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紙ストロー、国内メーカーの本音「プラストローは悪者ではない」
日本でも紙ストローを使うお店を少しずつ見かけるようになりました。環境の負荷が減るのはいいことだけれど、ストロー業者はどう思っているのでしょうか? 国内大手のメーカーから返ってきた答えは「プラスチックだけが悪者ではない」。なぜストローを紙にしなければいけないのか。あらためて考えました。(笑下村塾・高尾文子)
私は都内の高校に通いながら、お笑い芸人の、たかまつななさんが運営する「笑下村塾(https://www.shoukasonjuku.com/)」でライターをしています。グレタさんの行動がニュースになっているのは知っていましたが、正直、「友人と毎日昼休みに環境問題について討論しています!」という感じにはなっていません。
それでも、環境問題についての関心はあります。中でもストローは、私たち、高校生にとっても話すきっかけになりやすい身近な存在です。
まず、気になったのは、ストローを作っている業者はどのように思っているのか、ということです。
話を聞いたのは国内最大手のシバセ工業の関東営業所で勤務している久森さん です。
「プラスチックが悪者ではない」
久森さんは、ストローへの風当たりの強さに対する違和感があると言います。
「プラスチックストローは、たとえタピオカ用ストローであっても1gほど。ましてや一般的なストローなどは0.65gほどありません。たまたまストローが批判の的になっていますが、1枚10gほどのスーパーのレジ袋や、1本30gほどある500mlのペットボトルを含めた他のプラスチック製品をしっかりとリサイクルできるような社会にしなくては、環境にやさしい製品を使用したところで意味はありません」
久森さんによると、ストローの起源は、メソポタミア文明にさかのぼると説明します。
「ビールなどの発酵酒を飲む際、不純物を避けて飲むために、円筒形状の葦や藁を使用していたようです。現在のようなプラスチック製ストローになったのは戦後から。麦製、紙製のストローを経て、現在のポリエチレン(プラスチックの一種)の姿へと変化しました。」
ストローが今のように普及した背景には現代社会に合った「利便性」があるそうです。
「ストローを使用して飲むとスタイリッシュに見えたりだとか、女性の口紅がコップにつくのを避けられたりできるという理由から、広まったのではないでしょうか」
現在、日本で使用されているプラスチックストローのほとんどは輸入製品だそうです。
「将来的にストローは改良されたとしても、プラスチック製のままであると推測しています」
2019年8月、私はイギリスのバーミンガムの隣の州、ウォーリックシャーにあるマクドナルドで 紙ストローを体験しました。ストローをジュースに浸さないように、こまめに引き上げていましたが、15分ほどで形状が崩れはじめてしました。
現地で紙ストローについて聞くと、16歳イギリス在住の高校生が「プラスチックストローのほうが使いやすいが、環境のことを考えて紙ストローを使うようにしている」と話す一方、店内にいた、小学生くらいの子どもを連れた女性は「特に何も思わない」とも。
久森さんの話を聞きながら思い出したのは、「ストローを変えただけで環境問題を解決できる訳ではないから、他の方法も考えるべき」と話した、イギリスで出会った18歳のポーランド人の高校生の言葉です。
久森さんの「プラスチックが悪者ではない」という言葉は、正直、意外でした。ただ、話を聞いていくうちに、なぜストローだけが注目されるのかという疑問が私の中にも生まれてきました。
たくさんのプラスチック製品がある中で、ストローがやり玉にあげられるのは、「日常生活の中で目につきやすい」「一般的に必需品ではない」などの理由からなのかもしれません。
新型コロナウイルスを巡っては、本来なら関係のないトイレットペーパーが品切れになる事態が起きました。SNSなど様々な情報があふれる中、目の前のことだけに引っ張られてしまうと、本当に大事なことが見えなくなり、かえって混乱に拍車をかけてしまう危険があります。
同時に、環境問題は、若者である私たちにとって切実です。ストローを使うかどうかを含め、できれば環境に負荷の少ない生活をしたいと思っています。
そのためには、「プラスチック製品」という大きなくくりで問題を把握することが必要だと感じています。製品を作るのにも、配送するのにも環境に負荷はかかります。
例えば、プラスチック製品の環境に与える影響についての正確な情報は、国際連合広報センターが公開している動画などで公開されています。
「ストローだけやめても解決にはならない」。その上で、ストローをきっかけに何ができるか、考えていくことが必要だと感じています。
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