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おめだぢ大概死ぬぞ!秋田ご当地ヒーロー「過激ツイート」への思い
正義の味方が「里帰り」を勧めない理由
新型コロナウイルスの影響が、全国に広がっています。5月の大型連休には、地方への帰省者が増え、更なる感染拡大につながるかもしれない……。そんな不安を打ち消そうと、秋田県のご当地ヒーロー「超神(ちょうじん)ネイガー」が立ち上がりました。ツイッターアカウント(@neiger_akita)で、方言満載の投稿によって、移動の自粛を呼び掛けているのです。脱「都会目線」の励ましが生まれた背景を、「中の人」に聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)
超神ネイガーは「地産地消型ヒーロー」を名乗り、秋田県にかほ市を拠点に活動。主に県内で行われるショーに出演するなどし、地域をもり立てています。
「おらから県民のみんなへ」という一文が添えられた、イラストつきの4枚のスライドは、17日にツイートされました。それぞれ「呼ばない」「行かない」「帰省しない」という標語が、赤字で大きく描かれています。
おらから県民のみんなへ。#緊急事態宣言 pic.twitter.com/YEZ30XBY1g
— 超神ネイガー (@neiger_akita) April 17, 2020
目を通してみると、あふれ出る「ローカル感」に気付きます。たとえば、お年寄り夫婦の絵が載った「呼ばない」の一枚。「県外にいる孫の顔が見たい」という声に、「感染した場合には、おめだぢ大概死ぬぞ」と、秋田弁で応じています。
小学生くらいの男女が描かれた、「行かない」のスライドも特徴的かもしれません。「田舎のおじいちゃんたちに会いたいな」。そんなつぶやきを、「来てくれたところで何も出来ないし、出かけるところもない」「自分たちで工夫して遊べ」と、やんわり諭すのです。
ユーモアが極まっているのが、「帰省しない」です。実家に帰ろうとするカップルのイラストに対し、繰り出されるフレーズは「燃えるコロナの熱いクラスター、それがお前だぜ」。実は、小林旭さんの名曲『赤いトラクター』の歌詞をもじっています。
4枚目には三つの標語をまとめて掲載。「一人一人が対応出来ねえと、世界が終わる」「みんなの良識ある行動に期待してるぞ。へばな(それじゃあな)」。秋田名産のきりたんぽを、レシーバーのように持つネイガーの画像とともに、そんなメッセージを伝えます。
ツイートは、22日時点で9万回以上リツイートされ、「いいね」も16万を超えました。「コロナ収まったら秋田さ帰省するべ」「さすがヒーロー」「胸にとどめたい言葉」といった、共感の声も少なくありません。
「地方に住む者の一人として、何をどう県民に伝えるべきか考え、簡潔にまとめてみました」。投稿の経緯について語るのは、ネイガーのツイッターアカウントを管理する、高橋大さんです。
そもそものきっかけは、佐竹敬久・秋田県知事が16日、県庁内の会議で発した一言です。新型コロナウイルスの感染を抑えるため、緊急事態宣言の対象区域が全国に広がったことを受け、こう述べました。
この言葉に、SNS上では「自虐ネタか」「ウケ狙いだろう」などの声が上がりました。一方、高橋さんの認識は異なります。
「誇張ではなく、実際にその通り。秋田では、(密閉・密集・密接の)『3密』を避けたり、(感染を防ぐための)『社会的距離』を保ったりすることは、既にできていました。更に何をすればよいのか、『ピンとこない』というのが正直な感想だったんです」
混雑の激しい都市部と違う、地方の実情に合った感染予防策とは何か。検討の末、今回のスライドを思いつきました。少しでも早く完成させようと、ポスター風デザインが特徴の、フリー素材提供サイト「いらすとや」の画像を活用したといいます。
作成にあたって意識したのは「皆を傷つけることなく、ユーモアのある楽しい内容をつぶやく」ということ。ネイガーのアカウントを運用する上で、普段から座右の銘にしているそうです。
わかりやすいのは、4枚目のスライドに登場する、ネイガーの画像。人気バンド「SEKAI NO OWARI(セカイノオワリ)」の楽曲「Dragon Night」を、トランシーバー型のマイクを持ち歌うメンバーの姿が、ネット上で話題になったことに着想を得ています。
「アカウントを使う中で、ネットならではの表現やパロディ、言葉遊びといった作法が培われてきました。それを用いて、ひらめくままにつづっていたら、今回のような表現になった……といったところでしょうか」
ツイートの読みやすさにも気を配りました。ネイガーのシンボルである秋田弁は、濁点の有無を調整するなどし、「誰でもわかる程度の訛(なま)り」を目指したといいます。
そのかいあってか、一連のスライドは、秋田県民以外の人々のもとまで届きました。「大型連休には、毎年地方の実家に帰省していた。でも今年は『呼ばない』『行かない』『帰省しない』を徹底しようと、決意を新たにした」というコメントも寄せられたそうです。
こうした反応について、高橋さんは次のように語っています。
「地方に住む皆さんが、地域内外からの人の出入りについて心配されていることなどを、改めて実感しました。『しない勇気』を持ち、互いに励まし合うための一助になったならば、幸いに思います」
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