連載
#13 ○○の世論
「ゲームは1日60分」条例はあり? 世論調査で「賛否が割れた」地域
「ゲームは1日1時間」。ファミコン世代のヒーローだった高橋名人との約束を守れなかった小学生の私は、「ドラクエ3」を1日3時間以上もやりこんでいました。子どものゲーム時間を制限する条例案が香川県議会で検討されたことで、様々な議論が起きています。では、みんなの意見はどうなのでしょう? 全国世論調査で聞いてみました。(朝日新聞記者・石本登志男)
子どものネット・ゲーム依存症につながるようなコンピューターゲームの利用は、平日は1日60分まで、休日は1日90分までが基準――。香川県では、こんな内容を盛り込んだ「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)」の制定を、県議会がめざしています。
さらにこの条例案は、「スマートフォン等の使用は、中学生以下の子どもについては午後9時までに使用をやめることを基準にする」「射幸性が高いオンラインゲームの課金システムは事業者の自主的な規制を」といった内容も盛り込まれ、ネット上で議論を呼んでいます。
こうした中、香川県内の高校生がネットで条例案に反対する署名を全国から集め、約600筆を県議会に提出しました。ゲーム依存の対策の必要性を認めつつ、「ゲームの時間は家庭で決めること。自分たち子どもの領域に、行政が足を踏み入れないでほしい」と訴えています。
1月に行った朝日新聞の世論調査で、次のように聞きました。
年代別で特徴があったのは、18~29歳と70歳以上です。18~29歳では反対75%で、賛成17%を大きく上回りました。この世代は「自分が子どもの立場だったら」と思って答えたのかもしれません。
一方、賛成が最も多かったのが70歳以上で、賛成40%、反対39%と賛否が分かれました。「子どもは外で元気に遊ぶのがいい」「親が子どもと向き合う時間が大切」。香川県の条例案でも触れられていたような思いが表れた結果なのかもしれません。30~60代は賛成が3割前後、反対が6割前後でした。
地域別では、おおむね反対が上回っていました。特に東京都では賛成21%、反対64%。一方、香川県を含む四国地方では、全国でも唯一、賛否が割れていました。
はたして条例でゲーム時間を定めることは適切なのか。ゲームに熱中した小学生時代、記者自身がもし、「条例でダメと言っているから」と親からゲーム機を取り上げられていたらどう思っただろうか。早く大魔王を倒してヒーローになりたいのに。友達に自慢したいのに。どこにもぶつけようのない不満のマグマがたまっていただろうと思います。
香川県の動きを受けて高橋名人は、ブログで条例で規制することへの違和感を述べています。
ブログでは、当時、高橋名人自身が「ゲームは1日1時間」と言わないと、子どもたちからゲームが取り上げられてしまうことを心配していたと振り返っています。
「1日1時間」という数字については「その時に、閃いた言い回しに近いので、全くと言っていいほどに根拠など有るわけがありません」とも。
そして、当時よりも外で遊べる場所が少なくなっていることに触れながらこんなことも指摘しています。
香川県議会では、この条例案へのパブリックコメントを募集するなど、提出に向けて準備が進んでいます。今後の動きに注目が集まります。
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