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#70 #父親のモヤモヤ

「育休は当たり前に取るもの」父親が語る経験 「かくれ育休」事情

「子育てと家事を同時に回していく大変さを、妻と共有することができました」

写真はイメージです
写真はイメージです 出典: PIXTA

目次

#父親のモヤモヤ
※クリックすると特集ページ(朝日新聞デジタル)に移ります。

日本ではまだまだ少ない男性の育児休業。2018年度、女性の育休取得率82.2%に対し、男性は6.16%でした。そんな数少ない育休経験者たちにはどんなモヤモヤがあり、どのように対処してきたのでしょうか? 「#父親のモヤモヤ」オンラインオフ会で経験や考えを語りました。
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<#父親のモヤモヤ・オンラインオフ会を開きます>
8月29日(土)10時より、父親を対象にしたオンラインオフ会を開きます。
テーマは「家事・育児分担どうしてる?」です。
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「#父親のモヤモヤ・オンラインオフ会」

6月27日にオンラインで開かれたイベント「#父親のモヤモヤ・オンラインオフ会〜男性育休のリアル〜」には、育休取得者を中心に20〜50代の父親が10人ほど集まりました。会の前半では、2人の子どもの誕生時に10カ月と6カ月の育休を取得した父親(佐藤さん=仮名)の体験談を手がかりに、朝日新聞の記者が参加者の意見も聞きながら話をしました。

 

佐藤さん(仮名)
会社員時代、息子(3)の誕生時に10カ月、娘(2)の誕生時に6カ月の育休を取得した。復帰後は時短勤務も経験。昨年退社して法律系の個人事業を始める。共働きの妻と4人暮らし。38歳。

 

滝沢卓記者
経済部で「働き方」全般を取材。息子(2)が1歳の時、有休を使い1カ月の「かくれ育休」を取得。専業主婦の妻が24時間いかに大変かを実感した。家庭でおきる子どもの事故をどう防ぐかにも関心。33歳。

※「かくれ育休」=育児・介護休業法に基づく「育児休業」ではなく、有給休暇などを利用して産後の妻のサポートや育児にあたる休暇。国が調べている育休取得率には反映されない。

 

小泉浩樹記者(ファシリテーター)
過去に「とるだけ育休」を取材。現在は政治部で野党を担当している。同業者の妻と2歳の息子と3人暮らし。43歳。

育児・家事、何でもできるようになった

小泉記者:育休を取ってよかったことを教えてください。

佐藤さん:もともと育児・家事を片方が受け持つとは思っていなかったので、子どもが生まれたら取るものと思っていました。子どもの成長を近くで見ることができましたし、育児・家事でわからないことがなくなって、何でもできるようになりました。

滝沢記者:子育てと家事を同時に回していく大変さを妻と共有できるようになったことが一番です。

小泉記者:しんどかったことはありますか?

滝沢記者:自分の自由な時間が想像以上に取れなかったことです。仕事中だと自分のタイミングで少しコーヒーを飲んで休憩できますが、育休中はなかなかできませんでした。午前中に公園へ連れていって思いっきり遊んで、子どもがお昼寝してくれたら時間はありますが、一息つこうとするときに限って早く起きてしまう。日中はほぼ休む時間はなかったと思います。

小泉記者:なぜ「かくれ育休」にしたのでしょうか?

滝沢記者:本当は(育児休業給付が原則もらえる)1歳になるまでに育児休業を取ろうと思っていましたが、当時担当していた仕事が忙しく、他の方に引き継いでお任せすることが難しい状況でした。やろうと思えばできたのかもしれませんが……。7、8カ月くらいのとき、仕事が落ち着いたので取れるかなと思ったら異動が重なり、躊躇(ちゅうちょ)していたらズルズルと1歳を超えてしまいました。

 

写真はイメージです
写真はイメージです 出典: PIXTA

育休後の夫婦関係は?

小泉さん:参加者のみなさんにアンケートを採らせていただいた結果、関心事の一つが「夫婦関係」でした。育休中に気をつけたことがあれば教えてください。

佐藤さん:二つあります。一つは、お互い気分転換をすることです。なるべく1人の時間を作る。子どもはどちらかに任せて、1人で外に出たり好きなことをする時間を大事にしていました。

佐藤さん:もう一つは、男性の育休が珍しがられることについてのケアです。育休を取る男性は珍しいので、いろいろ言われるのですが、一方で配偶者が育休を取っている女性も少ないので、例えば親世代が違和感を持っていろいろ言うこともあります。そういう面があることを意識して、妻のケアをしていました。

滝沢記者:育休の前と後で夫婦関係が、よくも悪くも大きく変わった実感はありません。いま、早く帰れるときはなるべく早く帰るようにし、朝食の準備や寝かしつけなどは私が続けてやっています。仕事中心の生活に戻って育児の時間が減り、夫婦関係がよくなくなることもあると聞いていましたが、育休を取った後も育休中にやっていたことをできるだけ続けることで関係は変わらないのかなと思います。

女性が多い職場は育休が取りやすい?

