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連載

#59 #父親のモヤモヤ

子育てしながら在宅勤務「使える時間」のやりくり 負担偏重のワナ

新型コロナウイルスの感染拡大で保育園が休園になり、共働きの妻と子どもの世話をしながら在宅勤務をするコピーライターの魚返洋平さん=本人提供
新型コロナウイルスの感染拡大で保育園が休園になり、共働きの妻と子どもの世話をしながら在宅勤務をするコピーライターの魚返洋平さん=本人提供

目次

#父親のモヤモヤ
※クリックすると特集ページ(朝日新聞デジタル)に移ります。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、家庭と仕事のバランスを模索する日々が続いています。乗り越えた課題もあれば、いまだに解決できない悩みや漠然とした不安を抱える人もいるのではないでしょうか。長女(2)の誕生を機に約6ヶ月の育休を取り、「男コピーライター、育休を取る。」の著書もある魚返洋平(うがえり・ようへい)さん(39)もその一人です。共働きの妻と協力しながら対処していることやモヤモヤを聞きました。
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子どもが寝静まった後に

「2歳児が家にいて在宅勤務というのは全然成立しないと、毎日思っていますね。保育園に預けられないこの生活は持続不可能です」

大手広告会社・電通でコピーライターとして働く魚返さんは、そう話します。

4月上旬から保育園がほぼ休園状態になり、世話をしつつ仕事をする日々が始まりました。妻も在宅勤務ですが週1回は出社することがあり、その日は娘の世話でパソコンに向かって作業することはできないといいます。

「うちの会社の場合7時間勤務が基本ですが、会議のときだけパソコンに向かい、ほかはすべて子どもの世話に費やしていると、実質4、5時間しか働いていないことになります。有給休暇を取らないと時間の帳尻が合わなくなるときは有休を取ります。そうでなければ子どもが寝静まった後にコピーや企画を考えますね。会社で定められた『みなし7時間』のカウントとの整合性をとっていく。なんとか対処しています」

職種柄、これまでもカフェなどでリモートワークをすることがありました。周囲の雑音が聞こえる環境の方がはかどったり、場所を変えてリフレッシュできたりしましたが、「在宅」に限られる現状には窮屈さを感じているそうです。

日中は打ち合わせやメールのやりとりが中心。コピーやアイデアを考える個人作業は夜に集中します。

「家でもできる便利さゆえに、どんどんリモート会議が入ってきてしまいます。僕らの仕事は打ち合わせと同じくらい個人の仕事が大事ですが、自分で守らないと個人の仕事時間が圧迫されてしまいます」

まもなく3歳になる魚返さんの娘=魚返さん提供
まもなく3歳になる魚返さんの娘=魚返さん提供

見直したこと、変わらないこと

在宅時は互いに娘の面倒をみていますが、会議が入る割合は魚返さんの方が多く、その間は妻が1人で世話をします。娘にせがまれ、魚返さんがリモート会議の間に散歩に連れて行っていることもあるそうです。

保育園に通っているときは魚返さんが送り迎えの担当で妻が夕食を作っていましたが、今負担は妻に偏ってきていると感じています。

「今までだったら妻が夕食を作ってくれている間に僕が保育園に迎えに行き、帰りは遠回りして時間稼ぎをしていました。保育園に行かなくなってからは、妻がキッチンに立っていると子どもが手伝いたがって、オモチャやテレビで遊ばなくなるので、妻の負担が増えてしまったと思います。お料理体験としては良いけど、はかどらなくて大変ですよね」

互いにゆっくり過ごせる時間を作るため、見直した分担もあります。これまでは妻が娘をお風呂に入れて魚返さんが寝かし付けていましたが、最近はお風呂から寝かし付けまでワンストップで魚返さんがやるようになったといいます。

「妻は長風呂なんですが、これが唯一の『ひとりでくつろぐ』時間です。この時間をとにかく守るために、いろんな分担や順序を考えています」

魚返さんは妻(写真)との分担を見直し、時間を有効に使うようになったといいます=魚返さん提供
魚返さんは妻(写真)との分担を見直し、時間を有効に使うようになったといいます=魚返さん提供


魚返さん自身も、以前は深夜0時を回ってから入浴することがありましたが、今は午後8〜9時に入るためいつ寝ても良い状態にもっていけ、時間の無駄がなくなったそうです。

「分担と順序に関しては、こうやった方が楽かなとか、フリーになる時間を早められるかなとか試行錯誤していますね。子どもが早く寝ればこちらが使える時間ができて、作業があるときは作業できるし、作業がない日は数少ない余暇として使えます」

