連載
#15 ○○の世論
コロナウイルス、安倍内閣への評価に異変 過去の危機管理との違いは
新型コロナウイルスの感染が広がる中、大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号への対応など、安倍内閣の危機管理に注目が集まっています。世間の人たちは政府の対応をどう評価しているのでしょうか。世論調査の結果を見ると、これまで安倍内閣が対処してきた事案のなかでも、今回はかなり厳しい視線が注がれているようです。(朝日新聞記者・植木映子)
2月15、16日に行った朝日新聞の世論調査(有権者の固定・携帯電話対象)では、新型コロナウイルスをめぐる政府対応を「評価しない」が50%にのぼりました。
この調査の後、感染はさらに拡大し、大型クルーズ船で感染した乗客からも死亡者が出ました。東京マラソンなどのイベントの縮小や中止が相次いでいます。全閣僚出席するはずの対策本部の会合を、一部の閣僚が政治活動を理由に欠席していたことも明らかになりました。
第2次安倍政権は発足から7年。この間、安倍首相は危機管理を担う菅義偉官房長官とともに、数々の危機管理案件に対処してきました。単純に比べることはできませんが、その時々の対応への評価はどうだったのか、振り返ってみます。
2016年の熊本地震では、安倍首相が「先手先手で、被災者の生活支援に対応する」と繰り返し述べ、政府対応への評価は高い結果でした。
一方、2018年の西日本豪雨では、気象庁が警戒を呼びかける中にもかかわらず自民党国会議員の懇親会「赤坂自民亭」が開かれ、安倍首相ら40人以上が出席。酒席の様子を出席議員がツイッターに投稿したこともあり、批判が広がりました。その直後に行った調査で「評価しない」が45%で、「評価する」32%を上回りました。
2018年は、西日本豪雨の後も台風や地震が相次ぎました。この年の9月に改めて災害対応について尋ねると、「評価する」52%で、「評価しない」32%を上回りました。
2019年9月の台風15号をめぐっては、千葉県で停電が長期化するなど大きな被害が出たにもかかわらず、国の対策本部の設置や自治体との情報共有が遅れるなど、初動対応に批判が出ました。この年10月の調査では、「評価する」と「評価しない」は割れる結果となりました。
災害以外でも、政府対応についての評価を尋ねています。
2015年の「イスラム国」(IS)による日本人人質事件や、2016年の北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射への対応は、いずれも「評価する」が半数にのぼりました。2017年は、北朝鮮がミサイル発射や核実験を相次いで行い、北朝鮮への危機感が高まりました。このときの調査では評価が拮抗(きっこう)しました。
安倍内閣の危機管理対応へのこれまでの調査結果を見ると、軒並み評価は高いものの、初動対応のまずさが露呈したときや国民の不安感が増したときは、評価が割れることがわかります。
それだけに今回の新型コロナウイルスへの対応について、「評価しない」50%、「評価する」34%という数字からは、国民の中で政府対応への不満が高まっているという世論が見えてきます。
次回の世論調査は3月中に実施される予定です。
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