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#27 ○○の世論
キャッシュレス時代、財布にいくら入れてる? 世論調査が示す安心感
先行きの見えない新型コロナウイルスの影響。コンビニなどの店頭では、現金の受け渡しに抵抗がある人もいるようです。昨年10月の消費増税に合わせたキャッシュレス決済のポイント還元も追い風となり、現金を持たずに買い物ができるお店も増えてきました。日本人の現金離れは進んでいるのでしょうか。(朝日新聞記者・磯田和昭)
「ふだん、現金が財布の中にいくらあれば、安心できますか」。2019年11~12月に実施した朝日新聞の世論調査(郵送)で、こんな質問をしました。1998年の面接調査でも同じ質問をしています。
郵送と面接では調査方法が違うので、単純には比較できませんが、「1万円以上」が、どちらの調査でも4割強を占めて最多でした。時代が平成から令和に変わっても、1万円がボーダーラインと考える人が多いことは、変わらないようです。
ただ、1万円より低い額でも「安心」という人の割合は大きく変わりました。「3千円未満」「3千円以上」「5千円以上」を合計した「1万円未満で安心」層は、1998年が15%に対して、2019年は31%とずいぶん増えています。
これに「1万円以上」を合わせると、2019年には76%に達しています。20年あまりの間に、財布の中身が薄くても安心できる人が増えていることが分かります。
2019年調査の回答を男女別にみてみます。
「5千円以上」は女性の方が、「3万円以上」は男性の方が多いです。「1万円未満で安心」層は女性が35%で、男性の24%より高めです。
次に年代別にみてみます。
「1万円未満で安心」層は18~29歳の50%、30代の49%と若年層では半数に達しました。
64歳以下をまとめると、37%。一方、65歳以上で「1万円未満で安心」は21%にとどまります。高齢層では依然、現金をもっていないと安心できないという傾向がうかがえました。
富裕層ほど手元に現金がないと心配、とは言えないようです。「経済的にゆとりがある」層(全体の23%)で、「1万円未満で安心」は28%、「ゆとりがない」層(全体の72%)の32%と、大きな違いはありませんでした。
こうした傾向は、最近のキャッシュレス化の進展の影響なのでしょうか。2019年の郵送調査では、キャッシュレスの利用頻度も聞きました。
全体では、キャッシュレスを「よく利用している」が28%、「ときどき利用している」が30%でした。
ただ、「よく利用している」は64歳以下の37%に対し、65歳以上では13%にとどまり、くっきりした差がついています。
ポイント還元策の「効果」にも、年代差が出ていました。
ポイント還元策でキャッシュレス利用が「増えた」という人は23%で、「変わらない」が68%でした。とりわけ65歳以上で「増えた」は12%にとどまりました。
また、「経済的にゆとりがある」層の27%が「増えた」と答え、「ゆとりがない」層の22%より多い結果でした。高齢者や経済的弱者への恩恵は大きくないようです。
コロナ禍は、高齢者や経済的な弱者に、特に深刻な影響を及ぼしています。政府の打ち出す支援策がこうした弱者に行き届いているか、今後も注視していきたいと思っています。
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