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#43 夜廻り猫

「返し切れない借金つきみたいな人生だ」夜廻り猫が描く春一番

目次

「一生返し切れない借金つきみたいな人生だ」――。病気の家族を支えている男性が、深夜の病院帰りに吐露します。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られ、ツイッターで「夜廻り猫」を発表してきた漫画家の深谷かほるさんが「春一番」を描きました。

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働いても追いつかず「嫌になる」「疲れた」…だけど

「むっ…涙の匂い…」。今日も夜周り中の猫の遠藤平蔵は、病院から出てきた若い男性に声をかけました。「そこなおまいさん 泣いておるな?心で」

男性は「今から帰って1時間だけ寝て仕事なんだ」と洗濯物を抱えながらいいます。

「両親と弟が病気なんだ 働いても働いても追いつかない。一生返し切れない借金つきみたいな人生だ」と吐露します。

ビューーーと吹きすさぶ強い風。思わず男性は「嫌になる」「疲れた」、そして「早く死にたい」と投げやりに叫びます。

しかし一瞬、暖かい風が。遠藤は「春一番だ。これからは暖かくなるぞ」とほほえみます。

梅の花びらが綺麗に舞うのを見上げ、男性は「今日の泣き言はここまでにする」と言います。遠藤は「また会おう!」と笑い返すのでした。

「介護する人に救いがあるように」と願って

作者の深谷さんは「家族の介護、看病は大変ですよね。特に『自分以外のみんなが病気』という状況は辛いです。案外よくあることでもあるのですが」と話します。

「多くの場合、経済的・肉体的・精神的な負荷は大きく、愛する家族を失う時にしか終わりはない。そんな中では、重圧から解放されるイメージが自分の死しか見えなくなることもあるのではないでしょうか」

介護する人に救いがあるように……。そんな願いが込められた物語でした。

【マンガ「夜廻り猫」】
猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。
ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。

     ◇

深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受賞。単行本6巻(講談社)が2019年11月22日に発売された。2月25日まで京王百貨店新宿店の7階で「夜廻り猫原画展」を開催している。

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