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IT・科学

そこは「スマホの墓場」だった アフリカで見た想像をこえる光景

「世界最大」の電子廃棄物の捨て場と言われるガーナのアグボグブロシー地区で見つけたごみを使ったアート作品
「世界最大」の電子廃棄物の捨て場と言われるガーナのアグボグブロシー地区で見つけたごみを使ったアート作品

目次

一面に広がるがれき。煙に混ざった独特の異臭が鼻を刺す――。西アフリカにあるガーナの首都、アクラのアグボグブロシー(Agbogbroshi)地区は、世界最大の電子廃棄物(E-waste)捨て場の一つと言われています。ネットで見つけたこの場所に衝撃を受け、どうにかして自分の目で確かめようと思ったものの、現地に着いた途端、足がすくみました。異臭、煙、足場を埋め尽くすがれき……。想像を絶する光景に言葉を失いましたが、実は、この地は私が持っているスマホとつながっていたことを知り、日本からでもできることを考えました。(笑下村塾代表・相川美菜子)

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「世界最大の電子廃棄物の墓場」

東京ドーム30個分を超えるエリアに、果てしなく投棄される電子廃棄物。映画「WelcometoSodom」のリポートによれば、アグボグブロシー地区では約6千人が働いていて、年間25万トンのゴミが集められると伝えられています。

ここで働く人は、各地から集められた電子廃棄物を燃やすことで銅など鉄を抽出し、それらを売って1日5ドル程度の収入を得ながら生活しています。

東京ドーム30個分を超える広さに捨てられた電子廃棄物
東京ドーム30個分を超える広さに捨てられた電子廃棄物

「ようこそ!よく来たね!」

現地で見た想像以上の光景に、5分くらい見て回ったら引き返そうと弱気になっていた時……1人の男性が陽気に話しかけてくれました。

英語で、この場所のことを日本の人に伝えたいと言うと、「ようこそ!よく来たね!ちょっと君には危ないから僕がアテンドするよ」と笑顔で応えてくれ、アグボグブロシーの案内をしてもらえることに。

彼はなんと18年間ここで働いているそうです。

「友達もたくさんいるので、今の生活に特別大きな不満はないよ」

そう笑いながら、日本人と同じようにスマホを普通に使って仲間に連絡をとりながら、ゴミ捨て場ツアーをスタートしてくれました。

まず、目に入ったのはなぞの廃品アート。

車の部品らしきものや掃除機などの家電、パソコンなどが組み合わされてできたロボットのような形で、高さは2メートル弱、幅は4メートルほどありました。

(正直、ちょっと怖い)

電子廃棄物の中、食用に育てられている羊や牛もたくさんいました。

(エサは何を食べているんだろう……)

廃棄物の中で飼われている家畜
廃棄物の中で飼われている家畜

煙の理由

アグボグブロシー地区では、いろんなところで煙が上がっています。プラスチックなども燃えているので、異臭が半端ないです。

「コードは金属が取り出しやすいんだ」と青年は満足げにカラフルな配線を燃やしていました。

家は、プレハブ小屋のような作りです。

足元はガラスの破片だらけですが、サンダルで歩く人も少なくありませんでした。ガラスやプラスチックの破片もたくさん落ちていて、転んで手をついただけで病院行きなりそう……。

金属を取り出すために燃やされる廃棄物
金属を取り出すために燃やされる廃棄物

彼らは純粋に「かっこいい」

最後にゴミ捨て場ツアーのお礼に2ドル程度のお金を渡そうとしたら、「いらないよ。自分で使いな」とあっさり断られました。

お金のために案内してくれているのかな? いくらくらい請求されるのかな? と想像した自分が恥ずかしくなり、何だか無性に涙が出そうになりました。

現地を訪れる前には、売春、強盗、薬の取引など様々な犯罪も行われていると聞いていました。

でも私が会った人たちは皆、作業の手を止めて「どこから来たの?」と話してかけてくれる、気さくな職人という印象を受けました。

服や体を汚れなんて全く気にせず、誰かが捨てた廃品と向き合いながら仕事に打ち込む姿は「かっこいい」とまで思えたのです。

彼らには人間としての強い魅力がありました。そんな人たちが住むエリアを「スラム」と勝手に呼び、「危険」、「汚い」というネガティブな偏見をもって遠ざけてばかりいてはならないと思いました。

