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#14 注目!TikTok
100億再生超えた「meme」動画 バズと責任と、TikTokの現在地
世界で累計16億ダウンロードを突破したTikTok。人気を支える一つに、ユーザーがお題をまねしたり、アレンジしたりして広がる「meme(ミーム)」動画があります。「TikTokのテキスト機能やノーズペイントのようなスタンプ機能などを通じて、多くの人に楽しんでもらっている体験です」と話すのは、TikTok Japanの石谷祐真さん (29) 。ミームの総再生回数は100億回を超えました。プラットフォームとしての責任も高まるTikTokは、気象庁とコラボした「防災TikTok」など行政との連携や、違法行為やフェイクニュースを防ぐ取り組みにも注力しています。日本での現状を聞きました。
ネットカルチャーとして、アメリカではポピュラーなミーム。TikTokでは昨秋から力を入れ始め、2月末で総再生回数が100億回を突破、投稿された動画は360万以上となっています。「ミームはハッシュタグチャレンジと相性がよく、ユーザー数の増加とともに広がっています。元々あった現象ですが、他のプラットフォームと差別化をする際に、TikTokの特徴を表す言葉として最近は紹介しています」
ハッシュタグチャレンジにはまず、「型」となるお題があります。昨年流行した「#ボトルキャップチャレンジ」は、ペットボトルのキャップを蹴り飛ばすという型がまねされ、投稿がどんどん広がりました。
そしてある段階から、飛ばすのではなく、キャップを回転させることにこだわったり、猫が挑戦したり。独自のアレンジをユーザーが加え、それを別のユーザーがまねていくようになります。元ネタが分からなくなるほど、アレンジにオリジナリティが出るようになったお題がミーム動画と呼ばれています。
石谷さんによると、ミームが生まれるのは、シンプルなコンテンツに多いそうです。難しいダンスの「完コピ」など、元ネタをそのまま楽しむものは、当てはまりません。
「最近人気だった『#ラララチャレンジ』は、縦一列に並んだ人が左右に揺れていく型から、後ろの人が裏切ってやらなかったり、アニメーションにしたりというパターンが出ています」
@juriri1116 I met the best friends.@TEENS @まえだしゅん🥀 @加藤勇也 #ゆやくん#ゆやくん##ゆやくん @いっせい (森長一誠) @高橋かの @おさかべゆい @向葵 まる🐥 (なたまる)
♬ Nanana Remix - tiafuentes212
「自分への質問に答える形で自己紹介をする『#イエスorノー』も自由度が高く、音源を加工したり、ペットが登場したりする投稿が出ています」
「アレンジが加わると、そこに新しい面白さが生まれるので、拡散のスピードが加速するんですね。ハッシュタグチャレンジはお題をまねるだけでも、もちろん楽しめますが、ミーム化すると、より多くのユーザーに届くコンテンツとなります」
TikTokは2017年、ByteDance社によってグローバル向けショートムービープラットフォームとして誕生しました。現在は、150の国と地域、75言語で展開されています。
日本で流行しているミームの多くは、元ネタがアメリカを始めとする海外から。石谷さんが所属するコンテンツストラテジーチームがキャッチアップし、アプリ内の「トレンド」で紹介しています。
「トレンドはユーザーの参考になるよう、今だったら在宅でも楽しめる『#おうちで過ごし隊』というキャンペーンを企画したり、海外も含めた『バズりそう』な話題をピックアップしたりしています。鼻の動きに合わせて文字や絵が描ける『ノーズペイント』は、アメリカでスタートしてすぐ、日本でも使えるようにしました。カップルでハートを作ったり、絵を描いたりする『型』から、難しい漢字を書くなどのアレンジが生まれ、日本では一番使われたエフェクトになりました」
チームには、コンテンツの企画経験があるメンバーやデータ分析が詳しいメンバーがいます。「流行に敏感であることが最低限必要なスキルですが、データドリブンの会社なので、再生回数や音源の使われ方など様々な指標を基に運営しています」
一方、特定のお題を強制的に推すこともないと語る石谷さん。「あくまでプラットフォーマー。ユーザーに楽しんでもらえるような周知はしますが、ミーム化するほど流行るかどうかは、遊び方次第です」
プラットフォーマーとしての姿勢は、社会的責任の部分にも現れています。新型コロナウイルスに関しては、厚生労働省からの情報をまとめたページを作成しているほか、「情報の正確性を確認してください」といった注意喚起をしています。
安全推進チームの一員でもある石谷さんは「フェイクニュースや過激な発言、陰謀論のようなコンテンツについては、コミュニティガイドラインに基づいて、動画の削除やアカウントの使用を停止することもあります」。
コミュニティガイドラインは、今年1月に内容を刷新。「暴力的で刺激的なコンテンツ」「嫌がらせといじめ」「未成年者の安全」など10カテゴリに分け、それぞれで違反となる基準を示しました。
アプリ内でガイドラインに反するような投稿を見つけた時には、通報できる機能も。プライバシーの設定や保護者が遠隔で子どもの使用をコントロールできる仕組みなども取り入れています。
未成年への安全啓発動画も、人気のTikTokerとコラボして「上から目線」でないものに。警察や関連団体から把握した被害の実例を、当事者に親しみやすいフォーマットで紹介しています。児童ポルノやゲームアカウント詐欺の被害防止などをテーマに作成した動画は累計再生数が1000万回超え。「『知らない人からのDM(ダイレクトメッセージ)に、安易に答えるのは危ない』というのも、普段からなじみのあるTikTokerが伝えることで、関心をもってもらえています」(石谷さん)
さらには、有識者や関係当局を招いた「セーフティパートナーカウンシル」を年4回開催。ネット利用にまつわるトラブルの共有や、TikTokの取り組みを報告する場となっています。政府のサイバーセキュリティ月間にあわせて2月には、さいたま市で親子3世代を対象とした「出前講座」を実施しました。
こうした取り組みはすべて、ユーザーの安心安全を「TikTokの成長戦略における最優先課題」にしているからだと石谷さんは言います。「プラットフォーマーとして、できることは全部する。そうした環境で、日本から世界で流行するようなネクストトレンドを作っていきたいです」
いしたに・ゆうま TikTok Japanコンテンツストラテジーマネジャー
教育系スタートアップで新規事業を推進した後、コンサルティング会社を経て、2018年11月にTikTokへ参画。アプリのさらなる成長をミッションに、TikTokにおけるコンテンツ戦略およびセーフティ活動全般に携わる。
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