写真はイメージです
写真はイメージです 出典: PIXTA

小泉さん:みなさん特に関心が高いのは、育休後の働き方でした。育休明けの状況はいかがでしたか?

滝沢記者:周囲の反応は、いい意味であまり変わらなかったのかなと思います。「働き方」の取材をしていると、育休明けにあからさまなハラスメントを受けるという話も聞きますが、私の場合はネガティブな言葉やそういう雰囲気を感じることはなかったです。むしろ、「せっかくの機会だからもっと取ったらよかったのに」と言われました。

佐藤さん:育休自体は特に何も言われず、復帰してもあたたかく迎えてもらえました。難しかったのは育休後の時短勤務です。私の場合10時から17時でした。表だって何か言われることはなくて配慮してくれて時間が読みやすい仕事を回してくれたのでやりやすかったのですが、なんていうんでしょうね…ちょっと申し訳ないなと感じてしまいました。

小泉記者:配慮をすればいいというわけではないんでしょうね。男性育休の経験値がどの会社も多くないので難しいのかもしれませんが、うまくできるといいと思っています。

小泉記者:理解のある職場とない職場の違いは、どのように感じますか?

佐藤さん:以前勤めていた会社は、女性の人数の方が多く、昔から子育てをしながら働く文化が浸透していました。それは大きいと思います。育休は取るし、取った後も働くことが普通でした。私が取得した際も、女性と男性という違いはあるにしても、受け入れやすかったのかなと思います。

小泉記者:部署によっても取りやすい取りにくいがあるように思います。女性が多い部署かどうかも影響して、女性が多い部署だと男性が育休を取ることにも理解があって、女性があまりいない部署だとなかなか理解されにくい気がしました。

小泉記者:日本はすばらしい制度があると言われていますが、制度を使うための雰囲気がまだまだ醸成されていないのが現状です。働き方を変えると同時に雰囲気作りをどうやっていくのか考えないといけないと思っています。

滝沢記者:私は専業主婦の家庭ですが、周囲に育休を取ると伝えると、「パートナーの方が仕事復帰されるんですね」という反応が大半でした。それを聞いて、男性の育休はパートナーが仕事をしている人が取得するような前提があるのではないかと感じました。子どもと過ごす時間がほしいのが本音ですが、「専業主婦なのになんで育休取ってるんだろう」と思われているのかなといろいろ考えてしまうと、育休を取る理由をほかにも並べ立ててしまいます。

滝沢記者:専業主婦の家庭でも、夫婦ともに子育てをしていくのが当たり前なのではないかと思っていますが、子育てのメインは女性のような昔ながらの価値観を周囲から感じてしまうことがありました。それを取り繕う感じで理由を並べている自分も、その価値観に縛られていたんじゃないかと自戒の思いを抱えています。

写真はイメージです
写真はイメージです 出典: PIXTA

参加した父親たちは

3人のトークを聞いて、参加した父親たちからも思いや経験が寄せられました。特に状況が分かれたのは、育休後の働き方です。

「育休後の周囲の評価、絶賛されました!」

「どんな環境であれ、求められる成果や結果を出せば評価は変わらないという上司だったので、評価は変わりませんでした」

「会社の評価はだだ下がりです」

まだまだ男性育休の経験者は少なく、ほかの父親の意見を聞きたくても機会がない人もいるかもしれません。ある父親は、育休中に「NPO法人ファザーリング・ジャパン」のイベントに参加して、仲間を見つけたそうです。

「育休の良い経験をどうにか広めたいと思っていました。今もイベントに参加して広めていくことで、共感する人が増えていくんじゃないかと思っています」

オフ会の後半では、参加者たちが「復帰後の働き方」や「夫婦関係」について話し合いました。

【後半はコチラ】男性育休のリアル「やりづらい」「成長見られるの今だけ」当事者の声【関連リンク】

<#父親のモヤモヤ・オンラインオフ会を開きます>
8月29日(土)10時より、父親を対象にしたオンラインオフ会を開きます。
テーマは「家事・育児分担どうしてる?」です。
共働き家庭の課題の一つは、家事と育児の分担。 みなさんの家事・育児分担や家庭のルール、アイデアを共有しませんか?
詳細はコチラをご覧ください。みなさんのご参加をお待ちしています。

父親のリアルな声、お寄せください

記事に関する感想をお寄せください。「帰省」に関するモヤモヤも募ります。「義実家に行くのは負担」「妻と両親との間で気を遣う」といった声も聞かれます。新型コロナの影響で帰省のあり方も変わりそうです。検討中の新たな試みもお聞かせください。

いずれも連絡先を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.com)で、朝日新聞文化くらし報道部「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。

 

共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。あなたのモヤモヤ、聞かせてください。
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