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連載

#49 夜廻り猫

「いいことだから隠れてやる」いつもきれいな道…夜廻り猫が描く善意

夜廻り猫が描く「手入れ」
夜廻り猫が描く「手入れ」

目次

昨日までは草やツルに覆われて通れなかった道が、きれいに刈られて花も咲いている――。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られ、ツイッターで「夜廻り猫」を発表してきた漫画家の深谷かほるさんが「隠れた善意」を描きました。

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草刈り作業「おつかれさまです」と声をかけると…

夜周り帰りの猫の遠藤平蔵と子猫の重郎は、昨日は草が茂って歩けなかった道路に、きれいな花が咲いているのに気づきます。

「道というのは手入れしないと消えてしまう 誰かが草を刈って花を植えたんだ」

近くで、ひとり土を耕している男性がいることに気づきます。
遠藤が「おつかれさまです」と声をかけると、男性は会釈をしてそそくさと隠れるようにいなくなってしまいました。

「はずかしいのかな?わるいことしたのか?」と重郎が尋ねますが、遠藤は「草刈りはいいことさ」と前置きして、
「いいことだから隠れてする そういう心持ちもあるんだ」と語ります。

ふたりが歩く道の遠くから、また土を耕す音が聞こえてくるのでした。

こっそりお世話をする人が全国にいる

作者の深谷さんの87歳になるお父さんは、近所の土手の草刈りをずっと続けているといいます。「刈らないとツルが道路を覆って歩けなくなるのです」

数年前に、「手伝うから、やり方を教えて」と言ったら、お父さんは「朝だよ」と答えたそう。
詳しく話を聞くと、早朝4時や5時から、6時半ぐらいまでで作業をしていました。
「なんでそんなに早くすんの!?」と尋ねると、恥ずかしそうに「人が通んね時にやっぺど思って」と答えました。

しかし早朝には起きられないと考えた深谷さん。その後、お父さんと二人で10時や15時ごろに草を刈ったり花を植えたりしているそうです。

「東京でも、誰かの手が入って花が咲いている場所があります。こっそり世話をする、主にお年寄りが全国にたくさんいることでしょう」

【マンガ「夜廻り猫」】
猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。
ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。

     ◇

深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受賞。単行本6巻(講談社)が2019年11月22日に発売された。

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