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連載

#28 ○○の世論

「ポスト安倍」石破氏推しってどんな人たち? 異彩放つ河野氏支持層

進次郎氏派に多い「9条護憲」

2018年8月27日、総裁選で掲げる政策を発表する記者会見で、質問に答える自民党の石破茂元幹事長=東京・永田町、岩下毅撮影
2018年8月27日、総裁選で掲げる政策を発表する記者会見で、質問に答える自民党の石破茂元幹事長=東京・永田町、岩下毅撮影 出典: 朝日新聞

目次

憲法と政治意識について朝日新聞が行った全国世論調査(郵送)で、安倍晋三首相の次の首相にだれがふさわしいか、いわゆる「ポスト安倍」について尋ねました。「ポスト安倍」支持層を分析すると、支持層それぞれの憲法観が見えてきました。(朝日新聞記者・磯部佳孝)

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「ポスト安倍」トップは石破茂氏

安倍首相の自民党総裁としての任期は2021年9月までです。朝日新聞が3月上旬~4月中旬に行った全国郵送世論調査で、「ポスト安倍」について、次のように聞きました。

【あなたは、次の首相には、だれがふさわしいと思いますか。=択一(2020年3月~4月調査)】
・石破茂氏(24%)
・小泉進次郎氏(13%)
・河野太郎氏(7%)
・岸田文雄氏(6%)
・菅義偉氏(6%)
・枝野幸男氏(6%)
・この中にはいない(29%)
*その他・答えないは省略
*調査方法(以下同じ)=全国の有権者から3千人を選び、郵送法で実施。3月4日に調査票を発送し、4月13日までに届いた返送総数は2130。無記入の多いものや対象者以外の人が回答したと明記されたものを除いた有効回答は2053で、回収率は68%。

自民党元幹事長の石破茂氏が24%でトップでした。次いで、小泉進次郎環境相13%、河野太郎防衛相7%、岸田文雄・自民党政調会長と菅義偉官房長官、枝野幸男・立憲民主党代表がいずれも6%と続きました。「この中にはいない」がもっとも多い29%でした。

地元事務所前で通行人にお茶を配るなどし、新年を祝う石破茂・元自民党幹事長=2019年1月1日、鳥取市、岡本智撮影
地元事務所前で通行人にお茶を配るなどし、新年を祝う石破茂・元自民党幹事長=2019年1月1日、鳥取市、岡本智撮影 出典: 朝日新聞

憲法改正、河野支持層「必要」62%

今回の調査では、いまの憲法についても質問しています。「ポスト安倍」に推した政治家ごとに有権者を「○○支持層」として分析すると、支持層の憲法観が浮かんできました。

【あなたは、いまの憲法を変える必要があると思いますか。変える必要はないと思いますか。(2020年3月~4月調査)】
変える必要がある
・全体(43%)
・石破支持層(40%)
・小泉支持層(47%)
・河野支持層(62%)
・岸田支持層(51%)
・菅支持層(54%)
・枝野支持層(24%)

変える必要はない
・全体(46%)
・石破支持層(52%)
・小泉支持層(44%)
・河野支持層(30%)
・岸田支持層(42%)
・菅支持層(41%)
・枝野支持層(64%)
*その他・答えないは省略。敬称略。

有権者の全体が、いまの憲法を「変える必要がある」43%、「変える必要はない」46%と割れるなか、6人中トップの石破支持層は「変える必要はない」52%が「変える必要がある」40%を上回りました。

一方で、6人のうちもっとも改憲論が強かったのが河野支持層で、「変える必要がある」62%が「変える必要はない」30%を大きく上回りました。

河野太郎氏
河野太郎氏 出典: 朝日新聞

「安倍改憲」拒否感が浮き彫りに

安倍首相は2017年5月3日、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と明言し、その後も「憲法改正は、必ずや私の手で成し遂げていきたい」などと意欲を示しています。

改憲の項目として、戦争の放棄を定めた9条に自衛隊の存在を明記することなどを挙げました。こうした「安倍改憲」について、どう見ているのでしょうか。

【安倍首相は憲法改正を目指すことを明言しています。安倍政権のもとで憲法改正を実現することに、あなたは賛成ですか。反対ですか。(2020年3月~4月調査)】
賛成
・全体(32%)
・石破支持層(26%)
・小泉支持層(38%)
・河野支持層(52%)
・岸田支持層(41%)
・菅支持層(52%)
・枝野支持層(9%)

