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#5 withコロナの時代

「私なんか常に自粛生活」脳性まひの暮らし揺さぶったコロナウイルス

脳性まひのある福本千夏さんが見るコロナ禍の社会とは。

福本千夏さん=イースト・プレス提供
福本千夏さん=イースト・プレス提供

目次

withコロナの時代

外出自粛や、休校、望んではいなかったけど始まった在宅勤務――。新型コロナウイルスによってたくさんのことが制限されています。いま、新型コロナに揺れる社会は、日常を制限されることも多くある障害者の目にはどう映るのでしょうか。障害者の日常をコラムにした「障害マストゴーオン」(イースト・プレス)の著者で、脳性まひを持つ福本千夏さんに書面で聞きました。

 

障害とともにある生活を軽快な文章でコラムに綴り、書籍化された「障害マストゴーオン」の著者・福本千夏さんに、こんな時だからこそ元気が出る曲を選んでもらいました。「みんなの心に届きそうな、私が昔から好きな曲を選びました」
 

「諦める」のは慣れていたけど

――緊急事態宣言が発令され、「不要不急の外出を控えてください」と政府から要請があるなど、多くの人がこれまで送ってきた日常生活とは異なる毎日を送っています。

 「ほんとうにその外出必要ですか?」なんて問われてもね。
不要不急なんて言われたら私なんて存在自体問わなくてはいけなくなる。笑

でも、「自分さえ自分を見捨てなかったらいい!」と。
まあ、もともと一人暮らしの移動が困難な障害者は、自粛だのなんだのと言われるまでもなく、常に自粛生活だったわけです。私は、キャバレーどころかネットカフェとやらにも行ったことがない。


――「常に自粛生活」、重い言葉です。福本さんはいま現在、どんな生活を送られていますか。

 うふふっ、重い言葉ですか?
でも、確かにコロナウイルスによってまずいかな?って思うことも出てきた。

通販はものすごくありがたい。でも、それだけじゃ厳しいかな。
靴の修理や、ドライヤーなどの小型電化製品を買うとき。微妙な重さやボタンの位置は自分の足や手で確かめざる得ない。目を守る「度なし眼鏡」もね。
あとATMでの現金引き出しも、ヘルパーさんや友人には頼めない。…あっ薬!前回はかかりつけなので電話でお願いできたんですよ。これからどないなっていくんやろー。

いやー「諦める」には慣れていて、常に自粛生活していたはずなんですが……私、困ってるやん?!

福本千夏さん=イースト・プレス提供
福本千夏さん=イースト・プレス提供

ひとりでいる、目に見えない恐怖

――実際にその場に行かないとできないこと、結構ありますよね。

 それに、ひとりで家にいる時間も長い。目に見えない恐怖を一人でやり過ごさなきゃいけない。
私は脳性まひの体や顔の緊張、言語障害があって、心臓も肺も心も強くない。
かかったことがないのでわかりませんが、コロナに感染したら重症化するリスクは高いと、どうしても思ってしまいます。想像するだけで水も飲み込めず、むせるわ咳き込むわの大騒ぎ(笑)。
口がうまく閉じられず、マスクも物の一時間で唾液でぼとぼと。かえって衛生面に問題が生じてるやん?と思いながら、付けています。


――特に高齢者や障害者などにとっては重症化リスクは今回、懸念されます。

 そんな私の実態を知らない方が多い「世の中の風」に吹かれるのも今は怖くて…。
2月頃は「もーう、気にしすぎ。焼肉でも食べに行こう。違う景色に身を置いたら、気も張れる」と連れ出してくれていた息子や友人も、今は、電話だけよくくれています。
「ちなっちゃんの言葉、(電話でも)だんだんわかるようになってきた」って面白がって楽しんで言葉を交わせるのはうれしい。だけど、会いたい人に会えない・会わないのはやっぱりつらいです。

支えあっての「生きていかんとあかん!」

――人と会えないのがつらい、障害を持たない方にも共通していると思います。その他にもありますか?

 私は全身が絶えず緊張していますので、鍼灸やリハビリの治療は欠かせない。3日もほっておくと全身ががちがちに固まって動けなくなる。
ですが、治療にもあまり行けず、減らせていた弛緩剤や導眠剤や鎮痛剤が、再び不安と痛みを紛らわすお助けグッズになりました。

この春はベランダから見る桜に毎日励まされていました。「今日は無事だった。が、明日風が吹けば散るかわからんぞー。でも、また来年も咲きますから、あなたも、なにかちょっとでも心ひかれたことはおやりなさい」ってね。


――「桜に励まされる」。同じ思いでいた人も多いかもしれません。

 あたりまえだと思っていたことに感謝しながら、今も命綱をくれている人に知恵を借りながらね。
テイクアウトや(食材宅配サービスの)生協、訪問診療や訪問理髪……。前からあった繋がりなどを使って、ひとつひとつ不安を解消していっています。
「一人でも生きていかんとあかん!動けなくてもなんとかなる!」
こう思えるのって、きっとみんなに支えられているからなんです。

2019年12月に刊行した福本千夏さんの著書「障害マストゴーオン」
2019年12月に刊行した福本千夏さんの著書「障害マストゴーオン」

自分を取り戻し、大事にする

――コロナ流行前の生活ってどうでしたか?

 過去の私は、床やテーブルに落ちた物も口にする。洗髪も秋冬なら毎日というわけでもない。かがまず床の物を足で取る、一人の時は鼻くそを小指でほじくる……と、まあええ加減に暮らしてました。うわっはずかしー。

だから、今、自分史上最強の清潔さを保つ私に対して、「やっと人間になれたね」と微笑む人も「えっ、寝る前にドアノブの消毒をしているんですか。だから、千夏さんアルコールで手が爛れてるの?少し過敏すぎるんじゃない?」と、豹変に驚く人もいる。

――かなり変化はあったようですね……。周囲を見てみるとどうでしょうか?

 難儀なことは…そう!コロナに対しての予防の程度が人それぞれなことです。非常時を共有できない怖さです。
高齢者や基礎疾患をお持ちのかたのために…という言葉も、感染の出始めや感染拡大の時に使われただけ。

私はマスクも消毒液もトレパ(トイレットペーパー)も並んで買えない。収入は低く、毎日が贅沢とはいかない生活。なのに、割高の物を買ったり、自費の部分が出てきたりと出費は増えてますもん。でも、国や府や市には、なにひとつ助けてはいただけない。結局ポーズだけやんって思いますよ。コロナが世に出る前から薄々感じてたけどね。
でも、コロナが世に出て、皮肉なことにそこは同じ状況に置かれて共感する人が増えた。

――共感する人が増えた

 コロナが世に出る前は、障害者への理解も少しずつ得られてきたかなと思っていたんです。
ちょうど本が出版された頃かな(2019年末)。

ですが、コロナが流行しだしてから私も含めてだんだんみんな優しさのベールがかぶれなくなってきた。
今までのしがらみや人間関係を考えなおし、自分を取り戻し、大事にすること。それがひいては、他人も大事にすることにつながると私は思います。

     ◇
コロナ禍にわかった「無理をしていた関係」や、障害者の「自立(自律)」について福本さんが語ってくださった後編は、21日に配信する予定です。

 

新型コロナウイルスによって、私たちの生活や経済は大きく変わろうとしています。未曽有の事態は、コロナウイルスが消えた後も、変化を受け入れ続けなければいけないことを刻み込みました。守るべきもの、変えるべきものは何か。かつてない状況から「withコロナの時代」に求められる価値について考えます。

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