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「アイス探してます」から始まった宝探し“FF外より”届いた重大情報

地元役場や商工会議所に取材してわかったのは

ねごとさん(@negotoo)がツイッターに投稿した画像の一部=ねごとさん提供
ねごとさん(@negotoo)がツイッターに投稿した画像の一部=ねごとさん提供

目次

「アイス探してます」という言葉とともに、カラフルに描かれたアイスキャンディーのイラストが、ツイッターで拡散されています。投稿した女性は3年前から、子どもの頃に食べていたアイスキャンディーの情報を集めようと、時折ツイッターで情報を募っていましたが、「アイスの件のツイートがここまで拡散したのは初めてです」。執念の「アイス探し」、答えは青森県にありました。

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60円のアイスキャンディー、子どもの頃の思い出

ツイートを投稿したのは関東出身のねごとさん(@negotoo)です。
9月9日に投稿された「アイス探してます」というツイートは2万4000件以上リツイートされ、「いいね」は5万9000件以上。心当たりの情報を提供するリプライなども200件以上ついています。
女性の記憶によると、花のような形をしたアイスの値段は60円。アイスキャンディーの周りには透明のビニールがかぶせられ、棒の部分が赤いモールで縛られていました。
 

女性に話を聞くと、初めてこのアイスキャンディーを食べたのは、1990年代後半の小学生のころ。
「今はもうないのですが、近所の酒屋さんが子供たちにとっての『駄菓子屋さん』で、そこでよく買ってました」

自転車に乗り始めて行動範囲が広がってからは隣の学区へ行くようになり、別の商店でも買って食べていたといいます。

「お小遣いが少なかったので、60円で買える大きなアイスキャンディー(女性の記憶によると、直径15センチ、厚さ2センチほど)は、とても助かりました」

1997年4月の消費増税により、消費税はそれまでの3%から5%に。
「ピッタリの小銭を握りしめていったら1円足りないことがあったのですが、お店のおばあちゃんがおまけしてくれてすごく嬉しかったのも覚えています」

腹を決めた日の深夜、急展開

女性がアイスキャンディーを探し始めたのは2017年。「 特に理由があったわけではありませんが、『昔、田舎に住んでいた頃よく食べていたので、まだあるなら食べたい』という思いから探し始めました。
探し始めた当初は、ツイートのリツイート数は500リツイートにも届きませんでした。
それに、調べても調べても情報はまったく出てこなかったといいます。ねごとさんは「出てこないっていうことは逆に、まだあるのでは?と思うようになった」といいます。それから、思い出すごとに情報を募るツイートを投稿し続けていました。

インターネットを頼りに細々と探し続けていましたが、今回のツイートは、1日たたない間に2万リツイートを超えました。拡散されたことで、「そのアイス知ってる!」という声が続々とあがり、「20~30年前ごろに食べていた」という情報も、全国各地から集まりました。

「私自身の記憶しかない中、これまではネットで調べても情報がゼロだったので、ものすごくマイナーなローカルアイスなのかと思ってました。ただ今回、私と同じく同じアイスをずっと探している人もいて、情報収集に協力してくれました」

寄せられた情報の中には、これまで写真として見たことのない「実物」の画像もありました。
これらの反響を受け、ねごとさんは「なんだか宝探しゲームのようです」。

今回のツイート拡散で多くの情報が集まっていることについて、「正直ここまで来たら、どこかにまだ売っているのか、とっくの昔に終売しているかの、どちらかの真実にたどり着きたいなと思ってます!」と意気込んでいた矢先の10日深夜、事態は急展開します。

「母が働いていた会社で…」

「FF外より失礼します」から始まるリプライには、こう綴られていました。
「30年以上前ですが、母が働いていた会社で似たようなアイスを製造していたそうです!青森県三戸町の藤村冷菓という会社ですが、現在は廃業されているとの事。只、商品名は忘れてしまったそうです。私も幼少期によく食べましたが、2000年代には見なくなりました…。ご参考までに。」

ねごとさんは、この情報を受け、「恐らく間違いないだろう」と調査はここまでと区切りを付けました。

藤村冷菓のいま…商工会議所、町役場に取材

では、廃業したと思われる藤村冷菓に、件のアイスは実在したのか。
記者はまず、地元企業の情報が集まる青森商工会議所に電話で取材をすることにしました。担当者は「会員情報はありませんね…。ちょっと調べますので詳細をメールでいただけますか」と丁寧に対応してくれました。いま集まっている情報をまとめて担当者に送ると同時に、「藤村冷菓」があったとされる三戸町の町役場まちづくり推進課にも取材。

