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今だから知ってほしい「武漢」の魅力 三国志の舞台、長江の眺め

武漢市のシンボル「黄鶴楼」
武漢市のシンボル「黄鶴楼」 出典: 撮影師-CHACHA提供

目次

新型コロナウイルスの感染で世界中の注目を集めてしまった中国・武漢ですが、実は、三国志ともゆかりの深い歴史的な都市です。日本人にもなじみの深い地名があり、長江の雄大さが味わえるスポットもあります。移動が厳しく制限されている今だからこそ知ってほしい武漢の魅力を紹介します。

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武漢市内の風景
武漢市内の風景 出典:「撮影師-CHACHA」提供

中国のど真ん中

地図を見ると、武漢市は中国の交通網のど真ん中に位置することが分かります。もともと、「九省通衢」(九つの省とつながる大通りを持つ)と呼ばれ、交通が便利な都市として知られていました。

中国には34の省、自治区、直轄市が存在します。ネットユーザーの間で、武漢市のある湖北省は、どの省に行くにも、多くても二つの省を通過すれば済むという「トリビア」で話題になったこともありました。

武漢市内、かつて一般の人々の生活ぶり
武漢市内、かつて一般の人々の生活ぶり 出典:「撮影師-CHACHA」提供

歴史の名城

歴史の古い都市としても有名で、中でも「黄鶴楼」は名勝として知られています。

「黄鶴楼」は223年に三国時代の呉の孫権により建造され、その後、観光地になりました。

黄鶴楼では、唐の詩人崔顥が書い詩が知られています。

「昔人已乗黄鶴去,此地空余黄鶴楼。
黄鶴一去不復返,白云千載空悠悠。
晴川歴々漢陽樹,芳草萋萋鸚鵡洲。
日暮郷関何処是?煙波江上使人愁。」

日本語訳:
「昔人已に 黄鶴に乗じて去り
此の地空しく余す 黄鶴楼
黄鶴一たび去って 復返らず
白雲千載 空しく悠悠
晴川歴歴たり 漢陽の樹
芳草萋萋たり 鸚鵡洲
日は暮れて郷關 何れの処處か是なる
煙波江上 人をして愁しましむ」

中国・唐時代の詩人、李白は、崔顥の詩について「崔氏の詩がすでに書かれていますので、(それを超えることができず)詩が書けない」(眼前有景道不得、崔顥題詩在上頭)と話したと伝えられています。

「黄鶴楼」からは、千年前に書かれた詩と、1万年以上流れている長江、さらに近代の変貌ぶりを見ることができ、中国ならではの歴史の流れを味わうことができます。

名高い黄鶴楼
名高い黄鶴楼 出典:「撮影師-CHACHA」提供

三国ゆかりのスポット

武漢周辺も三国志ゆかりの場所がたくさんあります。

映画『レッドクリフ』でも有名な赤壁は武漢の南西約100kmのところにあります。

劉備と諸葛亮(孔明)が出会ったのが、襄陽市にある古隆中(こりゅうちゅう)で、「三顧の礼」で知られます。その襄陽市は武漢から車で約4時間30分ほどのところにあります。

さらに関羽が守備した荊州もあります。荊州は三国時代には「戦場の要塞」と呼ばれ、重要な土地だったと言われています。武漢から車で約5時間ほどのところにあります。

荊州の古城壁
荊州の古城壁 出典: 孫超さん提供

長江を跨る大橋たち 「万里長江第一橋」は必見

長江も、武漢を語る上では外せません。

全長6300キロに及ぶ長江ですが、湖北省内の長さは1000キロもあります。

武漢市は長江とその支流によって、「武昌」「漢口」「漢陽」という三つの地域(武漢三鎮)に分けられていますが、それらをつなぐ「長江大橋」も、武漢の観光スポッットになっています。

1950年代に建設された武漢長江大橋は、建築の難しさから、「万里長江の第一橋」と言われ、教科書にも載るほどの存在です。

大橋を見て育った武漢出身で東京在住の姚尭(ヤオヤオ)さんは、二橋(第二大橋)が開通した時のことを今も覚えていると言います。

「正式に開通される前、武漢市民を招いた渡り初めがありました。その時は、武漢市の全市民が橋に詰め掛けたのでは、と思うほど大勢の人出でした」と振り返ります。

現在、武漢市内だけで10つの長江大橋と5つのトンネルが出来上がっていますが、「第一橋」は依然として武漢市民の誇りと都市のシンボルになっています。

黄鶴楼と長江を跨る大橋
黄鶴楼と長江を跨る大橋 出典:撮影師-CHACHA提供

東湖と武漢大学の桜

内陸の武漢は湖も有名です。東湖は都市のなかにある最大級の湖で、現在「風景区」として整備されており、武漢市民の憩いの場にもなっています。

そしてもう一つ観光地として有名なのは、武漢大学の桜です。日本とゆかりがあり、現存ある桜の木の多くは、日中友好団体が寄贈した苗から育ったものです。

毎年、桜が咲く季節には人があふれ、最近では「登録制」になるほどの人気になっています。

武漢大学で学部と大学院、あわせて7年間過ごした孫超(スンチャオ)さんは、「毎年桜のシーズンになると、武漢地元だけでなく、中国全土、さらに欧米、日本からの観光客で賑わいます」と話します。

「最初は桜の観光客が多すぎて、学生の勉学と生活に影響が出るほどでしたが、登録制になった後は、学生と観光客がお互いに余裕を持って桜を観賞することができるようになりました」

孫さんが最も記憶に残る武漢大の観光スポットは、「桜の城」と呼ばれる西洋スタイルを取り入れた大学の古い校舎です。卒業生により「桜の木の下の家」という歌も作られ、「桜の城」は武漢大の学生たちの心のよりどころになっています。

東湖の風景
東湖の風景 出典:撮影師-CHACHA提供
武漢大で季節限定に見える「桜の城」
武漢大で季節限定に見える「桜の城」 出典: 孫超さん提供

お勧めの地元グルメ

武漢は食文化も豊富です。おすすめグルメは、「熱干麺」(レーカンメン)「豆皮」(トウピー)「蓮根スペアリブのスープ」「ザリガニ」です。

特に「熱干麺」はゴマだれで汁が少ない麺で、武漢でしか味わえない料理として知られています。また、地元では甘酒のデザートが有名で、卵を入れて飲むのが、栄養豊富で美味しいとされています。

朝ご飯を提供する小さいお店
朝ご飯を提供する小さいお店 出典:撮影師-CHACHA提供

「武漢が健康に戻ったら、多くの観光客も来てほしい」

新型コロナウイルスの感染では、中国人に対して誤った情報が飛び交う場面も見られます。今回の感染で考えなければならないのはウイルスの拡大防止であって、中国人への攻撃ではありません。

「武漢が健康に戻ったら、多くの観光客も来てほしいと願っています」。武漢出身の姚さんは、故郷を心配しながら、そう話してくれました。

深センで仕事をしている孫さんも、「武漢はとても包容力のある都市で、武漢の明日はきっとよくなると信じています。またみんなで武漢に行きましょう」と希望を語りました。

国境を超えて人々が交流する時代。日本の隣の国で現地の人が直面している大変さを思い、平穏な日が戻ることを願わずにはいられません。

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