ユーザーの増加によって、楽しみ方も独自に進化するSNS。世界で累計16億ダウンロードを突破したTikTokでは、ユーザーがお題をまねしたり、アレンジしたりして広がる「meme(ミーム)」動画が注目を集めています。日本でmemeはどのように生まれているのか。memeを中心にTikTokで人気のクリエイターでもある景井ひなさん(21)に話を聞きました。
@kageihina まれに反射神経すごい時ない?
♬ Ultra Instinct - adamdevito
海外動画がヒント
昨年3月にアカウントを開設後、フォロワー数は160万を超え、国内有数のTikTokerである景井さん。あるあるネタやトリック動画、喜怒哀楽が豊かな表情に、これまで3600万超のいいねがついています。TikTok関係者は「話題になるネタへの嗅覚と、アレンジのアイデアやクリエイティブがすごい」と評価します。
TikTokは世界中にユーザーがいるので、私は海外の動画を見ることが多いです。だからおすすめも、海外ばっかり。いいねが一つぐらいしかまだついていないものも、出てくるんですよ。
海外の動画は、感性が日本と違っていて。「そういうアイデアあるんだ!」って面白いです。それを、「自分だったら、どうするだろう」って始めることが多いですね。
私が面白いと思っても、日本のユーザーの方々に伝わらなければ、広がらない。「ここの表現は分かりづらいんだろうな」「日本だったら、どういう風に表現するだろう」って考えながら、いつも作っています。

TikTok内で編集 「若い子がまねできる」を意識
この前に投稿した、リンゴが一瞬で切れる動画は、鬼滅の刃の主人公が使っている剣を用意しました。海外で流行っていたトリック動画ですが、鬼滅の刃に反応してくれたコメントもたくさんありました。フォロワーさんの2割ぐらいは海外からなので、国内外どちらの視点からでも面白い動画ができるとうれしいですね。
パソコンを持っていないので、TikTokで編集することしかできないんです。海外の動画って、パソコンを使った手の込んだ編集も多いんですけど、参考にしているのはTikTokだけで完結するもの。フォロワーのみなさんもスマホだけしか持っていない子が多いので、みんなができるかどうかも大事ですね。
撮影は、毎回トライアンドエラー。私、自撮りが伸びづらいんです。色々試したんですけど、あんまりで。だから固定したり、マネジャーさんに撮ってもらうパターンが多いですね。
気になる動画は反応を確認
見つけた時には流行っていなくても、気になったらとにかく「いいね」をブックマーク代わりにつけて、後でどれだけ伸びているか確認します。
ちょっと前にカラフルなヘアゴムをひたすら付けていく動画を撮ったんですけど、これも海外の人が投稿しているのを見た時はまだ、いいねが全然ついてなくて。そこから1時間後ぐらいに見たら、いいねがすごい勢いで伸びていたんです。すぐに撮って投稿したら、やっぱり反応よかったですね。
海外で流行っているからといって、日本で見てもらえるかって言ったら、絶対にそうではないんですけど、共通して面白い部分もあるので、反応が良い動画は参考にしています。
――サイクルを確立したのはいつぐらいから
元々、海外の動画を面白くて見ていたというのがあったので、いつの間にかですね。気づいたら、海外の動画ばかりをいいねするようになっていて。そこから、「海外でせっかく面白いのあるのに、日本ではまだ流行ってないな。だったら、やっちゃお」という感じでやっています。
出だしと投稿時間もこだわり
TikTokは、気軽に見られるのが良さだと思うんですけど、その分、興味ない動画はすぐスライドされてしまう。まだフォローしていない人にも興味をもってもらったり、最後まで見てもらったりするために、最初の出だしをどうするかは、すごく考えています。
あとは、毎日投稿。必ず19時にするよう、心がけています。その時間だけは、通信環境がいい所にいるようにしたり、仕事をしていても時間をもらったり。私ができない時は、マネジャーさんにお願いすることもあります。
ファンの方は学生さんが多いので、部活終わりや気になるテレビ番組が始まる前のすきま時間にちょうど見てくれるかなって考えて。最初に動画がバズって、毎日投稿しようと決めてからはそうしてます。
コメントも、数が多くて全員には返すことは難しいので、3番目までは返すようにしていています。これも私が勝手に始めたんですけど、(18時)58分、59分から待ってくれている人もいて。ゲーム感覚でみんなが乗ってくれていますね。
連日投稿を始めてから1度だけ、体調が悪くて投稿できなかった日があったんです。そうしたら、「どうしたんですか?」「何かあったんですか?」って、たくさんのコメントを寄せてくれたんです。こんなに待ってくれている人たちがいるんだと思って。改めてファンの方がいることのありがたさを感じて、うれしかったです。

