見たり、わからないのに病気だと決めつけるのはよくないと思います。ほかの人がそういうことをしていたら、それに同調しないことが大事だと思います》
「コロナのコロ」より

「コロナのコロ」をまとめてみた感想について二人に聞くと、二人とも口を揃えて言っていたのが「考え方がバラバラなんだ」ということでした。
「いろんな意見や考え方があるんだと思った」と、もーちゃん。まーちゃんは「おもしろかった」と話してくれました。

大宅壮一文庫によると、「コロナのコロ」は、9月末までに120部が配布され、「小さく弱い立場にいる子どもたちの心の声を発信できる雑誌」「素直な文章に励まされた」「子どもたちも色々なことを考えていたことに気づいた」といった感想が届いているといいます。

まーちゃんともーちゃんはいま、第二弾の発行に向けて準備を進めています。

「コロナのコロ」をつくったまーちゃん(左)ともーちゃん=8月、大宅壮一文庫
「コロナのコロ」をつくったまーちゃん(左)ともーちゃん=8月、大宅壮一文庫

エッセイで残した大学生とコロナの春

児童文学作家の梨屋アリエさんが講義・実習を担当する法政大学社会学部の授業でも、「コロナ時代」を生きる大学生の等身大の言葉が綴られたエッセイ集「大学生とコロナの春」が誕生しました。

梨屋さんは、10年以上前から、同大学でエッセイを綴る授業「クリエイティブ・ライティング」を受け持ってきました。テーマは「はじめての○○」だったり「思い出の本」だったり…。

「いつも、まず『エッセイってなんですか?』というところから始まります。学生たちには、自分の価値観を言葉にし、なおかつ読み物として書くということを意識してもらいます」と梨屋さん。

「エッセイを書くことで、『自分の中にはいろんな経験や記憶が蓄積されているんだ』ということに気づいてもらえると思います。自分を捉え直す時間になると思います」

オンライン取材に応じる梨屋アリエさん
オンライン取材に応じる梨屋アリエさん

マスク不足、深夜のコンビニへ

今年の春学期の「クリエイティブ・ライティング」の授業は、全てオンラインで行われ、約40人が受講しました。
「新型コロナ感染症をいつ知って、どのように感じたか」「コロナ前の春休みの計画と実際の春休み」「非常事態下の学生生活」の三つそれぞれに対して学生が自身の思いをエッセイに記しました。

「実家に帰ってオンライン授業を受けている学生も多く、他の学生との違いに気づけたことで個性が出しやすい環境だったとは思います」と梨屋さんは話します。

授業では、学生が書いたエッセイに梨屋さんがコメントし、そのコメントを受けた学生が再考し、14回の授業を経てエッセイを完成させました。

・1月に故郷の中国に帰国した時の不安と安心
・マスク不足を心配して深夜のコンビニを友人と巡ったこと
・通っていたお笑い養成所の卒業ライブが無観客になったことから考えた「不要不急」

学生自身の生活を細部まで表現しながら、初めての事態に戸惑う気持ちが綴られていたものもある一方、春休みを謳歌した経験や、想定外のオンライン授業にも工夫して取り組む姿が多く描かれていました。

・始めたばかりの一人暮らしで毎晩食べるうどんに気持ちを支えられていること
・遊びまくるはずの春休みの予定が消え、「稼ぎまくりの春休みに変わった」こと
・春休みが「延長」したことで実家でゆっくりできたこと
・リモート授業が始まり、身なりを気にしていなかったが、母から告げられた一言で意識が変化したこと

前向きな内容の反面、書かれなかったことも?

「自粛中も工夫しながらZoom飲みしたりしていますよね。出来る範囲で楽しんでいる学生の存在が見えてきました」と梨屋さんはいいます。

出来上がったエッセイ集を学内で案内すると、学内の職員からは「学生たちの姿に安心しました」という声もあったそうです。

一方、報道ではコロナ禍でバイトがなくなり、学費も払えなくなったという苦境を訴える学生の声も多く聞かれます。

近年、梨屋さんは学生と向き合う中で「割と自分の負の感情を出さない学生が多い印象がある」と話します。

今回エッセイ集をまとめる中でも「気分のあがることが好まれ、さがるものへの反応が厳しい」と感じたといい、「『人に読まれるもの』というエッセイの性質もあり、前向きな内容が多いですが、書かれなかった思いもあると思います」と話します。

冊子にまとめられた「大学生とコロナの春」。インターネットでも読むことができる
冊子にまとめられた「大学生とコロナの春」。インターネットでも読むことができる
      ◇

学生たちがwithコロナ時代に思うことが綴られたエッセイ集「大学生とコロナの春」は、(http://www13.plala.or.jp/aririn/creative.htm)から読むことができます。

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