連載
#55 #父親のモヤモヤ
「仕事と子育て、在宅では両立困難」 外出自粛の生活、模索続く父親
【平成のモヤモヤを書籍化!】
結婚、仕事、単身、子育て、食などをテーマに、「昭和」の慣習・制度と新たな価値観の狭間を生きる、平成時代の家族の姿を追ったシリーズ「平成家族」が書籍になりました。橋田寿賀子さんの特別インタビューも収録。
「在宅で仕事をしながら、子どもの面倒を見ることはできません。両立させられません」。首都圏に住み、不動産会社に勤める男性(39)は、そう話します。
専業主婦の妻(35)、長女(6)と次女(1)の4人暮らし。男性は、「#父親のモヤモヤ」企画で昨年9月に取り上げた父親と子どもだけのお出かけ「#ゆるゆるお父さん遠足」の中心メンバーの1人です。ツイッター(ぐでちち:@gude_chichi)では、子育てについて発信しています。今回、メールで現状を報告してくれました。
政府が「一斉休校」を要請したタイミングで、男性の会社は原則として在宅勤務になりました。打ち合わせにはテレビ会議システムを活用。契約などで対面が必要な場合は、感染リスクを下げるため、電車ではなくカーシェアリングサービスを利用して外出するようになりました。
長女が通っていた幼稚園は「一斉休校」にあわせ休園に。卒園後に入学した小学校も休みになったため、家族4人が家庭にいる期間が2カ月近くなりました。感染した場合のリスクが高いとされている高齢者との接触をなくすため、実家の両親の支援も求めていません。
「同じように仕事を続ければ、専業主婦である妻に、育児の負担が今以上に大きく偏ってしまいます。そうなれば、妻が限界を迎えてしまいます」。男性は、普段から早い時間に帰宅したり、家事や育児を積極的にシェアしたり、休日は子どもを連れて出かけたりと、夫婦間の公平性が保たれるように心がけています。だからこそ、長女の「巣ごもり」によって妻の負担が増えてはいけないと考えました。
「リモートワークになってから、ダイニングテーブルで作業をしながら長女の学習を見るようにしました。『公文』『チャレンジ』や紙のドリルを長女がやり、僕は隣で仕事、というのが理想です」
次女は妻が面倒をみて、長女の学習をフォローしながら男性が仕事をするという役割分担にしたのです。ところが、「仕事が進むわけはありません」。長女の集中力がもたず、体を動かしたがるので、一緒に運動することになります。
在宅勤務をしながら自宅で子どもの面倒を見ることは困難。男性は、そう感じています。「影響がおさまるまでは完全に仕事を諦める方向に、かじを切っている感じがあります」。その仕事も、新型コロナの影響で半分は休業状態。今後の状況は楽観視できず「会社の倒産みたいな事態も含め考えておかなければなりません」。ずっしりとした不安があると言います。
ウェブデザインの会社を営む都内の男性(43、子育てとーさん:@kosodate10_3)も、企画で紹介した「#ゆるゆるお父さん遠足」の中心メンバーです。小学校の長男(6)と保育園の長女(3)を自宅でみています。パート勤務の妻と家事と育児を分担しています
男性は、子どもの学ぶ機会が失われることのほか、「家族のメンタル的な負荷」を懸念しています。
「長男には発達上、(得意なことと苦手なことに)凸凹(でこぼこ)があります。特に、見通しの立たない状況に弱いです。なぜ今家にいるのか、手洗いが大切か。正しく怖がれるように情報を伝えていますが、今後の不透明な状況はあまりよい影響はないと思っています」
子どものストレスをためないように気を配っていますが、新型コロナの影響で発散方法も限られてしまいます。「どこかに出かけるとか、カラオケに行くとかで発散させていましたが、自宅かその近辺ばかりになっているので代わり映えしません」
困難な状況が続きますが、2人は、働き方が見直されたり、母親に偏りがちだった家庭内の家事や育児のシェアに関心が向かったりするきっかけになればとも願っています。男性(子育てとーさん)は、「ホームスクール的な制度や、オンライン授業など、こうした時だからこそ制度を推し進めてほしいです。そうすれば子どもが不登校になったとしても学びを継続できると思いもします」とも話します。
いまも試行錯誤が続きます。
記事に関する感想をお寄せください。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、在宅勤務が広がっています。一方で、休校や休園が続く中、在宅勤務と子育てとの両立に悩む声も聞かれます。体験やご意見を募ります。
いずれも連絡先を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.com)で、朝日新聞文化くらし報道部「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。
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