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外出自粛で注目「おりがみカップ」10年前の展示、社長の直感で成長
長引く外出自粛により、テイクアウト需要が伸びる中、横浜市の食品容器メーカーの「シンメイ」が扱っている「おりがみカップ」は、180%の売り上げの伸びを見せています。円形の紙をジャバラに折って器にし、食べるときは折り目を広げる仕組み。その形はつぼみが花開くときのようで、「見た目もいい」と、おりがみカップを紹介したツイッターの投稿には13万件の「いいね」がついています。「おりがみ」に商機を見出した社長の思いを聞きました。
シンメイの湯川惣一郎社長によると、この容器との出会いは10年ほど前の業界の専門展でした。
おりがみカップの元々のアイデアは、食品容器を専門としていない他社が展示していたものでした。しかし当時その会社では生産ラインが整っておらず、手作りで生産していたそうです。
展示場でおりがみカップを見た社長は商機を直感。その会社が持っていた特許を専売で使用許諾契約を結び、2013年からはシンメイでの生産・販売の体制をとっています。
「デザイン性も高く、材質は紙。オーブンや電子レンジにも対応しています。接着剤も使っていない。使い終わったら広げて平らにできるのでゴミに出してもかさばらない」と、湯川さんは「悪い点がない」と自信を持ちます。
価格帯は製品構造が複雑であることなどから、同社が扱う他のテイクアウト容器の平均価格に比べると割高になりますが、「価格帯ではなく、他との差別化という点で需要があります」。
現在、大手外食チェーン「ジョリーパスタ」や、サラダ専門店「アロハサラダ」などのテイクアウト容器としても採用されています。
コロナ禍でのテイクアウト需要の高まりも受けて、最近では問い合わせも増えており、5月上旬には納期が2カ月待ちだったことも。現在は生産体制を整えており、納期の遅れは解消されつつあります。
4月の売り上げは前年比で180%となっていて、同社広報担当によると「生産対応できなかった受注分も含めると、前年の3倍近くはある」とのこと。
おりがみカップは大・小・特小の3サイズ(それぞれ960cc、520cc、230cc)を取りそろえていますが、1サイズあたり日産10万枚の生産体制で構え、増え続ける受注に対応しています。
ネットで話題になったことについては、「仕掛けているつもりはないのですが、自然発生的に広めてもらっていることはありがたい」(湯川さん)。
一方で、残念だったというのが、今年予定されていた東京オリンピック・パラリンピックの延期です。
折り紙文化は海外から注目されていることもあり、おりがみカップは世界にも通用すると考えていた湯川さん。2020年の東京オリパラ開催が決まって以降、「2020年を目指して露出を高めるなどしてきたのですが…」と、1年後の延期に悔しさをにじませます。
しかし、いまは、「これからの1年はチャンスととらえています」と気持ちを切り替えています。
東京オリパラでのインバウンド需要に備え、外国人に好まれる和柄の容器も開発中だといいます。
それに加えて、今後も国内でのテイクアウト需要が続くことを見込み、増産体制をとるために機械や工場の準備も整えています。
「日本の食材は海外からも注目されていますが、その容器にも注目してもらいたい。おりがみカップは、ネーミングも、エコな容器という意味でもPRできると考えています」
今後は輸出も視野に、おりがみカップを広めるため、決意をあらたにしていました。
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