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#14 withコロナの時代

コロナと図書館、アマビエ騒動が教えてくれた価値 閉館率は一時9割

「図書館には『場』への『集客力』ではない部分が求められました」

緊急事態宣言が全国に発令された後、一時図書館の休館率は92%にまでなりました=写真はイメージです
緊急事態宣言が全国に発令された後、一時図書館の休館率は92%にまでなりました=写真はイメージです 出典: pixta

目次

withコロナの時代
新型コロナウイルスの影響を受け、全国の図書館は一時92%が閉館した――。2011年の東日本大震災後、被災地などの図書館・美術館・公民館の情報をまとめているプロジェクト「saveMLAK」(岡本真代表)は、新型コロナウイルスの影響を受けた図書館の閉館率などを調査しています。岡本さんは、「数字を記録することで今後の政策などに反映してもらいたい」と話し、コロナ禍で利用者が図書館に来館できない現状と向き合うことが、「知的のインフラ」としての図書館の役割を再構築するチャンスだと提言します。

緊急事態宣言発令後、閉館率は92%に

「saveMLAK」は、東日本大震災後に発足したプロジェクトで、2011年3月以降の大規模災害時(2016年の熊本地震など)には、災害が起きた地域での被災施設や、支援情報などを集約しホームページ上で発信し続けてきました。

今回実施したコロナ禍での図書館の動向調査は、現役の図書館司書や研究者ら、プロジェクトの有志が、4月以降5月21日までに6回実施。図書館法に基づく図書館と、公民館図書館について、ホームページに公開された情報を目視で確認・集約しています。

これまでに実施した調査のうち、4月15~16日に行った調査では、全国の図書館の休館率は57%でしたが、全国に緊急事態宣言が発令された影響を受けた同月23日(22~23日調査)の休館率は88%まで上昇。5月6日(5~6日調査)の92%を頂点に、宣言をが39県で解除された5月14日(13~14日に調査)には68%まで減少しています。21日に発表された最新データでは休館率47%となっています。
saveMLAKがまとめた、5月21日時点での全国の休館率の状況
saveMLAKがまとめた、5月21日時点での全国の休館率の状況 出典:saveMLAK「COVID-19の影響による図書館の動向調査(2020/05/21)について」
【saveMLAKがまとめた、4月以降の全国の図書館動向調査の結果はプロジェクトのHP(こちら)で誰でも見ることができます。】

図書館職員「知識でのサポートしたい」

図書館の閉館率が一時92%にまでなったことについて、代表の岡本さんは、「子育て世代や若い層、シニアにとって自由に出入りできる図書館は、居場所という側面もあり、『行けない』ということはネックになっている」と、利用者への影響を心配しています。また、図書館職員の中にも「こういうときこそ図書館を開けて知識面でサポートをして人の役に立ちたい」と思っている人も少なくないといいます。

「今回の調査では大学図書館は調査対象外ですが、大学図書館も閉館しているところが少なくありません。学生や研究者のためにある大学図書館が閉まっていることで、『研究を止めてしまっている』『社会を改善する阻害要因になっている』と、存在の矛盾に苦しんでいる大学図書館の職員もいます」

しかし、図書館では利用者と職員が貸出カウンターで向き合う機会もあり、職員も利用者も感染リスクは低くありません。「現場からは『(感染が拡大した状況下で)再開したら、市民を危機にさらすことになってしまうのではないか』という心配の声も出ていました」
岡本さんは、「利用者の安心安全を担保しつつも、一定のリスクを折り込んだ上で利用を再開することが待たれていると思います」。

来館せずに「知る」ことができるものも

一方、図書館のサービスのうち、電子書籍の貸出サービスや、図書館ホームページで公開されている蔵書検索システムなど、直接来館することなく利用できるものもあります。
「図書館は来館できないからといって、サービスすべてが止まっているわけではありません。それに、『物事を知る』という目的で図書館をとらえると、本からだけでなくインターネットにアクセスすることでも得られる場合があります」と話す岡本さん。

コロナ禍で特徴的だった動きとしてあげたのが、SNSを中心に話題を呼んだアマビエです。
話題になった妖怪・アマビエの絵は、「新聞文庫・絵」に掲載されたものを京都大学附属図書館がデジタルアーカイブで二次利用自由としていました。そのため、メディアも一般の人も、その絵を多く利用してきました。

「学校での郷土学習にも史料が使われることがありますが、その史料が電子化されていたら、いまオンライン学習はどうなっていただろうかと思います。そういう面でも、これまでの図書館には何が足りていないのかを検証できる機会だと思っています」

「肥後国海中の怪」として残されるアマビエ=『新聞文庫・絵』(84ページ)(京都大学附属図書館所蔵)
「肥後国海中の怪」として残されるアマビエ=『新聞文庫・絵』(84ページ)(京都大学附属図書館所蔵) 出典:京都大学貴重資料デジタルアーカイブ

「知的インフラ」作り替えるチャンス

一方で、多くの人にとって、自由に出入りできる図書館は「居場所」としての側面もあります。
「ここ数年、佐賀県の武雄市図書館などが注目を集めるなど、『場』としての図書館ブームがありました。ただ、新型コロナの影響を受けて来館できない状況下では、図書館には『場』への『集客力』ではない部分が求められました」と岡本さんは指摘します。

「図書館が利用者から再開を熱望してもらうのはうれしい反面、『知的インフラ』としての図書館を、より良い形に作り替えるチャンスです」

                   ◇

saveMLAKでは、今回の調査などを通じて「安全な来館利用の再開」を促すと同時に「非来館利用の促進」を提言しています。また「来館・非来館という二分法ではなく、実空間と情報空間が融合した理想を追求しよう」と議論を喚起しています。

「行きたいのに行けない人」への情報提供を

【東京都23区内の区立図書館司書・三浦なつみさんのコメント】

図書館の動向調査にはすべて参加しています。他の地域の工夫などから学ぶことも多くあると感じています。例えば山梨県の富士吉田市では、ケーブルテレビと連携し、市立図書館が関わって番組を配信していました(詳細はこちら)。 

図書館が閉館したことで、日の目をみたサービスもあります。
オンラインでも蔵書検索ができることをこの機会に知った利用者さんもいます。

いま気がかりなのは、オンライン環境が自宅にない人たちです。
外出自粛前、インターネットが使えるのは図書館だけという方もいました。その方々は、図書館が閉まっていると集められる情報も限られます。

私は以前から、図書館の評価軸が、来館者数や貸出点数であることに疑問を持っていました。利用者が「来る」ことを前提でサービスを考えすぎるあまり、「来れない人」を見ていないのではと感じています。「行きたいのに行けない人」への情報提供をどうすればいいのか、今回改めて考えさせられました。
また、個人的には、図書館がオンラインでできる新しい取り組みが増えてきてはいると思いますが、読み聞かせ動画などのいわゆる「お楽しみのコンテンツ」ではなくて、生活に必要な情報を提供するという面で、もっとできることが増えるといいと思っています。

 

新型コロナウイルスによって、私たちの生活や経済は大きく変わろうとしています。未曽有の事態は、コロナウイルスが消えた後も、変化を受け入れ続けなければいけないことを刻み込みました。守るべきもの、変えるべきものは何か。かつてない状況から「withコロナの時代」に求められる価値について考えます。

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