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連載

#203 #withyou ~きみとともに~

マスクすら買えない子どもたち…一人で生計立てる10代の過酷な日常

食糧支援や現金給付をきっかけに、次の相談につなげたい

D×Pが行っている食料支援の際、実際に送る物資の一例=今井さんのツイッターより
D×Pが行っている食料支援の際、実際に送る物資の一例=今井さんのツイッターより 出典: 今井さんのツイッターアカウントより

目次

何らかの理由で親からの支援が受けられず、一人で生計を立てながら学校に通っている10代がいます。「マスクが買えない」――。彼らを支援している団体には、最近になってそんな声も届き始めたといいます。一人一人違う「当たり前」に思いを馳せることで、見える世界が変わってくるかもしれません。

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ギリギリの生活、最後に生活用品

「生活するための必要経費として家賃や食費があって、最後に生活用品。その中でもマスクって、案外高いし、優先順位として低くなってしまっているのかもしれない。これまでなかった固定費として月2000円くらいかかると、結構しんどいですよ」

そう語るのは、不登校や中退を経験した主に10代の支援をしているNPO法人D×P(ディーピー)の今井紀明さんです。
D×Pで支援している若者の中には、何らかの理由で親からの支援を受けられず、学校に通いながらバイトをして、生計を立てている若者もいます。

「彼らの多くは、朝、バイトをしてから学校に行き、夜はまたシフトに入っている。さらに土日のどちらかは1日中バイトをする、という生活をしています」
今井さんによると、彼らの収入は、家賃や学費、生活費を払うのに「ギリギリ生活ができるくらい」だといいます。

しかし、コロナ禍において、彼らの中にはバイト先が休業になるなどして、生活がさらに困窮するケースもあったといいます。
「想像に難くないと思うんですけど、学校に通いながら働いている子が職を失ったとき、元々貯蓄がない中なので、食費を切り詰めたりします。そんな生活をしていると、『これからどうしたらいいんだろう』と、精神的にも不安定になります」

D×Pの今井紀明さん=2018年撮影
D×Pの今井紀明さん=2018年撮影

コロナ禍での相談、去年の10倍

D×Pでは2018年から、「ユキサキチャット」という、就職や進学に関するライン相談を続けていますが、今年4~6月の約3ヶ月で登録者が約400人増え、相談件数は前年比で約10倍に増加しました。
就職・進学の相談が増えたのに加えて、それ以外の経済的な困窮相談なども増えているといいます。
「就職・進学の相談の中にも『仕事が急になくなった』という相談もあった」

そんな若者たちを支えようと、D×Pでは、NPOの活動を応援するサポーターからの寄付を元にした食糧支援と月1万円の現金給付を続けています。
食糧支援は、新型コロナウイルスの流行前から続けてきたものですが、現金の給付は6月から新たに始めました。現在までに食糧支援を受けたのは15人、現金はスタッフなどの聞き取りなどを経て8人が受け取りました。
「マスクが買えない」という若者たちには、直接手渡したり、今後は食糧支援の荷物に入れたりして支給する予定です。
支援を受けた若者たちからは「生活が安定してきた」や「食べ物をいただくのは初めてなので気が引けますが、助かりました」といった声が届いているそうです。
 

伴走していくきっかけ作り

ただ、いずれの支援も、渡したら終わりというものではありません。
今井さんは「基本的には相談してみようと思ってもらうためのインセンティブです。食糧支援や現金給付がきっかけとなって、次の相談につなげたいと考えている」と話します。
食糧支援や現金給付はあくまで、それでつながった関係を元に彼らの生活に長く伴走していくための「きっかけ」なのだといいます。
実際、それらの支援をする中で、コロナの影響を受けない、在宅でできる仕事を探す手伝いを始めたケースや、「いったん休んだ方がいい」という支援者の判断から、生活保護申請につなげたケースもありました。

今井さんは、8月以降、親が失業するなどして支援が必要になる子どもたちはさらに増えると考えています。
「国がすぐにできない支援は、民間で先にやっていく必要があると考えています。D×Pでは、福祉と教育、キャリアのを三つをうまく組み合わせて支援して行ければと思っています」

        ◇

食糧支援や現金給付は、寄付をもとに運営しています。
今井さんは「新型コロナウイルスの影響により、経済的な困窮が目に見えるかたちになってきています」とし、「本人たちが今後も安心して生活を送るには多角的なサポートが必要だと感じています」と語ります。

「これから数十年にわたり日本を支えるのは今困っているかもしれない若者たちです。彼らが安心して生活をしていくためにも、一緒に若者を応援してください」と今井さん。
詳しくはD×Pのサポーター募集ページ まで。

10代のための相談窓口あります

チャイルドライン
18歳以下の相談窓口。電話やチャットで相談できます。サイト内では、誰にも見られないように「つぶやく」こともできます。
Mex(ミークス)
10代のための相談窓口まとめサイト。なやみに関する記事や動画も見れます。
 

withnewsでは、生きづらさを抱える10代への企画「#withyou ~きみとともに~」を続けています。
 


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