筆者を案内してくれた青年
筆者を案内してくれた青年

健康を犠牲にして暮らす若者

アート作品や、ひたむきに作業に打ち込む人たちを見ていると、ここが危険な場所であることを忘れてしまいます。

しかし、現実は甘くない。課題は山積しています。

衛星テレビ局アルジャジーラの記事によると、ここで働く人は電子廃棄物を燃やすことで出る有毒ガスを吸い続けているため、20代でもがんなどの病気にかかり亡くなることも少なくないそうです。やけどを負う人もいます。慢性的な吐き気や頭痛、不眠症に苦しむ人もいる。

体に悪いことだとわかっていながら、お金のためにみんな仕事を続けているのです。

また、近くを流れる川にもこれらの電子廃棄物はおよび、汚染された水が海に流れていると言われています。

アグボグブロシー地区の問題は、ここで働いている人だけでなく、地域全体の大きな社会問題だと言えます。

電子廃棄物の中で働く人たち
電子廃棄物の中で働く人たち

世界のゴミは増え続ける

ガーナの首都アクラは、液晶テレビがずらっと並ぶ家電量販店やカジノなどもあり、日本と変わらない都会的な暮らしをしている人たちもいます。

同時に、都会的な生活を支える経済発展は、電子廃棄物の問題も引き起こしています。

今までアグボグブロシー地区は先進国からの電子廃棄物を「輸入」していることが問題化していましたが、最近では国内およびアフリカの近隣からも集まっています。

「E-Waste問題解決イニシアチブ」と国連環境計画が出した報告書によればe-wasteの量は今後増加し続け、2050年には現在の2倍を超える年間およそ1億1100万トンに達するだろうと予測されています。

一方、電子廃棄物のわずか20%程度しかリサイクルされていないのも現状です。

先進国の企業は、アフリカのような人口が多く、ビジネスチャンスがある後進国での市場開拓に躍起になっていますが、同時に環境問題も騒がれる今、私たちは持続可能な開発を考える時期に来ていると強く感じました。

ごみが積み上げられたアグボグブロシー地区
ごみが積み上げられたアグボグブロシー地区

本当に考えなきゃいけないこと

解決策はあるのでしょうか?

ゴミ処理施設を作ったり、何らかの規制を設けることは大事ですが、この場所で働く人の雇用も新たに用意しなければいけません。

製品を作る側の先進国は、ただ売り続けるだけではなく、ゴミとなったときの処理技術やノウハウを、電子廃棄物を受け入れる側の途上国に教える必要があるでしょう。

メーカー側は、環境に優しい商品開発を強化するべきです。

現実問題、これらの複雑な課題を同時に解決していくことはとても難しい。SDGsの17のゴールではこういった世界の様々なゴールをみんなで2030年までに解決しようとうたっていますが、簡単な話ではありません。

とてつもない大きな問題ではありますが、個人から始められることがあります。スマホや家電を買うのは私たち個人です。それならば、“すぐに新製品に買い替える”という先進国文化をあらためることで、電子廃棄物のサイクルを止める力になれるはずです。

こういった価値観のシフトが、今、本当に全ての人や団体に求められていると思います。

アグボグブロシー地区で荷物を頭にのせて歩く住民
アグボグブロシー地区で荷物を頭にのせて歩く住民

アートで支援する活動も

アグボグブロシー地区で見た人形アートも作っているアーティストの長坂真護さんは、電子廃棄物でつくった様々なアート作品を販売しています。アート作品の売り上げなどによって150億円を集め、ガーナにリサイクル工場を作ることを目指しています。支援や作品購入の詳しい情報はサイトまで(https://t.co/RjgV4HR9JR?amp=1)。

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