連載
#27 #やさしい日本語
「雑巾って何ですか?」外国人の親が驚いた「日本だけの学校の常識」
「おやつはダメ」「おはじきにも名前」不思議なことがいっぱい
【
Children go to school by walk in groups called TSUGAKUHAN. Meeting place & time, as well as the route to school, are decided depending on the group.
(『ばんびーに』の
日本と外国で「常識」が異なることはよくあります。
先週の記事で取り上げられた「上履き」もその例です。「上履き」はなぜ必要なのでしょうか。土足のまま学校に入ると教室などが汚れるから、という理由は考えられます。しかし、そうだとすれば、他の多くの国でも同様に「上履き」が使われていてもおかしくないはずですが、実際には、「上履き」はあまり一般的ではないようです。
これは「上履き」が国際的に一般的ではないからやめた方がいいということではありません。ただ、「上履き」がなくても学校生活に支障はないのかもしれない、という可能性を考えてみることは重要だと思います。
そして、外国人との交流は、そうした「気づき」を与えてくれる貴重な機会なのです。
現在、コロナウィルスのまん延で、これまでの様々な「常識」がひっくり返ろうとしています。そうしたときだからこそ、今、日本で「常識」とされていることが本当に妥当なのかを考え直してみることは、この危機を乗り越えるためにも必要なのではないでしょうか。
◆庵功雄(いおり・いさお)さん:一橋大学国際教育交流センター教授。日本語教育の専門家。主な著書に『やさしい日本語――多文化共生社会へ』(岩波新書)、『<やさしい日本語>と多文化共生』(ココ出版・共編著)など。
【機械翻訳用】ふりがな なし
◆「雑巾って何ですか?」外国人の親が驚いた「日本だけの学校の常識」
春がきました。初めて日本の学校に通うときは、みんな知らないことがたくさんあります。外国から来た人が日本の学校で「驚くこと」を聞くと、学校には「日本だけの普通(常識)」がたくさんあることに気がつきます。例えば「雑巾がけ」の写真を見た、マレーシアのお母さんは……。
■きょうのことば
雑巾がけ……日本の学校では、子どもたちがみんなで一緒に掃除をします。掃除のときに、ほうきでごみを掃いた後、床を「雑巾」というタオルのような布で拭きます。雑巾は洗って強く絞って使います。
〈あさか多文化子育ての会「ばんびーに」の喜多陽子さんの話〉
「ばんびーに」は、埼玉県朝霞市や、その近くに住んでいる、外国人の親子や、もうすぐ赤ちゃんが生まれる女性(妊婦)のためのサークルです。日本での子育てについて分からないことを聞いたり、友達を作ったりすることができます。
外国から来た人たちは、日本の学校で分からないことがあります。ばんびーにでは、入学前に相談会をしています。
喜多さん「掃除の『雑巾がけ』は、知らない人が多いです。子どもが学校を掃除する国は、あまりないからです。多くの国では、掃除をするときは、掃除を専門にする大人が学校に来て、モップや掃除機を使って掃除をします。マレーシアのお母さんは、雑巾がけの写真を見て、とても驚きました。4月に日本の小学校に入る子どもに『こうやって拭くのよ!』と教えていました」
――雑巾は、しっかり洗って干さないと、臭くなります。特に、牛乳をふいた後は……。日本には、そうじをすることも教育だ、という考え方もあります。声を出さないで掃除をする「無言掃除」をする学校もあります。「無言掃除」をしたら集中力がつくそうです。
■「一緒にすることができるね」
――雑巾以外にも難しい言葉はありますか?
喜多さん「『給食当番』も伝えるのが難しいです。日本には給食があって、子どもたちが自分で給食を配ります。給食当番は順番でします。『割烹着』を着た人は、家で洗ってきて、アイロンをかけて返します」
――私は割烹着を洗うのを忘れてしまい、私の次に割烹着を着る人が、私の顔を嫌な顔で見たことがあります……
喜多さん「イスラム教徒のお母さんは、『給食には食べることができないものがあるけど、給食当番はみんなと一緒にすることができるね』と話していました」
――給食当番を、学校の友達と一緒にできる大切なこと、とそのお母さんは考えたんですね 。質問が多かったことは何ですか?
喜多さん「家が近い子どもたちが集まって、一緒に学校に行く『通学班』について、外国から来た親は、『子どもだけで、きちんと並んで行くことができるのですか?』と驚きます。例えば、イギリスでは12歳まで、親が子どもを学校に送り迎えをします。『日本は安全ですか?』と心配する人もいます」
【通学方法】 子どもたちは、集まって、学校へ歩いていきます。集まる場所や時間、歩く道は、通学班ごとに決まっています。Children go to school by walk in groups called TSUGAKUHAN. Meeting place & time, as well as the route to school, are decided depending on the group. 『ばんびーに』の資料
――子どもたちが通る道に危険がないか、警察、まち、学校が、調べています。地域の大人が道に立って、子どもたちが安全に学校に行くことができるかを、見ている地域もあります
■「おやつを食べなくて大丈夫?」
喜多さん「教育にお金がかからない国もあります。日本では「家庭科」の授業で同じエプロンを作るためにお金を払うなど、『ときどきお金が必要になる』ということも話します」
喜多さん「学校に持っていくものには、すべてに、名前を書きます。これが、とても大変です。算数のときに使う小さい『おはじき』も、ひとつひとつ……」
――手で書きたくなくて、名前スタンプを買う人もいますね。
喜多さん「学校に持っていってはダメなものがあることも、伝えます。お菓子がダメだと知ったスリランカのお母さんは『昼ごはんまで時間が長いのに、おやつを食べることができないなんて、かわいそう』と心配していました」
【学校に持っていってはダメなもの】
・お菓子 Snacks and sweets
・おもちゃ Toys (including key rings)
・アクセサリー Accessories
・勉強するのにいらないもの Things not related to school 『ばんびーに』の資料
――持ってきてはいけないものにも、日本にしかない学校の常識(日本では普通のこと)が見えるんですね。
喜多さん「だから、ばんびーにでは『相談会』をやって、分からないことは全部聞いてくださいと言っています。『持ってくるもの』を書いた紙を読んだり、説明会に行ったりするだけでは、日本の常識までなかなか分からないですからね」
〈一橋大学・庵功雄さんの話〉
日本と外国で「常識」が異なることはよくあります。
先週の記事で取り上げられた「上履き」もその例です。「上履き」はなぜ必要なのでしょうか。土足のまま学校に入ると教室などが汚れるから、という理由は考えられます。しかし、そうだとすれば、他の多くの国でも同様に「上履き」が使われていてもおかしくないはずですが、実際には、「上履き」はあまり一般的ではないようです。
これは「上履き」が国際的に一般的ではないからやめた方がいいということではありません。ただ、「上履き」がなくても学校生活に支障はないのかもしれない、という可能性を考えてみることは重要だと思います。そして、外国人との交流は、そうした「気づき」を与えてくれる貴重な機会なのです。
現在、コロナウィルスのまん延で、これまでの様々な「常識」がひっくり返ろうとしています。そうしたときだからこそ、今、日本で「常識」とされていることが本当に妥当なのかを考え直してみることは、この危機を乗り越えるためにも必要なのではないでしょうか。
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