反対
・全体(58%)
・石破支持層(68%)
・小泉支持層(51%)
・河野支持層(38%)
・岸田支持層(53%)
・菅支持層(37%)
・枝野支持層(84%)
*その他・答えないは省略。敬称略。

有権者全体で「反対」が58%に達するなか、石破支持層の「反対」は68%にのぼり、「安倍改憲」への拒否感が浮き彫りになりました。

野党第1党・立憲民主党代表の枝野支持層では「反対」84%でした。

一方、名前を挙げた5人の自民党政治家の支持層のうち、「賛成」が過半数だったのは河野支持層と菅支持層の52%でした。

記者会見に臨む菅義偉官房長官=2020年4月2日午前11時34分、岩下毅撮影
記者会見に臨む菅義偉官房長官=2020年4月2日午前11時34分、岩下毅撮影 出典: 朝日新聞

「9条改正を」岸田支持層39%

では憲法9条について、それぞれの支持層はどう考えているのでしょうか。

【あなたは、憲法第9条を変えるほうがよいと思いますか。変えないほうがよいと思いますか。(2020年3月~4月調査)】
変えるほうがよい
・全体(27%)
・石破支持層(25%)
・小泉支持層(27%)
・河野支持層(56%)
・岸田支持層(39%)
・菅支持層(41%)
・枝野支持層(7%)

変えないほうがよい
・全体(65%)
・石破支持層(69%)
・小泉支持層(66%)
・河野支持層(41%)
・岸田支持層(52%)
・菅支持層(55%)
・枝野支持層(85%)
*その他・答えないは省略。敬称略。

「変えないほうがよい」は全体で65%にのぼりました。「変えないほうがよい」は枝野支持層が85%ともっとも高く、石破支持層69%、小泉支持層66%と続きました。

特に、戦力を保持せず国の交戦権を認めていない9条2項を削除することを2018年の自民党総裁選で主張した石破氏の支持層で、「9条護憲派」が多数を占めていることが特徴的です。

自民党の派閥で「ハト派」と称される宏池会会長の岸田氏の支持層では「変えないほうがよい」52%が「変えるほうがよい」39%を上回ったものの、石破支持層ほど「9条護憲派」が多くはありませんでした。

新型コロナウイルス感染症の自民党の対策本部であいさつをする岸田文雄政調会長=2020年3月10日、自民党本部、西村圭史撮影
新型コロナウイルス感染症の自民党の対策本部であいさつをする岸田文雄政調会長=2020年3月10日、自民党本部、西村圭史撮影 出典: 朝日新聞

安倍首相案に肯定的なのは?

「ポスト安倍」を争う石破氏と岸田氏の支持層では、安倍首相が提案する9条改憲案についての賛否が分かれました。今回の調査で、次のように聞きました。

【安倍首相は、憲法9条の1項と2項をそのままにして、新たに自衛隊の存在を明記する憲法改正案を提案しています。あなたは、こうした9条の改正に賛成ですか。反対ですか。(2020年3月~4月調査)】
賛成
・全体(41%)
・石破支持層(38%)
・小泉支持層(49%)
・河野支持層(66%)
・岸田支持層(55%)
・菅支持層(59%)
・枝野支持層(13%)

反対
・全体(50%)
・石破支持層(57%)
・小泉支持層(45%)
・河野支持層(30%)
・岸田支持層(39%)
・菅支持層(35%)
・枝野支持層(81%)
*その他・答えないは省略。敬称略。

石破支持層の「反対」は全体の50%を上回る57%に対し、岸田支持層の「反対」は39%にとどまりました。一方、「賛成」は石破支持層38%に対し、岸田支持層55%でした。

2018年の自民党総裁選で安倍首相と争った石破氏の支持層は安倍首相の案に否定的な一方で、安倍首相が「後継者」と目するとされる岸田氏の支持層は安倍首相の案に肯定的であることがわかります。

様々な支持層を抱えた「ポスト安倍」候補たちが今後、憲法についてどのような主張をしていくのか。「ポスト安倍」レースの見どころの一つになるかもしれません。

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