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新型肺炎で「自宅待機」 映画を無料でネット配信は「英断」か?

中国版Tiktokで表示されている「『囧妈』を全中国人に無料でご招待」の文言
中国版Tiktokで表示されている「『囧妈』を全中国人に無料でご招待」の文言

目次

新型コロナウイルスによる肺炎の拡大を受け、中国の春節(旧正月)の雰囲気も一変しました。外出ができず自宅で「自主隔離」が求められる状態に。そんな中国で、今、話題なのがお正月映画『囧妈(ロスト・イン・ロシア)』です。外出ができないのになぜ? 実は、自宅で過ごす人のために無料公開されているのです。ネット上では「素敵」「器が大きい」「嬉しい」などの声がある一方、映画館側からは抗議の声が上がるなど、思わぬ議論が起きています。

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台湾の映画賞、第55回金馬賞(ゴールデン・ホース・アワード)最優秀主演男優賞を受賞した徐崢氏=2018年11月、台北
台湾の映画賞、第55回金馬賞(ゴールデン・ホース・アワード)最優秀主演男優賞を受賞した徐崢氏=2018年11月、台北 出典:ロイター

映画監督徐崢氏の「囧」シリーズ映画

今回、ウェブ上で「無料上映」されている映画『ロスト・イン・ロシア』は、中国では人気シリーズの最新作として公開されました。

監督と主演をつとめる徐崢(シュウ・チェン)氏は、2010年の映画『人在囧途』(ロスト・オン・ジャーニー)で主演し、大ヒットしました。その後『泰囧』(ロスト・イン・タイ)、『港囧』(ロスト・イン・香港)などの「囧(ロスト)」シリーズ映画を監督しました。

今年の『囧妈』(別名『俄囧』ロスト・イン・ロシア)もこのシリーズに入ります。囧は元々古い漢字で、「明るい」という意味ですが、「困った顔」と似ているため、ネット上では絵文字としても使われています。

人気の「囧」シリーズ映画
人気の「囧」シリーズ映画

「賀歳片」(お正月映画)の興行収入

中国電影網(中国映画興行収入サイト) によると、2012年公開の「ロスト・イン・タイ」は12.7億人民元(約200億円)、2015年公開の「ロスト・イン・香港」は16億人民元(約260億円)の興行収入を記録しています。

人気シリーズの最新作ということで、公開前から注目を集めていました。

なぜ今年はウェブに??

しかし、中国では新型コロナウィルスの影響で、多くの映画館が閉鎖されました。

そこで、『ロスト・イン・ロシア』は映画館ではなく、ウェブサイトでの無料公開に踏み切ったのです。実際に放映権を買ったのは、TikTokなどを運営する中国のIT企業「字節跳動」(バイトダンス)です。

中国のネット新聞『澎湃(ペンパイ)』の報道によると、購入金額は、6.3億元(約100億円)で、「バイトダンス」が「抖音(ドウイン)」(中国版TikTok)、「西瓜視頻(シークワースーピン)」(中国版の動画サイト)などのプラットフォームで無料公開しました。

『ロスト・イン・ロシア』以外のお正月映画は、5月のゴールデンウィークか7月以降の夏休み期間中か、上映時期の先送りが取りざたされています。

今回、無料公開に踏み切ったシュウ監督に対しては、一般ユーザーから「感謝」「素敵だ」など好意的に受け止めれています。

「『囧妈』を全中国人に無料でご招待」
「『囧妈』を全中国人に無料でご招待」

賛否両論?映画館がすごい不満

今回、無料公開に踏み切ったシュウ監督は、一般ユーザーから「感謝」「素敵だ」など好意的に受け止めれています。

もちろん、実質的に無料提供のためのお金を提供した「字節跳動」(バイトダンス)に感謝する声も少なくありません。

一方、映画館業界からは不満も出ています。「お正月に上映する」と宣伝していたのにウェブ上で公開されたことで、収益が見込めなくなってしまったからです。

『ペンパイ』や『証券時報(ゼンチュアンスーパオ)』の報道によると、映画館の業界団体は中国の映画全般を管理する「中国国家映画局」に抗議文を出し、映画のウェブ無料公開を阻止してほしいという嘆願しました。

映画館で映画を鑑賞する観客たち=2018年4月、青島、山東省
映画館で映画を鑑賞する観客たち=2018年4月、青島、山東省 出典:ロイター

映画は映画館、あるいは家で鑑賞するもの?進む多元化

映画館で映画を見ることには特別な魅力があります。チケットを買い、大スクリーンで、迫力のサウンドを味わいながら、劇場内の観客と一緒に緊張したり、笑ったり、涙を流したりすることは、動画サービスでは味わえません。

一方で、今回の『ロスト・イン・ロシア』の無料公開は、家の中で、親しい人とゆっくり最新映画を見るという映画館とは違う楽しみ方を提供しました。新型コロナウィルスによって映画館が閉鎖されたことで生まれた、一種のイノベーションと言えるかもしれません。

一方、映画館業界にとっては、「映画は映画館で見るもの」というイメージを崩しかねない動きは無視できないのも事実です。

時代が変化している今、映画館での楽しみ、家での楽しみ、それぞれの良さがあります。少なくとも、多くの中国人にとって、不安な時間をしばし忘れさせてくれる効果はあったといえるでしょう。

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