連載
#10 漫画「あなたそれでも教師ですか」
一点透視図法と出会って決めたはずなのに…美術科生徒の内面、漫画に
最初は楽しかったのに、好きな気持ちだけで続けることができたのに

副担・新米くんの評価は…


美術科クラスの男子くん、部活は陸上部に所属しています。部活動の最中、クラスの違う仲間から「どんなかんじよ?新しい副担が来た感想は」と聞かれます。
男子くんの暮らすの副担任は、本当は画家になりたいけど、生活のために非常勤講師となった「新米くん」です。
男子くんは、「いつも通りゴリ北がいないと締まらないって感じ」と、どこか頼りない副担任を評価はしていません。
友人から「なんでなん?単純に」



「でもさ、田村がまさか美術科に行くなんて思わなかったよ」
「中学の頃とか全然マジメに授業受けてなかったじゃん。なんでなん?単純に」
前回、イラストレーターや声優を目指す、美術科クラスの仲間たちの夢を聞き「将来の夢」について考えた男子くんにとって、この一言は胸に刺さるものがありそうです。
陸上のトラックを走りながら、男子くんは自問します。
「なんでって、なんでだっけ」
「一点透視図法」懐かしい!


時は遡り、男子くんの中学時代の美術の授業。
一点透視図法を使って立体的な絵を描く時間です。
美術の先生が言う「ワークシートをもらったら、絵の具セットから定規を出してね」の言葉に、「定規使ってもいいんだ…なんか数学みたい」と、驚く新米くんです。
「すげー…」立体描き感動


配られた方眼用紙に、定規を使って線を引いて立体を描いた中学時代の男子くん。
「すげー…簡単に立体になった…」と感動している様子です。
そこで新たに先生から与えられた課題は、「自分が住みたい『理想の部屋』を一点透視図法で描いてみましょう」。
好きだったはずなのに…の感覚
美術科を選んだ理由を「なんでなん?」と友人に問われた男子くんは、その後の陸上部の練習中も「なんでだっけ」と引きずります。
きっと質問を発した友人は軽い気持ちで質問しただけなのに、どうして男子くんはそんなに深く考え込んでしまうのでしょうか。
作者のしろやぎさんに解説してもらいました。
「なんで美術科を選んだの?」という陸上部の友だちに言われた質問に深く考え込んでしまっているのは、本人が一番それを感じているからです。
好きだったはずのことを嫌いになりかけていることが、怖いからです。
最初は楽しかったのに、好きな気持ちだけで続けることができたのに、いつの間にか楽しくなくなったという経験は自分にもあります。
これ以上進むと後戻りできなくなるような、一歩踏み込めなくなってくる感覚。
この先でもし挫折してしまったとき、自分の実力の底が知れてしまうのが怖かったりします。
最初は前に進むことだけしか考えてなかったのに、だんだん周りの煩わしいものまで見えてきて、前を向いてもなんかもう果てしないし、じゃあもういいやって思ったりもします。
「なんでここに来たんだっけ?」「そもそもなんで好きになったんだっけ?」――。
とりあえず中学時代を振り返ってきっかけを探してみています。
【次回予告】
本人はこれまであまり意識していなかったようですが、中学時代のこの美術の授業でのとあるやりとりこそが、男子くんが美術科に進学した原点になっているようです。
◇
withnewsでは、しろやぎさんの「あなたそれでも教師ですか」を毎週日曜日に配信予定です。新米くんを軸とした教育現場を描いていきます。
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