TikTokが動画なので、インスタでは「実はここで撮影していました」といった裏側的な部分を、写真でアップしています。逆にインスタで先に場所を載せて、後日そこで撮った動画をTikTokで出すことも。結構紐付けて使ってますね。
Twitterは、何をつぶやいていいか分からんなくて(笑)。写真を載せることもありますが、今やっているお仕事の告知など、大事な情報を伝えることにも使っています。

フォロワー急増した動画は……
友達の間で流行っていて、それに流されてやってみたのが最初ですね。当時は、大阪にあるブライダルの専門学校にいたんですけど、とにかくみんなのノリがよくて。「はいもう、撮るで~」って感じで、撮影したのを投稿してました。
最初の1、2本は、アップしても全然反応なくて。でも、こんなもんだろうなって感覚だったんですよ。みんな同じようなネタをやってますし。 それが変わったのは、すっぴんからメイクしていく動画を投稿した時ですね。
@kageihina TikTok初心者にこれは難易度高かった🤯 ##すっぴん ##メイクチャレンジ ##アイメイク ##私のメイク ##おすすめのりたい ##tiktok初心者
♬ メイクチャレンジ - Ruta
次に出した「ムーブカメラ」という、私の動作に合わせて、カメラが動く動画もバズりました。あとは私の服装です。緑の袖と黒い身頃の素材が違う服を着て、TikTokの撮影をしたら、「服面白い」「袖ってそういうもの?」ってリアクションがあって。最近では、緑のタータンチエックのロングブーツがズボン生地にも見えるので、ハーフパンツとあわせて履くと「脱いでるの!?」と驚いたコメントを沢山頂きました。
最初のバズから、投稿する度にフォロワーが増えて、10日間でフォロワーが10万人ぐらいになったんです。そうしたら、色んな芸能事務所からお声がけをいただいて。地元・熊本にあるウェディング関連のドレスショップに内定が決まっていたんですけど、それを断って上京しました。
内定断って上京
小さい頃から洋服が好きで、ドレスショップを選んだのも、デザイナーになりたかったから。でも、モデルのお仕事にも憧れはあって。親には「絶対無理だ」ってずっと言われていたから、諦めていたんです。
それが、TikTokが話題になって、色んな人に声をかけてもらって。やっぱり、「やってみたい」と思った。親からはまた反対されたんですけど、事務所は親も知っているようなところだったので納得してもらいました。

「TikTok出身」を大事に
モデルもですけど、私は演技にも挑戦したい。昨年は、Youtubeのドラマに出演させて頂いて、今年2月には舞台も経験しました。今も、一つ一つの仕事を全力投球して、表現力が上がるよう頑張っています。憧れは安藤サクラさんです。
TikTokも、もちろん。目指しているのは国内フォロワー1位です。これからも試行錯誤して、みんなに見てもらえる動画を作っていきたいです。
TikTokがバズらなかったら、今頃地元のドレスショップで働いてたと思うんです。それが、上京して、色んな仕事をさせてもらえて。フォロワーの子から、「どうやったら景井さんのようになれるんですか」という声をいっぱいもらうんです。
私も一度は諦めていたけど、TikTokのおかげでここまでこられた。だから、SNS出身というのはすごく大事にしているし、今、夢を持ってSNSで発信している子たちに、「自分はここまでなれたよ」と胸張って言える存在になりたいですね。

かげい・ひな
熊本県出身の21歳。2019年3月からTikTokを始め、9カ月間で100万フォロワーを獲得。アドテック東京2019では、人気TikToker代表として登壇を果たす。男性女性ともにファンが多く、ネタ系やファッション、ダンスなど多彩なコンテンツを生み出す。