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連載

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#9 #アルビノ女子日記

腕切り落とす「アルビノ狩り」共感できずとも重ねた「排除への不安」

国境を越えた交流から、学べたことがある

筆者の神原由佳さん(左)は2年前、「東京アルビニズム会議」に参加。南アフリカの当事者リーダー(右)と記念撮影した
筆者の神原由佳さん(左)は2年前、「東京アルビニズム会議」に参加。南アフリカの当事者リーダー(右)と記念撮影した 出典: 神原さん提供

目次

黒人なのに白い肌で生まれたため、身体を切断され、殺される。標的にされているのは、アフリカで生まれた遺伝子疾患のアルビノの人たち。この「アルビノ狩り」と呼ばれる事件について、日本で暮らすアルビノの神原由佳さん(26)は「リアルに感じられない」と言います。一方、「ふつう」ではない見た目ゆえに抱いてきた生きづらさと、海外の当事者が抱える痛みは、どこか重なる部分も。13日はアルビノへの暴力、差別、偏見をなくすために、国連が定めた「国際アルビニズム啓発デー」。神原さんが2年前に、事件の被害者らとの交流から学んだことをつづります。

「日本に生まれてよかったね」と言われる違和感

「日本に生まれてよかったね」「アフリカに生まれていたら、どうなっていたかわからないよ」

日本のアルビノの現状を伝える記事に対し、ネット上では、そんな反応がよくある。その発言の背景にあるのは「アルビノ狩り」だ。

アフリカでは、アルビノの人々の身体が切断され、殺害されるといった人権侵害が起きているそうだ。切り取られた身体は、闇マーケットにおいて高値で取引されるらしい。アルビノの身体を呪術に用いることで、幸福をもたらすとの迷信が信じられているからだ。

日本にいれば、アルビノを理由に命を狙われる危険性は、もちろんない。マンガやアニメで、髪色が真っ白なキャラクターが不思議な力を持った人物として描かれるくらいで、アルビノへのおかしな迷信もない。

私の場合、白い肌や髪を除けば、見た目や考え方は日本人そのもの。そして、日本の人々、気候、食べ物、文化、利便性が大好きだ。だから「日本に生まれてよかったですか?」と問われれば、私は迷わず「イエス」と言うだろう。

ただ、他者から「日本に生まれてよかったね」と断定されるのは、複雑だ。

襲われる危険はないけれど、私はアルビノであることに生きづらさを感じてきた。学校でいじめを受けたり、就職活動に苦労したりする当事者もいる。「よかったね」との言葉によって、そうした問題までも軽くあしらわれているように感じてしまう。

東京アルビニズム会議にあわせ、写真家パトリシア・ウィロックさんがアフリカのアルビノの人たちを撮影した写真展も開かれた=2018年11月
東京アルビニズム会議にあわせ、写真家パトリシア・ウィロックさんがアフリカのアルビノの人たちを撮影した写真展も開かれた=2018年11月

悲惨なエピソードに絶句

2018年、東京で「東京アルビニズム会議」(日本財団主催)が開かれ、タンザニア、マラウィ、モザンビーク、南アフリカ、ケニア、カナダ、そして日本などのアルビノ当事者や支援者らが「アルビノ狩り」について議論した。私も聴衆として、会場に足を運んだ。

特に印象に残ったのは、タンザニアのマリアム・スタフォードさんの話だった。2008年10月の深夜、彼女は男4人に突然襲われ、両腕を切り落とされてしまった。一緒にいた2歳の息子は事件の一部始終を目撃し、マリアムさんはおなかにいた6カ月の胎児を失ったという。事件の残酷さにゾッとするほどの衝撃を受けた。

彼女が語った幼少期の体験にも胸が痛んだ。子ども時代、マリアムさんは独りぼっちで、同年代の子どもたちは彼女を見ると、逃げたという。私は友だちに恵まれたこともあって、いじめられた体験はない。しかし、「ふつう」の見た目とは違う自分は、いつか排除されるのではないか、という不安が常にあった。だから、マリアムさんの孤独がいかほどだったか、私なりに想像できた。

アルビノ狩りの被害を受けたマリアム・スタフォードさん(右)と支援する女性ら=2018年11月
アルビノ狩りの被害を受けたマリアム・スタフォードさん(右)と支援する女性ら=2018年11月

