連載
#42 ○○の世論
逃げ腰の自民支持層 衆院選、今なら…急浮上した「副代表の知事」
広まる「選挙どころではない」ムード
現在の衆院議員の任期は、残り1年3カ月ほどになりました。自民党内には「秋にも内閣を改造し、その勢いで解散を」という早期解散論と「今は解散よりもやるべきことがたくさんある」という慎重論が行き交っています。有権者は、いつごろの解散・総選挙を望んでいるのか。今投票するとしたら、どの政党に好感を抱いているのか、世論調査で聞いてみました。
(朝日新聞記者・君島浩)
現憲法下で計25回の総選挙のうち、任期満了での選挙は1回しかありません。残り24回は衆院の解散によるものです。
解散権を握る安倍晋三首相は「頭の片隅にもない」としながらも、「国民の信を問うべき時が来れば、解散を断行する」(6月18日、通常国会の閉会を受けた記者会見で)と述べています。
そこで、7月18、19日に実施した調査で、有権者に年内解散の是非を尋ねました。
解散は「来年がよい」という有権者は6割にのぼりました。特に、安倍首相を支える自民支持層で「来年がよい」が75%を占め、より年内解散に慎重でした。コロナの感染拡大後、安倍内閣の支持率は低迷が続いているので、支持者としては「今は勝負を避けた方がよい」という心理が働いているのかもしれません。
選択肢は異なりますが、今年1月の調査でも、同じように解散・総選挙の時期について聞いています。調査したのは、コロナが蔓延する前で、東京五輪の1年延期も決まる前でした。
1月の時点では「東京五輪の前」(10%)と「五輪後の年内」(48%)を合わせると、「年内解散がよい」と考える有権者が6割で、「来年がよい」と答えた人は4割でした。
この半年で、コロナを巡る情勢が大きく変わりました。年内解散を望む声はしぼみ、有権者にとっては「選挙どころではない」というムードが広がっている様子がうかがえます。
では今、総選挙となったら、議席を伸ばしそうな党はどこでしょうか。7月調査で、現時点での比例区投票先を聞いてみました。政党支持率と比較しながら見ていきます。
調査で、支持する政党を聞くと、「ない」という人や、明確な回答を避ける人もいます。朝日新聞では、こうした「支持する政党はない」「答えない・分からない」の回答を合わせて無党派層としています。7月調査で、無党派層は55%でした。実は、自民支持層の30%よりずっと多いのです。
ふだんは特定の支持政党がない無党派層も選挙では投票するので、「比例区の投票先」を聞くと、どの政党も、政党支持率より多めの数字が出てきます。
特に注目されるのは、維新です。政党支持率ではわずか2%でしたが、比例区投票先では10%が維新に投票すると答え、自民、立憲に次ぐ3番手につけました。年代別にみると、40代の14%、50代の16%が維新と答え、この世代では立憲を上回りました。
維新が無党派層の好感を得ていることは、無党派層に限った比例区投票先を見ると、もっとはっきりします。
無党派層では12%が維新と答え、自民の19%、立憲の14%に迫っています。
比例区投票先は、今年1月の調査でも聞いています。維新副代表の吉村洋文府知事が、コロナ対応で全国的に注目を集め続けているからでしょう。1月と比べると、自民、立憲とも伸び悩む中で、維新の勢いが際立ちます。
地域別にみると、維新は1月、大阪では29%と自民と並んでいましたが、東京では5%と、公明や共産を下回っていました。それが7月になると、大阪で35%と自民の25%を引き離しただけでなく、東京でも9%まで増え、10%の立憲に次ぐ3番手になりました。全国に浸透しつつあることがうかがえます。7月の東京都知事選で、推薦候補が61万票余り(得票率9.99%)を獲得したことにも、その勢いが現れています。
地域政党「大阪維新の会」として2010年に誕生した維新。結党10年を経て、いよいよ全国的な広がりを持つ政党に成長するのか、正念場と言えそうです。
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