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グラバー園さんからの取材リクエスト

長崎県の人は自転車に乗らないって本当ですか?



長崎県民の謎ルール「自転車は乗らない」保有率圧倒的最下位の理由

オランダ坂にある下りの自転車を禁止する道路標識 =2017年5月、長崎市
オランダ坂にある下りの自転車を禁止する道路標識 =2017年5月、長崎市 出典: 朝日新聞

目次

取材リクエスト内容

長崎県の人は自転車に乗らないって本当ですか? グラバー園

記者がお答えします!

東京一極集中と言われる日本ですが、地方に目を移すと「ローカルルール」と呼ばれるカルチャーがたくさんあります。中でも自転車は代表格で、サドルの低さやママチャリの多さなど、様々な「ローカルルール」が見つかっています。そんな自転車にまつわる「ローカルルール」でも、斜め上をいくのが長崎です。そもそも「自転車に乗らない」というのです。いくら坂が多いとはいえ本当なのか…? 現地で調べてみました。(朝日新聞デジタル編集部・影山遼)

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配達がきつかった福山雅治さん

以前、「福井の高校生、なぜサドル低い」という記事を世に出した時、読者の方から様々な感想をいただいた中に「長崎の人はそもそも、自転車に乗れません」という声がありました。

たしかに長崎や北海道の小樽といった街は坂が多いイメージがあります。検索で調べると、どうやら自転車店はあるようです。

【関連記事】サドル低すぎ!福井の高校生「謎ルール」 おしゃれ?悪ぶってる?
 

今から1年前の2019年4月、別件で訪ねた際に長崎市の中心部を散策してみると、たしかに坂であふれています。乗れないというより乗る場所がないようです。ずっと立ちこぎをしたとしても難しそうです。

俳優で歌手の福山雅治さんも以前、インタビューに「長崎ですから坂が多いので、きつかったですよ」と新聞配達をしていたという当時の思い出を語っていました。

実は僕、新聞少年だったんですよ。小学校高学年から中学生のころかな、母と兄と3人で、区域を分担して、毎朝5時から配達してたんです。長崎ですから坂が多いので、きつかったですよ。肩からこう新聞入れをたすき掛けにして、細い路地を走って配達してました。長崎の地方紙だったんですけど、まさか自分が配達した新聞の1面に自分が載ることになるとは、もちろんそのときは想像すらしてませんでしたね。
2010年4月8日 朝日新聞朝刊「福山雅治さん『春の新聞週間』インタビュー 」

「乗ろうと思ったことがない」

中心部を歩いていても、全く自転車に乗っている人が見つかりません。

帰宅する市内の高校3年生の女性(18)=年齢などは以降いずれも2019年4月の取材当時=に聞いてみると、「自転車?そういえば見かけないですね。乗れないというか乗ろうと思ったことがないというか。道も狭くて怖そうなんですよね」と教えてくれました。

長崎市内の道路は狭いところが多い。市内を通る国道ではバスが車線からはみ出るほどのところもある。自転車専用通行帯は市内にはなく、車と歩道の間は通行量の多いバイクが通り抜けるため、自転車が通るすきはなさそうだ。
2017年5月1日 朝日新聞デジタル「長崎育ちは自転車苦手? 坂多く、保有台数は全国最少」
原付きバイクは見かけたが、自転車では厳しそうだ=2019年4月、長崎市
原付きバイクは見かけたが、自転車では厳しそうだ=2019年4月、長崎市

1時間ほど探し回ってようやく、有名な観光地「オランダ坂」のふもとにある「長崎みなとメディカルセンター」の近くで、奇跡的に自転車に乗っている人を見つけました。

ママチャリに乗っていた男性(67)は「ここら辺の平らな道を移動する時だけ使うね。坂?電動じゃない、この自転車じゃ無理でしょ」と話します。

結局、1時間半で見つけたのはこの自転車ともう1台の計2台にとどまりました。

話を聞けなかったもう1台の自転車。乗っていたのは平らな道=長崎市
話を聞けなかったもう1台の自転車。乗っていたのは平らな道=長崎市

店頭には原付き30台と自転車2台

ではなぜ市内に自転車屋があるのでしょうか。話を聞いてみました。

グラバー園にほど近い「小松自転車商会」で働いていた男性は「長崎は自転車なんて全く売れない」と笑いながら話します。店内を見回しても30台くらいある原付きバイクに対し、自転車は2台のみ。しかもどちらも中古で、自転車店なのか原付き店なのか分かりません。

男性も「売れ筋はもちろん原付き。自転車は中古車が半年に1回売れれば良い方で、新車が売れた記憶がありません」と言い切ります。店に訪れる客もほとんどが原付き目当てで、自転車はたまにパンクの修理がある程度だそうです。

長崎市の中心部には階段も
長崎市の中心部には階段も

2018年の自転車産業振興協会の調査によると、推計ですが、長崎県の1世帯あたりの自転車の保有台数は0.556台で最下位。

全国平均は1.226台のため、約2倍の差があります。46位の沖縄県も0.695台のため、かなりの差をつけられています。

以前は「斜面地整備課」も

坂がきついため、観光地にエレベーターまでもがついた長崎。なぜここまで坂が多くなったのでしょうか。

長崎市によると、市街地の約7割が斜面地。現在はなくなってしまいましたが、以前は斜面地のまちづくりを担当する「斜面地整備課」という部署もあったそうです。

市などの話を総合すると、現在の長崎のある場所は、山と山の間に少し平地があっただけでした。その後、人が住むために山を切り開いたり、海を埋め立てたりするうちに、今のような坂だらけの街になったようです。

斜面地で知られる長崎市のグラバー園近くに斜行エレベーター(EV)に続き、垂直エレベーターが整備され「グラバースカイロード」が全面開通した。主に階段を利用していた南大浦地区など周辺住民の往来が便利になり、車いす利用者も、ふもと側から園内の頂上部へ、よりスムーズに入園できる。
垂直EVは、2002年7月に運行開始した斜行EV(高低差50メートル)終点から約80メートルの地点に設置。
2003年6月1日 朝日新聞朝刊「グラバー園近くに、エレベーター付きスカイロード」
グラバー園近くに全面開通した垂直エレベーター=2003年5月、長崎市
グラバー園近くに全面開通した垂直エレベーター=2003年5月、長崎市 出典: 朝日新聞

「黒歴史」のサドルやハンドル

東北・福島出身の記者にとっては、自転車は通学に欠かせないものでした。盆地を片道30分以上、自転車をこいで高校まで通っていたように、自転車のない生活は考えられません。

同時に、サドルやハンドルを使った謎のおしゃれ競争の記憶は、今ではそっとしまっておきたい「黒歴史」になっています。

そもそも「自転車に乗らない」という長崎県民。あの「ローカルルール」に毒されずに済むのが、むしろ、うらやましい気もします。

地域によっては多様な文化があることに気づいた今回の取材。奥深い自転車話、今後も追いかけたいです。

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