連載
#79 #父親のモヤモヤ
Tシャツのハンガー、上から取るか下から取るか 洗濯から出る価値観
【#父親のモヤモヤが書籍に】
多くの父親の葛藤に耳を傾けてきた連載「#父親のモヤモヤ」が『妻に言えない夫の本音 仕事と子育てをめぐる葛藤の正体』というタイトルで、朝日新書(朝日新聞出版)から10月13日に発売されます。
「イクメン」の誕生から10年。男性の育児が促される一方、葛藤を打ち明けられずに孤立する父親たち。直面する困難を検証し、子育てがしやすい社会のあり方を考える一冊です。詳細はコチラから。
8月29日に開いた「#父親のモヤモヤ」オンラインオフ会には、20~40代の父親10人が参加し、家事や育児分担をテーマに語り合いました。
スタッフとして参加した筆者は、1歳の息子と共働きの夫と3人暮らし。基本的には夫婦それぞれが得意な家事を担当しています。とりわけ2人のこだわりの差が表れたのは洗濯です。夫は洗濯物をためたくないタイプで毎日洗濯機を回し、一方の私は洗濯カゴにこんもりたまってから一気に洗うタイプでした。
干し方にも考えの違いがあり、私がピンチハンガーにハンカチをかける際、1箇所しかつるさなかったら「きれいに畳めない」と指摘されました。
こんな話をしていると、参加者からも洗濯にまつわるエピソードが集まりました。特に「干し方」についてのモヤモヤがあったようです。
ある父親は、感謝の気持ちがあることは大前提にしつつも「妻が干すとゆがむので、ちょっとつらいと思うことがある」と打ち明けました。
「妻はきれい好きなところがあって都度洗わないと嫌だというのですが、干すのはシワシワなままなんです。斜めにハンカチを干すと畳むときにゆがんでしまう。ホテルの畳み方を指定する割には干し方を気にしないので、不一致感はあります」
身につまされました。
「Tシャツのハンガーを上から取るか下から取るかでもめたことがある」という父親もいました。
理由は、上(首元)から取ると「Tシャツが伸びる」からです。思い当たる節がある方も多いのではないでしょうか。筆者は服が伸びると分かっていても、ついつい首元からハンガーを抜いてしまいます。ただ、自分のおしゃれ着だけは丁寧にすそ側からはずしているので、夫に上から取られた日にはプチもめするかもしれません。
その父親は、もめたときのことをこう振り返りました。「そのとき、パートナーはどうしたいのか聞きました。我慢してため込んでしまうとイライラが募ります。自分が育った家庭のルールがあるので、それがぶつかってガチンコバトルになることもありました」
別の父親はシャツの肩のよれを避けるために、妻とハンガーのサイズを分けたといいます。妙案です。ハンガーを使い分けるひと手間が、思いもよらない衝突を回避できるのかもしれません。
「干し方にこだわりが強いのは僕です。でも、自分のこだわりは捨てました」。別の男性はこう話しました。
洗濯は妻の担当。しかし、男性はハンガーの掛け方次第で襟や肩が伸びてしまうことが気になり、妻が干した後に自身の服だけ干し直すことがあったそうです。ただ、妻の立場で考えると「それだったら自分でやりなよ」と気を悪くすると感じ、今では干し方には触れません。
「自分がやるときは、靴下はきれいに形を整えて干すなどしますが、相手がやるときは仕方ないというか、口を出さないようにする。最初はストレスがたまっていたのですが、慣れてくるというか、考え方が変わってきました」
洗濯物の干し方一つにも、これまでの生き方がにじみ出ます。うまく分担できていると思っても、ボタンのかけ違いでモヤモヤすることがあるのではないでしょうか。
参加者の中には、「モヤモヤしてきた瞬間にすぐ話す」という父親もいました。子どもの世話で慌ただしい毎日ですが、「子どもが寝てから1時間など決めて話しています。お互いモヤモヤしている状態のほうがストレスですから」。どこかで歩み寄るポイントを探ることが大切なのかもしれません。
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