連載
#28 ○○の世論
「ポスト安倍」石破氏推しってどんな人たち? 異彩放つ河野氏支持層
進次郎氏派に多い「9条護憲」
憲法と政治意識について朝日新聞が行った全国世論調査(郵送)で、安倍晋三首相の次の首相にだれがふさわしいか、いわゆる「ポスト安倍」について尋ねました。「ポスト安倍」支持層を分析すると、支持層それぞれの憲法観が見えてきました。(朝日新聞記者・磯部佳孝)
安倍首相の自民党総裁としての任期は2021年9月までです。朝日新聞が3月上旬~4月中旬に行った全国郵送世論調査で、「ポスト安倍」について、次のように聞きました。
自民党元幹事長の石破茂氏が24%でトップでした。次いで、小泉進次郎環境相13%、河野太郎防衛相7%、岸田文雄・自民党政調会長と菅義偉官房長官、枝野幸男・立憲民主党代表がいずれも6%と続きました。「この中にはいない」がもっとも多い29%でした。
今回の調査では、いまの憲法についても質問しています。「ポスト安倍」に推した政治家ごとに有権者を「○○支持層」として分析すると、支持層の憲法観が浮かんできました。
有権者の全体が、いまの憲法を「変える必要がある」43%、「変える必要はない」46%と割れるなか、6人中トップの石破支持層は「変える必要はない」52%が「変える必要がある」40%を上回りました。
一方で、6人のうちもっとも改憲論が強かったのが河野支持層で、「変える必要がある」62%が「変える必要はない」30%を大きく上回りました。
安倍首相は2017年5月3日、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と明言し、その後も「憲法改正は、必ずや私の手で成し遂げていきたい」などと意欲を示しています。
改憲の項目として、戦争の放棄を定めた9条に自衛隊の存在を明記することなどを挙げました。こうした「安倍改憲」について、どう見ているのでしょうか。
有権者全体で「反対」が58%に達するなか、石破支持層の「反対」は68%にのぼり、「安倍改憲」への拒否感が浮き彫りになりました。
野党第1党・立憲民主党代表の枝野支持層では「反対」84%でした。
一方、名前を挙げた5人の自民党政治家の支持層のうち、「賛成」が過半数だったのは河野支持層と菅支持層の52%でした。
では憲法9条について、それぞれの支持層はどう考えているのでしょうか。
「変えないほうがよい」は全体で65%にのぼりました。「変えないほうがよい」は枝野支持層が85%ともっとも高く、石破支持層69%、小泉支持層66%と続きました。
特に、戦力を保持せず国の交戦権を認めていない9条2項を削除することを2018年の自民党総裁選で主張した石破氏の支持層で、「9条護憲派」が多数を占めていることが特徴的です。
自民党の派閥で「ハト派」と称される宏池会会長の岸田氏の支持層では「変えないほうがよい」52%が「変えるほうがよい」39%を上回ったものの、石破支持層ほど「9条護憲派」が多くはありませんでした。
「ポスト安倍」を争う石破氏と岸田氏の支持層では、安倍首相が提案する9条改憲案についての賛否が分かれました。今回の調査で、次のように聞きました。
石破支持層の「反対」は全体の50%を上回る57%に対し、岸田支持層の「反対」は39%にとどまりました。一方、「賛成」は石破支持層38%に対し、岸田支持層55%でした。
2018年の自民党総裁選で安倍首相と争った石破氏の支持層は安倍首相の案に否定的な一方で、安倍首相が「後継者」と目するとされる岸田氏の支持層は安倍首相の案に肯定的であることがわかります。
様々な支持層を抱えた「ポスト安倍」候補たちが今後、憲法についてどのような主張をしていくのか。「ポスト安倍」レースの見どころの一つになるかもしれません。
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