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ガーナで聞いた「日本のバレンタインどう思う?」生産地の重い現実
もうすぐバレンタインデーです。デパートでは自分用も含め、様々なチョコレートが売られています。実はチョコレートの原料であるカカオのほとんどは輸入品。年間5万8617トンのうち、74%が、ガーナ産です。現地の人は、日本のバレンタインデーをどのように思っているのでしょう。飛行機を乗り継ぎ、30時間かけて現地を訪問。高級チョコのきらびやかな世界からは想像できない「ヘビーな現実」を教えてもらいました。(笑下村塾代表・相川美菜子)
ガーナは西アフリカにある人口約3千万人程度の国です。大きさは日本の本土と同じくらいで、公用語は英語。主な産業は農業(カカオ豆)と鉱業(貴金属等)です。
成田からまずエジプトのカイロへ。そこから乗り継いでガーナに行きます。ガーナの首都アクラにあるコトカ国際空港から国内便でクマシに飛んで、ガタガタの道路をひたすら走りカカオ農園のある村に着きます。
ガーナのカカオ農家が抱える「ヘビーな現実」。それは児童労働です。
貧しい農家の子どもが学校に通えず、働き手として駆り出され、結果的に貧しさから抜け出せない問題が起きています。
今回、農園を案内してくれたのは、ガーナの子どもの権利を守るために約20年前、現地で設立された支援団体「CRADA」です。インドやアフリカの児童労働問題に取り組む日本のNGO「ACE」と一緒にガーナで活動しています。
「CRADA」は、山奥にある農園に何度も通い、村の人と信頼関係を築きながら、より効率的なカカオの育て方や、子どもの人身売買および児童労働をなくすことの意義を伝えています。
「CRADA」の案内でガーナの学校の様子を見せてもらいました。かつては児童労働が当たり前だった地域でしたが、「CRADA」の活動によって少しずつ意識が変わってきたそうです。
今はのびのびと遊び、真剣に学んでいる子どもたち。私が「夢はなに?」と尋ねると、「大統領になって社会を良くしたい!」と元気に答えてくれました。ドキュメンタリーのワンシーンかのような模範解答に、涙が出そうになります……。
日本で暮らす私たちにできることはあるのでしょうか? その一つが「フェアトレード」です。
適正な“価格”で売買されているものには付けられる認証として知られていますが、環境問題や労働、人権問題への配慮もチェックされます。
国際フェアトレード認証以外にも、レインフォレスト・アライアンス認証やUTZ認証など、児童労働の禁止を記した認証制度があります。
認証を受けたカカオは通常より高値で売れるので、農家が経済的に潤うのはもちろん、違法な労働、環境破壊がない生産ができるため、社会全体としても持続可能な生産、消費が可能となります。
カカオを買い付ける企業としても、人権侵害の発覚による不買運動や株価の下落などといったリスクなく長期的な経営ができます。
海外では2009年ころから「M&M」や「スニッカーズ」を販売するマース社、「キットカット」などを販売するネスレ社などがそれぞれ認証付きカカオの導入をはじめ、その割合を高めていく目標を独自に設定していました。
アメリカで認証付きの原料を使わないお菓子メーカーをNGOなどが圧力をかけるキャンペーンもありました。2010年には「ハーシーズ」などを販売するハーシー社を名指して、生産過程に違法な労働をなくすよう求めています。
ガーナの農園で聞いてみました。
筆者「日本ではバレンタインデーにチョコレートを贈る文化があるんだけど、どう思う?」
カカオ農園の人「ガーナでも最近はチョコレートを贈り合う習慣ができたよ。チョコレートのお返しは……」
詳しく聞くと、ガーナのバレンタインは、日本で言うクリスマスイブ的なカップル向けのロマンチックイベントという位置づけだそうです(そのため、1年の中で最も避妊具が売れるのも、バレンタインデーだとか……)。
農園を案内してもらったお礼に、ロッテのガーナチョコレートを渡しました。
「日本でもみんな大好きなこのチョコレートのおかげで、ガーナのことをみんな知っているよ」と伝えるととても、みんなとてもうれしそう。
ただ、日本のチョコレートは口溶けの良さを重視し、脂肪分も多く含んでいるため、エアコンのない場所だと溶けてしまい原形をとどめない状態に(それでも快く受け取ってくれた優しいガーナの人たち)。
ちなみに、現地のチョコは脂肪分が少なく、シャリシャリした硬い感じ。冷蔵庫で保管せずとも溶けません。これだと、カロリーも気にせず罪悪感なく食べられるかも。チョコレートにも現れる「お国柄」を体験することができました。
ちなみに、日本でフェアトレードの認証に取り組んでいるお菓子メーカーは一部にすぎません。これからは、日本でもチョコレートを買ったり、食べたりする時、作ってくれている人たちの顔も思い浮かべたいです。
特に大切な人に贈るチョコレートが、子どもたちの犠牲で作られたものであってはいけない。甘いチョコレートが秘める苦い真実を、バレンタインをきっかけに一人でも多くの人に知ってもらえたらと思いました。
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