三戸町は、8月末現在の人口が9773人で、岩手県との境に位置します。絵本「11ぴきのねこ」シリーズの作者・馬場のぼるさんのふるさとでもあり、町のホームページは、11ぴきのねこのイラストであふれています
三戸町の公式HPより

町の担当者の方に聞くと、「調べてみます!」と協力を申し出てくれました。

数時間後、商工会議所の担当者からは、「申し訳ありません、周りの者に聞いたり調べたりしたのですが手がかりがつかめませんでした…」との連絡。廃業したとの情報もある会社なので、やっぱり情報をつかむのは難しいか…。残念!しかし多大なるご協力、本当にありがとうございました。

そしてさらに数時間後、三戸町役場からも連絡がありました。

役場からの情報がなかった場合、次はどこに取材させてもらおうか…と次の手を考えながらドキドキしながら電話をとると、「藤村冷菓さんはあったようです。(藤村冷菓を)知っている職員も、アイスに心当たりがある職員もいました」。

「詳しい話はこちらまでご連絡いただけますか」と、伝えられたのは、藤村冷菓を営んでいたという男性の電話番号でした。

どうかこの方であってくれと思いながら、伝えられた番号に電話をかけると、6コール目でつながりました。
話題になっているアイスキャンディーの詳細を伝えると、電話の主である藤村冷菓の元社長・藤村立夫さん(68)は「『ペロリンキャンデー』という名前で売っていました」。

…とうとうたどり着きました。

2010年、道路拡張を機に廃業

藤村さんによると、ペロリンキャンデーを作っていたのは1980年代から、藤村冷菓が廃業した2010年まで。ストロベリー、オレンジ、ソーダの3種類を作っていました。
販売先は青森県内が中心でした。

ただ、問屋さんへ卸していたものもあったため、そこから県外の駄菓子屋さんに販売された可能性はあるとのことです。

2004年、地元の高校が見学に来た際、撮影した「ペロリンキャンデー」。別のパッケージデザインで販売していた時期もあったそう=藤村さん提供
2004年、地元の高校が見学に来た際、撮影した「ペロリンキャンデー」。別のパッケージデザインで販売していた時期もあったそう=藤村さん提供

昭和36年、藤村さんの父の代から始まった藤村冷菓は、道路拡張工事に伴う工場移転の必要に迫られたことを機に、2010年に廃業。
「ペロリンキャンデーは、四角い氷缶の中に、プラスチック製の花の型を入れて花の形にします。廃業の際、これらは秋田県内の同業者に譲渡しました」とのことでした。

ねごとさんがツイッターで懐かしのアイスキャンディーを探していたことを伝えると、藤村さんは「うれしいですね。昔のことを思い出してくれているっていうことは、何か強烈な思い出があったんでしょうか」と喜びます。

ねごとさんに藤村さんとのやりとりを伝えると、「恐らく間違いないですね。『ペロリンキャンデー』という名前も聞き覚えがあります」。廃業の事実には、「残念な気持ちもありますが、20年経っているしなあ…」とする一方で、「本当は食べたかったですけどね」と無念さもにじませました。

取材結果を元に、ねごとさんが思い出したパッケージ図。「上は商品名のみ、下は商品名に加えて(一部の情報であった)『花キャンディー(デー)』という名称と記憶から再現したデザインです。(正確ではないかもしれません)」とねごとさん。=ねごとさん提供
取材結果を元に、ねごとさんが思い出したパッケージ図。「上は商品名のみ、下は商品名に加えて(一部の情報であった)『花キャンディー(デー)』という名称と記憶から再現したデザインです。(正確ではないかもしれません)」とねごとさん。=ねごとさん提供
全国250以上の駄菓子屋を巡った経験を持つ、埼玉県加須市の「駄菓子屋いながき」の店主・宮永篤史さん(@kazoinagaki_s2)は、まだ製造元が判明していない段階の取材に「見つかっても見つからなくても、温かみのある(アイスですが)とても良いストーリーだと思います。今後の展開が楽しみです!」とメッセージを寄せてくれました。
藤村さんへの取材後、宮永さんにアイスキャンディーの「現在」を報告するとともに、消えゆく駄菓子についてコメントをいただきました。
エルコーン、超ひもQ、先日で言えばようかいけむり・・・この1、2年を見ても駄菓子屋を彩っていたものたちがどんどん姿を消してしまっています。今駄菓子屋に当たり前に並んでいるものも、気がついたら無くなっているかもしれません。皆さんの記憶の片隅にある駄菓子が現存していたら、歴史の迷子にならないようにぜひ今一度食べてみてあげてください。

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