連載
#4 #おうちで本気出す
200社以上、明太子に魅了されたマニアの「究極のおうちレシピ」
明太子の魅力とともに、ありたい自分を見つけた


福岡だけで少なくとも200社、奥深い明太子の世界
「明太子は贈答品のイメージが強いですが、一言に明太子と言っても味も楽しみ方もさまざまです。より身近に感じていただけるように明太子の魅力を発信しています」

業界の拡大につながったといわれているのが、創業者があえて製法の特許を取らなかったこと。たくさんのメーカーが生まれる中で、オーソドックスな味に限らず、自由な発想でさまざまな商品が生まれていきました。

おすすめは「そのまま」と「切り干し明太」
まず食べ比べにもってこいなのが、「博多寿賀や」の「博多明太子食べ比べ」のセットです。老舗の味から個性あふれる味まで、6社、12社、18社から選べるおまかせの詰め合わせ。田口さんは「少しづつ色々な種類の明太子を食べられるセットは珍しい」とおすすめします。(https://www.neo-9.com/mentai/)
「お気に入りの明太子が見つかったら次は直接明太子屋さんに注文してもらえればいい、という店主の方の思いも含めて素敵なセットです」

明太子はもちろんのこと、もつ焼きや長浜ラーメンなど、家でも博多のグルメが堪能できます。田口さんは「べったら漬けを明太子の調味料でつけ込んだ『めんたら』が含まれていることもポイント」と説明します。単体で楽しめるだけではなく、他の食材ともマッチするのが明太子の魅力のひとつです。
また、「ふくや」に関連して、創業者の川原俊夫さんの人生をモデルにした映画・ドラマ作品「めんたいぴりり」(主演:博多華丸さん)も「おうち時間にぴったり」と田口さん。明太子の楽しみ方、どこまで幅広いのか……。
奥深すぎる明太子の世界。では、田口さんは普段どのように明太子を楽しんでいるのでしょうか。「メーカーさんの商品であれば、基本的にはそのまま食べるのがおすすめ」という田口さんですが、アレンジをするなら特に気に入っているレシピがあるといいます。
それが、「切り干し明太」です。

「自分は何者なのか」迷っていたOL時代
どうして彼女はここまで「明太子」に夢中になったのでしょうか。話を聞くと、今でこそ自ら「めんたいこ」を名乗る田口さんですが、数年前とは見えている世界が全く違っているようです。

3年前、心をすり減らすような毎日に嫌気がさし、友人に相談したところ、すすめられたのが「行きつけの居酒屋をつくること」でした。しかし当時、ひとりでお店に入る勇気が持てなかった田口さんは、気になっていたお店のドアの前までは行けても、そのまま帰るということを繰り返していたそうです。
同じ頃、友人に後押しされて始めたのがインスタグラムでした。実は、それまでも福岡に旅行に行ったり、東京でも明太子が食べられるお店を調べて行ったりしていたものの、自身の「明太子好き」をさほど意識をしていなかったと振り返ります。
「よくよく考えれば親が魚卵が好きだったので、焼きたらこなどが食卓に並ぶことはよくあったんです。でも、友人に『明太子好きだよね』言われて、自分が人よりも好きなのかもしれないと気付いた」と明かします。

面白い話をする他のお客さんと自分を比べて落ち込みながらも、明太子の話を人にするようになると、「明太子の人」と認知されるようになっていきました。
仕事辞め、2週間の福岡旅行が転機に
そこで、田口さんは予期せず明太子メーカーからの熱烈な歓迎を受けることになります。インスタグラムを始めて約1年、明太子に特化した珍しいアカウントに業界のフォロワーも増えていました。福岡を訪れると知った何社もの企業が、「ぜひ寄っていってください」と連絡をくれたのです。

「どこの誰かもわからないような私になぜ」と驚いた田口さんでしたが、業界としても発信してくれる人を求めていたのだと知ります。メーカーの情熱や優しさに触れ、自分が必要とされていることに感動した田口さん。「メーカーさん、業界の力になりたい」という気持ちで、自分が極める道を決めました。
「明太子で自分好きになれた」
明太子のような赤いワンピースを着た田口さんに目を引かれ、近付いていくと驚きました。ワンピースにはお札のように、明太子を生産するメーカーの名前が貼られていたのです。「かねふく」のような有名メーカーから、知る人ぞ知る企業までびっしり。
「スポンサーがついているんですか」と思わず聞いてしまいましたが、「いえ、メーカーさんのことを知ってもらいたくて」という田口さんの笑顔が忘れられません。

OL時代、「自分は何者なんだろうか」といたという焦りの中にいた田口さんでしたが、「これだ」と思えるものは、想像したよりもずっと身近なところにありました。今でも「明太子なしでコミュニケーションを取れと言われたら難しいですが」と苦笑いしますが、明太子によって人脈はぐっと広がりました。
「明太子を好きだと言うようになって、自分も好きになれた気がします」
外出自粛による巣ごもりで、生活の中に変化が起こりにくい日々が続いています。そんなときでも、今まで知らなかった「ちょっとニッチ」な世界に出会うことで、新鮮な気持ちになれるかもしれません。withnewsでは家の中で楽しめる事柄の奥深さ、その道を究める「マニア」な人たちの情熱を伝えていきます。