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#17 あなたの知らないトイレ

温水洗浄便座の普及率、北陸が高い理由 生まれは日本じゃなかった?

1位は滋賀、中には「トイレは家を表す」という人も

温水洗浄便座の古いモデル(左)と新しいモデルを見比べるアメリカの男性=2012年、東京
温水洗浄便座の古いモデル(左)と新しいモデルを見比べるアメリカの男性=2012年、東京 出典: ロイター

目次

在宅が続くことも多い今、自宅にあって良かったのが温水洗浄便座。個人的には外で使うのに少し抵抗があるので、家選びの際にかなり重視した存在です。この温水洗浄便座、国内では8割以上の世帯にあり、滋賀・富山・福井の順に普及しています。登場してから50年以上。なぜここまで広まったのか、歴史をたどりながら、地元の人やメーカーに聞きました。(朝日新聞デジタル編集部・影山遼)

【トイレシリーズ】
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⑤中年以外も…若い世代にはびこる「痔」 二足歩行の限り逃れられぬ病
⑥トイレのふた、流す前に閉める?コロナで気になる問題、専門家の答え
⑦温水洗浄便座の普及率、北陸が高い理由 生まれは日本じゃなかった?

言葉では使わない「温水洗浄便座」

知っている人にとっては何をいまさらと感じるかもしれませんが、温水洗浄便座の商品名はメーカーごとに違います。TOTOは「ウォシュレット」、LIXIL(INAX)は「シャワートイレ」、パナソニックは「ビューティ・トワレ」といった具合です。各メーカーの名前が一般的にも浸透しているため、「温水洗浄便座」と日常で呼ぶ人は少数派かと思います。

内閣府の消費動向調査によると、初めて調査をした1992年の時点では14.2%の普及率(2人以上の世帯)でしたが、右肩上がりに普及が進み、10年後の2002年には47.1%と半数近くに迫りました。最新(2020年3月時点)の調査では、80.2%とかなりの世帯に浸透した一方、普及率自体は落ち着いてきています。

「清潔な国」という日本の象徴の一つにもなっている温水洗浄便座ですが、その始まりはかなり昔にさかのぼります。実は、生まれたのは日本でなくアメリカ。病気の母親のために息子が作ったのが始まりだと言われています。その息子が会社を興し、医療用に販売を開始。目をつけたTOTOが、1964年にライセンス契約を結んで改良を重ね、1980年に家庭用に売り出しました。

【関連リンク】消費動向調査(e-Stat)
 
温水洗浄便座の仕組みの違い
温水洗浄便座の仕組みの違い 出典: 朝日新聞

「おしりだって洗ってほしい」

アメリカやスイスでの登場を経て、今から50年以上前の1967年、愛知の伊奈製陶(現・LIXIL)が国産1号機の発売を始めました。輸入品は1964年から販売を始めていたといいます。

LIXILによると、国産を発売するため、日本人の体形にあうものを求め、お尻の形のデータを集めるために粘土で社員の「尻型」をとりました。

その第1号「サニタリイナ61」を保存する衛生陶器の基幹工場、LIXIL榎戸工場(常滑市)に、この道一筋40年以上の「レジェンド」がいる。シャワートイレ&電装技術スーパーアドバイザーの井戸田育哉さん(60)だ。

当初はタンクの裏や下に大がかりな電気装置が埋め込まれ、かかとでペダルを踏んでおしりを洗う仕組みだった。大卒の初任給が約3万円の時代に価格は28万円。家庭では富裕層しか手が届かなかった。しっかり洗うために水勢は「天井に届くほど」で、調整も難しかった。
2018年4月14日朝日新聞朝刊「シャワートイレ 究極の個室、手探り40年」
1967年に発売された温水洗浄便座の国産1号機「サニタリイナ61」=2017年、愛知県常滑市
1967年に発売された温水洗浄便座の国産1号機「サニタリイナ61」=2017年、愛知県常滑市 出典: 朝日新聞