リアルに感じられずとも、スルーしたくない

でも、「アルビノ狩り」の事件そのものについては、非日常的過ぎて、リアルに感じることができなかった。被害を体験したマリアムさんを前に、共感できない私は居心地の悪さを感じた。そのとき「日本に生まれてよかった」と安心する自分がいたことも否定できないし、悲惨な現実から目を背けたかったのかもしれない。

アフリカに行ったことさえない私には「アルビノ狩り」を自分事ととらえることも、共感することも無理かもしれない。だからと言って、スルーしていいとは思わない。

私にできることは何か。1人でも多くの人に事件について知ってもらうこと。だから、今、このエッセーを書いている。「アルビノ狩り」への関心が世界中で高まることが、それを防ぐための力になると信じている。

タンザニアのアルビノの子(前列)。紫外線に弱いため帽子をかぶっていた=2015年11月
タンザニアのアルビノの子(前列)。紫外線に弱いため帽子をかぶっていた=2015年11月
出典: 日本財団提供

「海外移住したら?」 謎のアドバイス

本題とはずれるが、海外と関連がある話題についてつづりたい。

「外国人と結婚したら生きやすくなるよ」「海外移住したら」

以前、面と向かってそう言われ、ドキリとした。私には理解できない、謎のアドバイスだ。もちろん、相手は軽い気持ちでいったのだろうし、悪気がなかったこともわかる。

金髪で肌が白い外国人がパートナーだったら私の色は「ふつう」になるし、日本よりも多様な人種の人たちがいる外国のほうが私のようなマイノリティに寛容だ、と思ったのかもしれない。

それでも、私はモヤっとした。

別に外国人をパートナーにするのが嫌なわけではない。ただ、「生きづらさを感じるなら、日本を捨てれば?」と突き放されているように感じた。私は日本が好きでこれからも生活したいし、私の知る限りでは日本人男性もよい理解者になってくれる。

自分の生きづらさを和らげるためにパートナーを選ぶのでは、相手にも失礼だ。誰をパートナーにするかは私と相手の問題であって、他人にとやかく言われたくない。

東京アルビニズム会議で体験を語ったマリアム・スタフォードさん(左から2人目)ら=2018年11月
東京アルビニズム会議で体験を語ったマリアム・スタフォードさん(左から2人目)ら=2018年11月

心の交流に背中を押された

さて、話題をアルビノ狩りに戻そう。

「東京アルビニズム会議」の質疑応答の時間に、私は手を挙げた。

当時、私はアルビノであることを受け入れきれていなかった。思い込みかもしれないが、この「色」のせいで周りから浮いている感じがあった。だから当事者リーダー、専門家、歌手などとして社会的に「成功」しているアルビノの登壇者たちがまぶしく映った。

「どのようにすれば自分に自信を持てますか」。そう、恐る恐る尋ねた。

多くの聴衆の視線と、メディアのカメラが私に向けられた。緊張し過ぎて、当時の記憶がないほどだ。でも彼ら・彼女らは、私のつたない質問を歓迎してくれ、一生懸命に答えようとしてくれた。「自分がアルビノだからと限界を決めないで」「自信を持つためには自分に投資することが大事だ」と教えてくれた。

質問を終え、心の交流ができたとの手応えがあった。遠くの国に住む、遠い存在だった彼らが一気に身近に感じられた。

会議から2年。私は今、アルビノであることに劣等感はない。時間をかけて自分と向き合い、また多くの人たちの寛容さに触れ、「このままでいいんだ」と思えるようになった。信頼する人に安心して身を委ねながら、きょうの自分のベストを尽くしていく。そうすれば、自信も持てるはずだ。

いつか、海外の当事者たちに私の成長した姿を見てほしい。また会える日が来ますように。

【関連リンク】国際アルビニズム啓発デーへのJANからのメッセージ(2020):日本アルビニズムネットワーク(JAN)ウェブサイト

【外見に症状がある人たちの物語を書籍化!】
アルビノや顔の変形、アザ、マヒ……。外見に症状がある人たちの人生を追いかけた「この顔と生きるということ」。神原由佳さんの歩みについても取り上げられています。当事者がジロジロ見られ、学校や恋愛、就職で苦労する「見た目問題」を描き、向き合い方を考える内容です。

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