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富野由悠季さん、展覧会で語った反省 「ガンダム、敗北感しかない」

企画展の開幕記念イベントで登壇した富野由悠季さん=2020年1月11日、島根県益田市有明町の県芸術文化センター・グラントワ
企画展の開幕記念イベントで登壇した富野由悠季さん=2020年1月11日、島根県益田市有明町の県芸術文化センター・グラントワ 出典: 朝日新聞

目次

「反省」「敗北」。自身の活動を振り返る展覧会について返ってきたのは、後ろ向きな言葉だった。「機動戦士ガンダム」シリーズの生みの親である富野由悠季さん(78)は、自らに対してとことんストイックです。人類の愚かさへの「絶対的な諦め」があるという世界観。それでも、消えない子どもたちへの希望。富野さんがガンダムをはじめとする作品を通じて伝えようとしていることは何か。話を聞きました。

「反省を突きつけられている」

――島根県益田市の県芸術文化センター・グラントワで開かれている「富野由悠季の世界」展(3月23日まで)では、代表作「機動戦士ガンダム」から、劇場最新作の「Gのレコンギスタ」までの約3千点にわたる資料が並んでいます。自身の仕事を振り返る展示を見て、何か感じ取ったことはありますか。

「自分の視界が決して広くはなくて、『こんなもんなんだ』と突きつけられているだけで、あまり気持ちいいものではないというのが自己評価ですね」

「基本的におもちゃ屋がスポンサーで、巨大ロボットものを作らないといけないという条件があったから、なんとか色合いを変えて作ってみたいと思った。だけど、自分に思想性がないために、作家として狭すぎることが、こういう風なものしか作れなかったという反省を突きつけられていると、いちいち感じています」

「本来、作家というのは、もう少し幅が広くないといけないという理想論があるんです。ですから、作家としてあるべき理念に対して近づくことができなかったという悔しい思いがあります」

「富野由悠季の世界」の展示を見る来場者たち
「富野由悠季の世界」の展示を見る来場者たち

「単純に学力がなかった」

――今ならもっと良い物を作れたという反省があるのでしょうか。

「優れた作品というのはやはりこんなものじゃないです。何が一番足りなかったかというと、単純に学力がなかった」

「例えばダンテの『神曲』は、大学生の時に読んでただただすごさを感じた。20年ぐらいたってから、なぜダンテがあれを書けたのか分かった。ダンテが生まれ育った土地が持っている伝承話を集めて、集大成にして自分の物語ラインに持ってきた。そういう構造があって神曲が書けたんだと分かった」

「その時に、自分の妄想だけで戯曲、詩の一つも書けると思うなよと感じたんですよ。作家たる人は、それをみんなやっている。自分の人生の機微や、じいちゃんばあちゃんが言っていたこと、色んな小説を読む中で身につけていった学識などで作っていると感じています」

「富野由悠季の世界」の展示を見る来場者
「富野由悠季の世界」の展示を見る来場者

「分かりやすいという部分で評価」

――社会問題などを反映し、単なる勧善懲悪にならない深みのあるストーリーがあったから、ガンダムは同時代の他のアニメとは違う評価になったと感じています。ガンダムに対する世間の評価をどう分析しているのでしょうか。

「科学技術とか機械工学とか、大衆自動車が世間に一般化してきた時に、分かりやすいという部分で評価されたにすぎないと感じます」

「(ガンダムが放送された1970~80年代は)モータリゼーションの時代だったから、ガンダムが見られた。そのことがガンダムについての固有の評価なのかあやしいと思います」

富野由悠季さんが書いた「機動戦士ガンダム」に登場するモビルスーツ「ジオング」のイメージラフ。「指はビーム砲の砲身」「首が外れてコントロールできる」など設定も書き込まれている
富野由悠季さんが書いた「機動戦士ガンダム」に登場するモビルスーツ「ジオング」のイメージラフ。「指はビーム砲の砲身」「首が外れてコントロールできる」など設定も書き込まれている

「しかし、やはり敗北感しかないです」

――ガンダムの世界では、地球の資源問題や環境問題も大きな社会背景として出てきますが、そういった現代的な問いを投げかけたかったのでしょうか。

「簡単な言い方をすると、『真』を打つことができていない。人類がここまでやってきたことが真なのか、真ではないのかという話になった時に、この部分を書きたかったけど、力不足で誰も目を向けてくれなかった」

「ガンダムの延長線上にあるから、分かりにくいのは承知の上です。しかし、やはり結果を知れば敗北感しかないです」

「機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙」の宣伝ポスター。レイアウト富野由悠季さん、原画安彦良和さん、イラスト大河原邦男さん、中村光毅さん
「機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙」の宣伝ポスター。レイアウト富野由悠季さん、原画安彦良和さん、イラスト大河原邦男さん、中村光毅さん

「リアルに直結すると、解がすぐに見つけられない」

――「富野由悠季の世界」展では、モビルスーツのコックピットに乗り込むまでのコマ割りなど、リアリティーへのこだわりが資料から見て取れました。アニメでリアルを追求する上での限界にはどう向き合っていますか。

「Gレコ(『Gのレコンギスタ』)を作っている時に、(地球の資源問題などを扱った)この切り口でいくと、リアルに直結する発言ができるようになっちゃうという問題に気づきました。それで、リアルに直結すると、解がすぐに見つけられない面倒臭さに直結するんです」

「社会の構造は、経済構造を含めて問題点がものすごくある。これを22、23世紀に向けて解きほぐすことができるかと言うと、解きほぐすことができないと分かってしまったという現実的な厳しさがあります。これはとんでもなくきついことです」

企画展の開幕記念イベントで登壇した富野由悠季さん
企画展の開幕記念イベントで登壇した富野由悠季さん

「30~50年後の子どもたち」への希望

――複雑な社会問題を踏まえた富野さんの作品では、例えば『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』でのシャアの行動原理しかり、人類の愚かさに対する諦めの描写も見て取れます。これはやはり富野さん自身がそう感じているからなのでしょうか。

「ちょっとどころではない絶対的な諦めがありますよ。でも子供たちにうそをつきたくないから、本当の話はしない。だからとりあえずは明るく元気に楽しくというのを見せる。だけど、その体制、つまり地球をつくるというのはどういうことなのか、かなり問題があるんだよという設定を持ち込んだつもりです」

「ただ、この構造は、1番伝わりにくい構造だから、正攻法になるとは思っていない。だけどアニメで、こういう概念論を伝えることができるかもしれない作り方をしているのは、僕しかいないだろうという自負はあります」

「一つだけ言えるのは、30~50年後の子どもたちは我々より賢くなっているだろうと、そう信じているからこその提案ではあるのです」

「自分の作品がそれを達成する要素になってほしいとまでは思っていません。それは個人のただの欲でしかない。言ってしまえばこの程度の作り手ですと、それは自覚しています」

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