一方で、これまでと同じスタイルにしているのが「添い寝」です。

「添い寝は1日ごとに交替制にしています。僕が添い寝する番の時にコピーや企画などの考えるべきことが残っていると大変ですね。でも、だからといって添い寝の担当までケースバイケースにすると、僕の作業が発生するたびに添い寝は妻任せになってしまう。それもアリだと妻は言ってくれるのですが、負担の偏重を避けるためにこの『交互』というスタイルだけは守ろうと勝手に自分で決めています」

魚返洋平さん提供
魚返洋平さん提供

保育園に行けない寂しさ

寝かし付けでは、絵本の読み聞かせをすることがルーティンになっていた魚返さん。毎回2、3冊読んでいましたが、ある時から「絵本に書いてない話を聞きたい」とリクエストされるようになりました。

そこで考えたのがアドリブでの語り聞かせです。1度即興で作って話すと娘が気に入り、今では絵本を1冊読んだ後にオリジナルで三つほど話すといいます。

「毎回昔話や絵本みたいな話は作れないので、子どもが通っている保育園を舞台にして、登場人物は子どもを主人公に、実在の先生、友達、ロケーションを出しています。凧揚げの話を聞きたいと言われたら凧を揚げた話をファンタジーにデフォルメして、バランスボールを買った日はボールの話がいいというので、保育園でバランスボールを楽しんでいてボールが勝手にしゃべり出すという話を作りました」

「保育園に行きたいのに行けていないということが、こちらが思っている以上に本人の心の中では寂しいんだろうなと感じます。だからなおさら保育園でみんなで楽しく遊んでいる風景を聞きたいんじゃないでしょうか。ひょっとしたら夢にも出てくるんじゃないかな。大変ですが、今は習慣になっています」

魚返洋平さん提供
魚返洋平さん提供

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「スピード感についていけるか…」

各地で緊急事態宣言が解除され、油断はできないものの日常が戻りつつあります。

家庭については「withコロナでどうなるんだろうという漠然とした不安はありますが、協力してやっていくしかない」と話す一方、仕事面では気になることが。週1回、リモート会議でよそのチームの進捗を共有する中で、同僚の活躍を見て焦燥感に駆られることもあるようです。

「例えば段階的に会社に行くようになって仕事の時間が増えた時に、会社のチームメイトや新しく入ってくる仕事、様々な案件が進むスピード感や温度感にちゃんとついていけるのか。自分の生活ペースが広告業界の第一線の温度感とズレている感じがしています」

写真はイメージです
写真はイメージです 出典: PIXTA


既婚未婚や子どもの有無、子どもの年齢など家庭環境による差が大きく出ることは、仕方ないと感じつつモヤモヤが残ります。

「こっちはなんとか7時間の勤務ルールにのっとってやるだけでも精いっぱいなのに、みんなバリバリ仕事をしているわけです。ピンチをチャンスに変えるような企画やアイデアを考えている余地が全然ないですよね。そういうことができる人は、純粋にすごいと驚嘆します。こういう状況で攻め続けるのは大変だなと思って、この後会社で大丈夫かなという不安はあります」

これはコロナ以前、育児で仕事の時間や量をセーブする日々のなかで抱いた感情とも重なるといいます。

しかし、割り切る気持ちも出てきました。

「アグレッシブになれない今の自分も、まあ仕方ない、と思えるようになってきました。2歳の子どもの世話を最優先にしたくて、そこは犠牲にできません。一方で、これがいつまでも続くわけではありません。今はこういう時期なんだろう、と。それ以上でも以下でもないと思えるようになりました」

<魚返洋平さん>
1981年生。早稲田大学卒業後、2003年に電通入社。以来、コピーライターとしてさまざまなクライアントを担当している。
近年の仕事は「ちがいをちからに変える街。渋谷区」「ホッとひともち。雪見だいふく」「YOUR FAN. WEGO」など。
2017年夏に第一子(女)が誕生し、約半年間の育休を取得。2019年には、体験記をまとめた『男コピーライター、育休をとる。』(大和書房)を出版した。
都内在住で共働き。クラフトビールと海外ドラマが好き。

お知らせ
#父親のモヤモヤ・オンラインオフ会
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5月30日(土)10時より、オンラインオフ会を開きます。
父親同士、モヤモヤや解決策を共有して交流しませんか?
ゲストに魚返洋平さんをお迎えします。応募・詳細はコチラをご覧ください。

父親のリアルな声、お寄せください

記事に関する感想をお寄せください。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、在宅勤務が広がっています。一方で、休校や休園が続く中、在宅勤務と子育てとの両立に悩む声も聞かれます。「会社の対応」や「パートナーとの関係」「子どもの教育」などで感じていることや体験、ご意見を募ります。

いずれも連絡先を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.com)で、朝日新聞文化くらし報道部「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。

 

共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。あなたのモヤモヤ、聞かせてください。
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