しかし、一般家庭での普及はなかなか進みませんでした。

LIXILのライバルであるTOTOは、前述した通り、アメリカで医療用に製造していた「ウォッシュエアシート」を、「痔を患っている人には喜ばれそうだ」(TOTOカタログ「時代と常識を変えたウォシュレットの軌跡」)との理由で1964年、病院を中心に輸入品の販売を始めましたが、こちらも月に十数台売れれば良い方と、今のような普及率には全く至りませんでした。

「ウォシュレット」の名前では、1980年に一般向けの販売を始めました。今年でちょうど40周年。2012年には「日本人の生活様式を一変させた」と評され、日本機械学会の「機械遺産」に認定されています。

世の中に普及するきっかけとなったのは、1982年にTOTOが登場させた「おしりだって洗ってほしい」のCMでした。TOTOの担当者は「一般家庭への普及は口コミによるものが大きかったです。華やかなCMの裏で地道な営業活動を行っていました」。一方、すでに販売を進めていたLIXILの担当者は「この時期に他社の参入も相次いだことで、普及が進みました」と話します。

1980年に発売された初代ウォシュレット(左)=2015年、北九州市小倉北区
1980年に発売された初代ウォシュレット(左)=2015年、北九州市小倉北区 出典: 朝日新聞

シンプルなトイレは微妙?

2014年の総務省の「全国消費実態調査」を参照すると、温水洗浄便座の都道府県ごとの普及率(総世帯)は、1位が滋賀(77.8%)、2位が富山(75.8%)、3位が福井(74.9%)と、北陸の2県とそのお隣で上位を占めています。一方、46位は高知(48.2%)、47位は沖縄(24.2%)と比較的温暖な県が下位には登場します。便座を暖める機能もあることが、寒さ対策がそこまで必要のない県での普及率に影響しているのかもしれません。

普及率がなぜ、滋賀と北陸(石川県は10位・70.0%)で高いのでしょうか。TOTOとLIXILに聞いてみましたが、ともに「分からない」という回答。福井に赴任していたことのある筆者の脳裏には、賃貸ではなく自分の家を買う人が多いことが浮かびます。国勢調査の持ち家率を見ると、富山が1位で、福井と滋賀も上位へ食い込んでいます。

【関連リンク】全国消費実態調査(e-Stat)
 

富山市にも住んだことのあるという福井市の男性(36)は「もちろん自宅にあります。二世帯で住んでいるので、それぞれに一つずつという感じですかね。結構、親戚や近所の人が家に来る機会が多くて、その時にシンプルなトイレだと微妙だなと思われないかなと、10年くらい前にリフォームでつけました。トイレが家を表す、という側面もあるので気を使うのは普通ですよね」と話します。

男性の周辺では、トイレもインテリアの一つとして捉えている人が多いようでした。

メーカーも首をかしげる地域ごとの普及率の差ですが、「トイレ学」を研究する大手前大学の教授(当時)は、2006年6月12日の朝日新聞朝刊(「洗浄便座1位・富山 トイレは調度品?」)の記事の中で「大都市近郊は流行に敏感。『大阪や名古屋より先に』との思いが強いのでは」と分析しています。

2004年時点の普及率も今と大きくは変わらず、1位富山(71.2%)、2位石川(68.8%)、3位三重(67.6%)、4位滋賀(67.2%)、5位新潟(66.7%)、6位奈良(66.3%)で、北陸地方に加え、三重・滋賀・奈良と大都市近くの県が目立っていました。

家電量販店に並ぶ温水洗浄便座(画像を一部加工しています)=2007年、富山市
家電量販店に並ぶ温水洗浄便座(画像を一部加工しています)=2007年、富山市 出典: 朝日新聞

アメリカでの売り上げ倍増

温水洗浄便座に関しては、トイレットペーパーが不足しているアメリカでLIXILがキャンペーンを展開。2020年3~5月の売り上げが、前年同期と比べて60%増えたといいます。一方、TOTOも2019年4月~2020年3月の売り上げが、前年同期と比べてアメリカで25%増、中国で4%増と数字を伸ばしています。

国内での普及率は横ばいになってきた温水洗浄便座。在宅が広がった今、さらに力を入れた世界展開が始まるのかもしれません。

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