連載
#25 ○○の世論
安倍首相“支持者”も許していない「手記」のこと 世論調査が示す熱
内閣と自民支持層の6割近く「再調査を」と回答
学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却と財務省の公文書改ざん問題で、自殺した同省近畿財務局の職員が書き残した手記が3月に公表されました。問題の発覚から2年。安倍首相は終わったことにしたいようですが、真相究明を求める世論は、いまも冷めていないようです。(朝日新聞記者・磯部佳孝)
財務省近畿財務局の赤木俊夫さん(当時54)が自殺したのは、公文書改ざんが発覚した2018年3月のことでした。
上司から改ざんするよう強要されたなどとして、赤木さんの妻は、国と佐川宣寿・元同省理財局長に計約1億1200万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こしました。訴訟の第1回口頭弁論の期日は、5月27日に指定されています。
赤木さんが残した手記や遺書には、決裁文書の修正は佐川氏の指示で、近畿財務局の現場職員の抵抗にもかかわらず行われたと記されていました。
一方、財務省は2018年6月、内部調査の結果を発表しました。佐川氏が改ざんの方向性を決定づけたとするものの、指示した文言が明確に書かれていないなど、数々の疑問が残る内容でした。
このため、赤木さんの妻は「真実を知りたい」と訴え、第三者による再調査を求めています。
朝日新聞は4月の世論調査で、この問題について次のように聞きました。
再調査を求める声が全体で72%に達しただけでなく、内閣支持層と自民支持層でも60%近くが「再調査をするべきだ」と答えています。
そもそも、この問題をめぐる世論は当初から厳しいものでした。財務省による公文書改ざんが発覚した直後、朝日新聞の世論調査では次のように聞いています。
世論の大半が問題視しており、内閣支持層と自民支持層の70%超も問題があると考えていることがわかります。この問題に関する首相の責任について、全体の82%が「責任がある」と答え、その割合は内閣支持層の60%超と自民支持層の70%超に達していました。
さらに、財務省が内部調査の報告書を公表した直後には、次のように聞きました。
「決着はついていない」は全体で79%、内閣支持層と自民支持層でも60%以上でした。
それから2年近くたった今年4月の調査でも、真相究明を求める世論は高いままです。
赤木さんの手記が公表された後、野党は国会で「手記に新しい事実がある」などとして再調査の必要性を何度も問いただしました。
しかし、安倍首相は、赤木さんの残した遺書や手記と報告書が「趣旨として同じ内容で両者に齟齬(そご)はない」などと再調査を拒んでいます。麻生太郎財務相も会見で「新たな事実が判明したとは考えられませんので、再調査を行うと考えているわけではない」と述べています。
真相の究明に向けて、赤木さんの妻がインターネットで呼びかけた再調査を求める署名は約30万筆(4月9日時点)に達しました。国会では、衆院財務金融委員会が野党の要請手続きを受けて、政府に文書を提出するよう求めることができる「予備的調査」を衆院調査局に命じました。
改ざんはなぜ必要だったのか―。財務省の報告書を公表した約2年前の会見で、こう問われた麻生氏は「それが分かりゃ苦労しない」と答えていました。
安倍政権下では、「桜を見る会」でも公文書の廃棄などが問題になりました。安倍政権は、この問題に背を向けたままでいるのでしょうか。
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