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#44 ○○の世論

日本人が「一番輝いていた」時代は?世論調査が示した「意外な本音」

戦後を代表する人物、ダントツ1位は…

1994年3月に撮影されたジュリアナ東京。8月での閉店が決まっていた=東京・芝浦で
1994年3月に撮影されたジュリアナ東京。8月での閉店が決まっていた=東京・芝浦で 出典: 朝日新聞

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夏は、先の大戦や戦後日本の歩みを振り返る報道が充実する季節でもあります。「あなたにとって、戦後日本が一番輝いていたと思う時期はいつですか」。朝日新聞社が2015年に行った世論調査(郵送)で聞くと、「高度経済成長期」と「バブル経済期」を挙げる人が大勢でした。では「輝いていた」頃の日本人は、当時をどうとらえていたのでしょうか。調査結果からは、意外な本音が見えてきました。(朝日新聞記者・植木映子)

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9割 昔の方が「輝いていた」

あのころはよかったなあ――。戦後70年たった2015年の郵送調査の結果からは、そんな日本人の意識がうかがえます。
「戦後日本が一番輝いていた時期」を4択で尋ねると、「高度経済成長期」(1955~73年ごろ)が最多の58%。「バブル経済期」(86~91年ごろ)17%、「戦後の復興期」(45~54年ごろ)14%と続き、「現在」と答えた人は、わずか7%にとどまりました。

 

同じ調査で、戦後の日本を代表する人物を3人まで自由に挙げてもらうと、1位は、ダントツで田中角栄元首相でした。回答者の3割超が選びました。高度経済成長期に首相を務めた田中元首相は、その人物像も含めて右肩上がりの時代のイメージと重なります。2位は、戦後復興期を代表する政治家、吉田茂元首相でした。

高度経済成長期でも意外と……

では、日本人の6割が「輝いていた」と振り返る高度経済成長期に、その実感はあったのでしょうか。1968年の面接調査で、戦前と戦後のどちらが暮らしやすかったかを尋ねています。

「戦後」と答えた人は49%で、「戦前」は28%、「戦前の暮らしを知らない」が17%でした。戦後の方が暮らしやすい理由は、「生活の向上」と「物資が豊富」が、合わせて6割近くにのぼっています。

一方、戦前派の理由は、「物価や税金が安かった」が最多でした。68年と言えば、日本のGNP(国民総生産)がアメリカに次いで世界2位になった年です。そんな時代ですら、「昔の方がよかった」と思う人が、3割程度いました。

 

日本人の気質かも?

戦後40年の1985年に行った面接世論調査では「あなたの人生では、今が一番よい時だと思いますか。前の方がよかったと思いますか」という質問をしています。「今」が56%で、「前の方がよかった」の32%を上回りました。

バブル経済期に入る直前の調査で、結果を報じる新聞紙面でも「物心とも生活に充実感」「この豊かさ どうやら本物」という見出しが躍り、時代の高揚感が現れています。

一方で、将来は楽観していませんでした。「これからの日本は、どうなっていくと思いますか」という問いかけに対し、今より「よくなる」は14%にとどまり、「悪くなる」が22%、「変わらない」が52%で最多でした。

「これからの日本」の質問は、2015年郵送世論調査でも行っています。「よくなる」が13%、「悪くなる」は34%、「あまり変わらない」は50%でした。バブル期を挟んだ30年を経て、回答傾向がほとんど変わっていません。

2015年調査は、ドイツでも同時に実施しました。ドイツ人に「これからのドイツ」について聞くと、「よくなる」34%、「悪くなる」23%、「あまり変わらない」42%という結果でした。

第2次世界大戦の敗戦後に経済復興を遂げた共通点を持つ両国ですが、日本人の方が将来を悲観的に見ていることがわかります。

 

「輝いていた」と21世紀の日本人がとらえている時代でも、当時を生きる人々は、昔を懐かしむ気持ちや、将来には楽観的になりきれない気持ちを抱えていました。こうした時代に対するまなざしは、日本人の気質の影響もあるのかもしれません。               

     ◇

【調査方法】
《高度経済成長期》1968年8月23、24日、無作為に選んだ全国の有権者3千人に対し、調査員が面接して行った。有効回答者数は2534人。回答率は85%
《戦後40年=バブル期直前》1985年6月19、20日、無作為に選んだ全国の有権者3千人に対し、調査員が面接して行った。有効回答者数は2310人、回答率は77%
《戦後70年》日本では、2015年3月11日から4月10日にかけて、無作為に選んだ全国の20歳以上の男女計3千人を対象に郵送方式で調査し、2016人から有効回答を得た。回答率は67%。ドイツでは調査会社に委託し、3月11日から24日にかけて18歳以上の男女を対象に電話で聞いた。有効回答は千人

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