連載
#70 #父親のモヤモヤ
「育休は当たり前に取るもの」父親が語る経験 「かくれ育休」事情
「子育てと家事を同時に回していく大変さを、妻と共有することができました」
6月27日にオンラインで開かれたイベント「#父親のモヤモヤ・オンラインオフ会〜男性育休のリアル〜」には、育休取得者を中心に20〜50代の父親が10人ほど集まりました。会の前半では、2人の子どもの誕生時に10カ月と6カ月の育休を取得した父親(佐藤さん=仮名)の体験談を手がかりに、朝日新聞の記者が参加者の意見も聞きながら話をしました。
小泉さん:参加者のみなさんにアンケートを採らせていただいた結果、関心事の一つが「夫婦関係」でした。育休中に気をつけたことがあれば教えてください。
佐藤さん:二つあります。一つは、お互い気分転換をすることです。なるべく1人の時間を作る。子どもはどちらかに任せて、1人で外に出たり好きなことをする時間を大事にしていました。
佐藤さん:もう一つは、男性の育休が珍しがられることについてのケアです。育休を取る男性は珍しいので、いろいろ言われるのですが、一方で配偶者が育休を取っている女性も少ないので、例えば親世代が違和感を持っていろいろ言うこともあります。そういう面があることを意識して、妻のケアをしていました。
滝沢記者:育休の前と後で夫婦関係が、よくも悪くも大きく変わった実感はありません。いま、早く帰れるときはなるべく早く帰るようにし、朝食の準備や寝かしつけなどは私が続けてやっています。仕事中心の生活に戻って育児の時間が減り、夫婦関係がよくなくなることもあると聞いていましたが、育休を取った後も育休中にやっていたことをできるだけ続けることで関係は変わらないのかなと思います。
小泉さん:みなさん特に関心が高いのは、育休後の働き方でした。育休明けの状況はいかがでしたか?
滝沢記者:周囲の反応は、いい意味であまり変わらなかったのかなと思います。「働き方」の取材をしていると、育休明けにあからさまなハラスメントを受けるという話も聞きますが、私の場合はネガティブな言葉やそういう雰囲気を感じることはなかったです。むしろ、「せっかくの機会だからもっと取ったらよかったのに」と言われました。
佐藤さん:育休自体は特に何も言われず、復帰してもあたたかく迎えてもらえました。難しかったのは育休後の時短勤務です。私の場合10時から17時でした。表だって何か言われることはなくて配慮してくれて時間が読みやすい仕事を回してくれたのでやりやすかったのですが、なんていうんでしょうね…ちょっと申し訳ないなと感じてしまいました。
小泉記者:配慮をすればいいというわけではないんでしょうね。男性育休の経験値がどの会社も多くないので難しいのかもしれませんが、うまくできるといいと思っています。
小泉記者:理解のある職場とない職場の違いは、どのように感じますか?
佐藤さん:以前勤めていた会社は、女性の人数の方が多く、昔から子育てをしながら働く文化が浸透していました。それは大きいと思います。育休は取るし、取った後も働くことが普通でした。私が取得した際も、女性と男性という違いはあるにしても、受け入れやすかったのかなと思います。
小泉記者:部署によっても取りやすい取りにくいがあるように思います。女性が多い部署かどうかも影響して、女性が多い部署だと男性が育休を取ることにも理解があって、女性があまりいない部署だとなかなか理解されにくい気がしました。
小泉記者:日本はすばらしい制度があると言われていますが、制度を使うための雰囲気がまだまだ醸成されていないのが現状です。働き方を変えると同時に雰囲気作りをどうやっていくのか考えないといけないと思っています。
滝沢記者:私は専業主婦の家庭ですが、周囲に育休を取ると伝えると、「パートナーの方が仕事復帰されるんですね」という反応が大半でした。それを聞いて、男性の育休はパートナーが仕事をしている人が取得するような前提があるのではないかと感じました。子どもと過ごす時間がほしいのが本音ですが、「専業主婦なのになんで育休取ってるんだろう」と思われているのかなといろいろ考えてしまうと、育休を取る理由をほかにも並べ立ててしまいます。
滝沢記者:専業主婦の家庭でも、夫婦ともに子育てをしていくのが当たり前なのではないかと思っていますが、子育てのメインは女性のような昔ながらの価値観を周囲から感じてしまうことがありました。それを取り繕う感じで理由を並べている自分も、その価値観に縛られていたんじゃないかと自戒の思いを抱えています。
3人のトークを聞いて、参加した父親たちからも思いや経験が寄せられました。特に状況が分かれたのは、育休後の働き方です。
「育休後の周囲の評価、絶賛されました!」
「どんな環境であれ、求められる成果や結果を出せば評価は変わらないという上司だったので、評価は変わりませんでした」
「会社の評価はだだ下がりです」
まだまだ男性育休の経験者は少なく、ほかの父親の意見を聞きたくても機会がない人もいるかもしれません。ある父親は、育休中に「NPO法人ファザーリング・ジャパン」のイベントに参加して、仲間を見つけたそうです。
「育休の良い経験をどうにか広めたいと思っていました。今もイベントに参加して広めていくことで、共感する人が増えていくんじゃないかと思っています」
オフ会の後半では、参加者たちが「復帰後の働き方」や「夫婦関係」について話し合いました。
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