話題
神戸郁人さんからの取材リクエスト
在宅勤務、成功の秘訣ってあるの?
在宅勤務「絶対に意識するべきこと」15年選手のフリーランスの教え
謎だらけの働き方、コツを教えて先輩!
話題
在宅勤務、成功の秘訣ってあるの?
謎だらけの働き方、コツを教えて先輩!
在宅勤務、成功の秘訣ってあるの? 神戸郁人
まさか、こんな事態になるとは……。在宅勤務のことです。新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、生活スタイルがすっかり変わり、戸惑う場面も少なくありません。仕事を進めるペース、気持ちの切り替え方、気分転換の方法……まだまだ分からないことばかり。ウイルスの出現前から在宅をしてきた人は、どう乗り切っているのでしょう? そこでフリーランスとして15年以上働き、テレワークの極意を知る「先輩」に、「絶対意識しておくべきこと」について聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)
フリーランスとして15年以上の経験があり、現在は4歳になる娘を育てつつ、自宅を拠点に活動しています。
撮影現場で画像データを編集し、直接クライアントに納品するなど、元々外での仕事が少なくなかったという半田さん。方針を転換するきっかけは出産でした。急な発熱を始め、子供に異変があったとき、すぐ対応できるようにする必要に迫られたからです。
「一番大切なのは、暮らしの中から『あいまいさ』をなくすことかもしれません」。半田さんは、テレワークを成功させる秘訣(ひけつ)について、そう語ります。どういうことでしょう?
象徴的なのが、「どこで勤務するか」をめぐる決断です。当初、作業はリビングでこなしていたそう。パソコンで写真を修正したり、得意先からLINEで指示を受けたり。しかし、会社員の夫が仕事中と気付かず、話し掛けてくることもしばしばだったといいます。
そこで取り組んだのが、作業場の確保でした。部屋の中にある、四方を壁に区切られたスペースを書斎に改造したのです。業務用の資料を置くための棚などを持ち込み、生活空間と完全に切り離す形に。こうすれば、一目で働いているかどうかわかります。
自分にとっても、家族にとっても、気持ちを切り替えるための「スイッチ」を用意する。そのことによって、能率は確実に上がったと、半田さんは振り返ります。
日々の「ルーティン」を決めておくのも有効と言えそうです。半田さんにとっては、わが子の保育園への送り迎えが、これに当たります。
午前6時半過ぎに起き、朝ご飯を作って食べさせ、9時までには娘を園へと送り届けるーー。毎朝繰り返されるサイクルです。メイクをし、服を着替え、仕事に向けた心構えをつくるための時間にもなっています。
「子供が産まれる前は、不規則な生活をしていました。未明に寝て、正午前に起きるといったことも少なくなかったですね。それが今では、毎日同じタイミングで目を覚まし、食事する、という習慣が身についています。このことは、仕事にも良い影響を与えてくれました」
娘を迎えに行くのは午後6時前後。それまでにやり切れるだけの仕事量を見積もり、前もって一日のスケジュールを組むよう心がけているといいます。
業務に集中するため、意識していることはあるのでしょうか? 尋ねてみると「長く働き過ぎないようにしている」という答えが返ってきました。
「注意力が持続する限界は、一般に2時間程度と言われます。このためパソコンを使っているときは、有料動画サイトの映画を流したり、ラジオ番組を聞いたりして、時計代わりにしています。コンテンツの視聴が終わったら休憩を挟む、といった具合です」
とはいえ、コロナウイルスの流行後、保育園は休園しています。仕事に没頭できる時間は、更に限られつつあるそうです。そのため、以前より長期スパンで業務計画をたて、細かくノルマを達成する方式を取っているとか。娘の就寝後、無理のない範囲で作業する、といった工夫も重ねています。
もう一つ気になるのが、気分転換の方法です。
旅行が趣味の半田さん。コロナウイルスの出現前は、休みになると大仏の撮影を兼ね、家族で全国各地を回っていたといいます。しかし市中感染が広がった今、それも難しくなってしまいました。
そこで最近は、家での時間を充実させるのに心を砕いています。フリーランスの仲間やママ友と「zoom飲み」を楽しんだり、日々の出来事をSNS上で発信したり。「似た境遇にある人同士で思いを共有できると、気持ちが上向きますね」
娘と非日常を共有するチャンスも、積極的に設けるようになりました。家具の配置を買え、リビングに「部屋」をつくり遊ぶ。屋内にピクニックシートを敷き、お弁当を食べるーー。そんな風に、ちょっとした変化を採り入れることで、暮らしを彩っているそうです。
その他、娘が自由に落書きできるよう、撮影時の背景に使う「バックペーパー」を壁に貼るといった工夫も。「生活をプロデュースする、というくらいの気持ちでいると、面白がれるかもしれませんね」。半田さんは笑いながら、そう教えてくれました。
【記者の気づき】
■急激な変化、ついていけていない感覚
世界中の人々のライフスタイルに、急激な変化をもたらしたウイルス禍。私自身も、在宅勤務シフトを始めとした、新たな試みに四苦八苦しています。
4月には自室で働けるよう、通販サイトを流し読みしながら、モニターやパソコンを置くための机、いすを買いそろえました。しかし寝間着姿のまま始業し、なかなか仕事に身が入らなかったり、ついつい本棚の小説や漫画に手が伸びたりと、まだまだ勝手がわかりません。
そんな身からすると、半田さんの言葉は、示唆に富むものでした。「自らの意思で生活にメリハリをつける」「なにげない毎日に幸せを見いだそうと努める」。何かと時間に追われる中で、いつの間にか忘れてしまっていた考え方です。
■思い出した原則「自分で自分の機嫌を取る」
上司や同僚の目が届かない環境にあって、労働や余暇を、いかに豊かにしていくか。このテーマについて考える上で、「自分で自分の機嫌を取る」という姿勢が重要になるのかもしれません。
よい成果を生み出すために、無理をしない。ストレスがたまったら、しっかり発散する。極めて当たり前でありながら、頭の中から抜け落ちてしまいがちな「原則」です。
そして、そのことを意識し、実践できるのは、結局自分しかいません。在宅勤務は、いわば原点を思い出させてくれる好機である、とも捉えられるのではないでしょうか。
最近、外出しづらいことを逆手に取り、お菓子作りに挑み始めました。失敗することも度々ですが、新しい領域を開拓する楽しみを感じています。まだ終わりが見えない自粛の日々。前向きに乗り切るため、自分なりに「創造力」を駆使していきたいものです。
1/54枚