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連載

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#20 withコロナの時代

試行錯誤のアイドルフェス @JAMの現場で感じた運営の情熱

@JAMのステージでパフォーマンスを披露するHKT48の上島楓さん、森保まどかさん、豊永阿紀さん(左から)。ソーシャルディスタンスに配慮した振り付けに変更して臨んだという
@JAMのステージでパフォーマンスを披露するHKT48の上島楓さん、森保まどかさん、豊永阿紀さん(左から)。ソーシャルディスタンスに配慮した振り付けに変更して臨んだという

目次

withコロナの時代

新型コロナウイルスの影響で、この夏の大規模アイドルフェスは相次いでオンライン開催となりました。晩夏の風物詩として知られる「@JAM」もその一つですが、配信限定でも100組近い出演者やスタッフへの感染防止を迫られました。神経を張り巡らせたといいます。現場の対策に迫りました。

運上弘菜さんがセンターを務めるHKT48の最新シングル「3-2」(さんひくに)を披露した
運上弘菜さんがセンターを務めるHKT48の最新シングル「3-2」(さんひくに)を披露した

久々のステージに「懐かしい感覚……」

8月30日、東京都江東区のライブハウス「Zepp Tokyo」。ネット配信が始まる前、ステージに立ったHKT48のメンバーから、こんな声が漏れました。「久しぶりだね」「懐かしい感覚……」

HKT48にとってこの夏初めて、華やかな衣装に身を包み、イベントでのステージでした。人数を絞っての配信ライブは行われていますが、新型コロナの感染拡大で例年出演していた夏のイベントは軒並み中止か延期、拠点の福岡市での劇場公演も3月下旬の配信限定公演以降、行われていません。

会場からファンの声援はありませんでしたが、メンバーの一人村重杏奈さんが「オタクになるしかねえ」と、ステージ上でファンの代わりにコールして盛り上げる一幕も。ステージに立てる喜びが、一人一人の汗だくのパフォーマンスから伝わってきました。

HKT48らしい「わちゃわちゃ」した雰囲気が伝わる一コマも
HKT48らしい「わちゃわちゃ」した雰囲気が伝わる一コマも

ただ、感染防止策として、メンバー同士の接触を極力避けるよう振り付けの一部を変えるなどして臨んだそうです。

この会場でのトリを務めたアイドルグループ「=LOVE」(イコールラブ)も、メンバーのあいさつで、「ソーシャルディスタンスを保ってのパフォーマンスとさせていただきます」と話しました。

ソーシャルディスタンスに配慮したパフォーマンスと説明した=LOVEのステージ
ソーシャルディスタンスに配慮したパフォーマンスと説明した=LOVEのステージ

昨年と様変わりした会場

新型コロナの影響で会場も運営方法も大きく変わりました。

昨年の会場だった横浜アリーナ(横浜市)は、ファンがアリーナや客席を埋め、出演グループによってはアリーナのファン同士が肩を組んで左右に移動しながら熱い声援を送る光景も見られました。

今年は様変わり。客席側には数台のカメラと音響、配信機材、スタッフがいるのみ。会場も東京都と神奈川県の計6カ所のライブハウスなどに分散されました。

オンライン配信の会場の一つとなったZepp Tokyo。観客がいない客席には数台のカメラが置かれ、両側の扉は常に開放されていた
オンライン配信の会場の一つとなったZepp Tokyo。観客がいない客席には数台のカメラが置かれ、両側の扉は常に開放されていた

主催者によると、会場に入る際はスタッフも出演者も検温、消毒、マスク着用。会場内もスタッフや出演者の動線は一方通行で、出演者ら同士の接触を避ける工夫がされました。

出演グループへのマネジャーやスタッフなど関係者の帯同は最小限にすることを事前に求めていました。楽屋の1部屋あたりの定員も制限したそうです。

2階のカメラ席も間隔を取って座るように指示されていた
2階のカメラ席も間隔を取って座るように指示されていた

「たった一つの失策が……」

主催者が配った感染予防対策ガイドラインには「たった一つのイベントの失策が社会からの信頼感を損ない、その後のイベント開催やライブ・エンターテインメント産業に芳しくない影響を及ぼすことを肝に銘じ」と、強い危機感がうたわれています。

会場の扉はすべて開放され、換気や空調の風を会場では常に感じました。

出演者はステージの下手(向かって左)から登場し、上手(右)から降りていきます。配信開始前、いったんステージにあがった出演者に毎回、主催者側のスタッフが感染防止対策を説明し、協力を求めていました。マイクは必ず消毒を行ってから次の出演者に渡す。同じグループでのメンバー同士のマイクの受け渡しもしないルールでした。

ライブの熱量、配信でどう伝えるか

感染防止対策を取りながらの運営は緊張を伴い、神経をつかったそうです。

大規模イベントの中止が相次ぐなか、なぜオンラインでも開催に踏み切ったのでしょうか。

主催者側は、「100組近いグループから出演のスケジュールをすでに確保していたこと、休業を余儀なくされていたライブハウスを活用して開催したかったこと、そして、アイドルフェスの火を消したくないという思いからだった」と説明しています。

配信ならではの難しさにも直面したといいます。「普段から実際のライブと一緒に配信していたのであまり難しく考えていなかったのですが、オンラインだけとなると話は別で、配信を複数の媒体で行う大変さや、ライブの熱量や生の感覚をいかに伝えるかに苦労した」そうです。

それでも、「フェス自体は目標の視聴数をクリアでき、夏フェスにおいての我々の役割はある程度達成できたと思っています」と振り返っています。

ソーシャルディスタンスに配慮した振り付けに変更して臨んだHKT48。渡部愛加里さん、田中美久さん、松岡はなさん(左から)
ソーシャルディスタンスに配慮した振り付けに変更して臨んだHKT48。渡部愛加里さん、田中美久さん、松岡はなさん(左から)

模索続くイベント

政府はイベントの制限緩和を進めていますが、声援や歓声が想定されるコンサートやイベントは、収容人数5千人以下、もしくは50%以内という要件が維持されたままです。それでも観客を入れたイベントやライブも少しずつ再開され、欅坂46はラストステージを10月、国立代々木競技場第一体育館で予定しています。

一方、例年8月はじめに開かれる国内最大級のアイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL」(TIF)は10月2~4日に時期をずらしてオンライン開催。乃木坂46の白石麻衣さんの卒業コンサートも10月28日に配信での開催が発表されており、オンライン配信も大きな役割を担っています。

現場にはメンバーとファンがともに熱量を感じ、盛り上がることができる魅力がある。一方でオンラインには広く訴求できたり、会場に足を運べないファンに届けることが出来たり、新たな可能性を指摘する声もあります。コロナとともに生きる。感染対策を講じながらの模索が続きます。

 

新型コロナウイルスによって、私たちの生活や経済は大きく変わろうとしています。未曽有の事態は、コロナウイルスが消えた後も、変化を受け入れ続けなければいけないことを刻み込みました。守るべきもの、変えるべきものは何か。かつてない状況から「withコロナの時代」に求められる価値について考えます。
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